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代替的業績指標(Alternative Performance Measures; APM)の使用は広範囲に広がっています。英国のFTSE100指数構成銘柄の100社(FTSE100企業)の、財務報告実務に関する最近の分析によると、APMについて、透明性の向上が求められていることが明らかになりました。とりわけ、2016年7月3日以後、すべての決算発表に適用される欧州証券市場監督局(ESMA)のガイドラインにおいては、APMの透明性の改善が必須となります。アカウンティング・コンサルティング・サービスのJennifer LauおよびAnna Schweizerが解説します。


まずは良いニュースからお伝えします。PwCが実施したレビュー(事業年度が2014年4月1日から2015年3月31日に終了するFTSE100企業対象)によると、FTSE100企業の大部分が、APMを説明し、APMとGAAP指標との調整表を開示しています。ただし、その調整表は、必ずしも分かりやすい場所に掲載されているわけではありません。

PwCの調査によると、投資家たちはAPMの有用性を認めながらも、開示された情報について透明性の向上が必要であると考えています。PwCは、APMの使用および開示に対する規制当局の精査が(欧州以外でも)増大し、ESMAガイドラインがAPMの開示に大きな影響を与えるであろうと考えています。企業は、透明性があり偏りがない、比較可能な財務業績の情報を公表するために何をする必要があるか、今、検討すべきです。

主な調査結果


PwCの調査結果の概要は以下のとおりです。
  • FTSE100企業の95%は、GAAPに基づく利益数値を調整している。
  • ほとんどの場合、利益金額に有利な影響を与える調整となっている。
  • 企業が調整する主な項目は、取得した無形資産の償却、資産の減損、利息、減価償却、償却および税金である。
  • 調整項目の説明は大まかであり、それが何に関連しているのかを理解するのが困難であることが多い。
  • 調整表の掲載箇所および表示方法が一貫していない。
この調査結果は驚くものではないかもしれませんが、企業は、ESMAガイドラインを遵守するために、さらなる努力が必要であることが示されています。

調整後利益に関する指標の使用


FTSE100企業の95%は、調整後の利益金額を開示しています。調整後の利益数値を言い表す代替的な用語は様々で、その中で最も人気が高いものは次のとおりです。
  • 調整後営業利益(39%)
  • 調整後税金考慮前利益(PBT)(35%)
  • EBITDA/調整後EBITDA(11%)
上記のように多様なアプローチ(ときには同業他社間や他業種間においても異なるアプローチ)は、財務諸表の利用者がAPMを理解することや比較することを難しくしています。

APMを開示したすべての企業におけるGAAP数値の合計値からAPMの合計値への変動をみると、およそ1,190億英ポンドから1,870億英ポンドへ上昇していることが分かりました。また、調整後利益を表示した95社のうち、GAAP数値を下回る金額を報告したのは、わずか12社でした。

どの項目が調整されているか


GAAP数値からAPMへの調整の内容は、さまざまな用語を用いて説明されています。最も一般的な調整項目は、次に関連するものです。
  • 取得した無形資産の償却
  • 資産の減損
  • 利息、減価償却、償却および税金
  • 銀行業界に固有の調整
多くの調整がなされていますが、調整額が全体的な金額に占める割合はそれほど大きくありません。例えば、年金関連の項目については10%の企業が調整し、取得関連のコストについては30%弱の企業が調整していますが、それぞれの調整額が全体的な金額に占める割合は、年金関連が0.4%で、取得関連コストが0.7%と少額です。企業は、これらの調整額が、個別に識別するほどに重要性を有するかどうかを検討が求められます。

調整額のうちの28%(60億英ポンド)は、提供された情報が十分ではないため、特定の項目へ分類することができず「その他」に分類しています。

調整表の掲載箇所


ほとんどの企業(98%)がAPMからGAAP数値への調整表を提供していますが、掲載箇所にばらつきがあり、複数の場所に掲載されているケースもみられました。
  • 前半部分(45%)
  • 主要財務諸表の中(37%)
  • 財務諸表の注記(57%)
  • その他のセクション(7%)
調整表の掲載箇所が示されていない(数社がこれに該当しましたが)ということがない限り、掲載箇所がどこであろうと問題はありません。

ESMAガイドライン


ESMAガイドラインは、有価証券を規制市場で取引している発行体が公表する、規制上求められる情報の中で開示されるAPMに適用されます。年次報告書および期中報告書の「前半部分」に表示されるAPMが対象となりますが、監査済の財務諸表上に提供される財務情報は対象ではありません。経営者報告書、目論見書、および財務収益性に関する適時開示など、企業が開示するその他の規制上求められる情報に含まれるAPMにも適用されます。

APMは、「業績、財政状態、キャッシュ・フローに関する、適用すべき財務報告フレームワークで定義された、または特定された以外の、過去または将来の財務指標」です。

ESMAガイドラインにおいて、財務諸表発行者は以下を要求されます。
  • APMを明確かつわかりやすく定義し、意味のある名称を付す(減損損失やリストラクチャリング費用が、「例外的または非経常的であることは…稀」である)。
  • APMと、APMに最も直接的に関連するGAAP上の表示科目の金額との調整表を作成し、重要性のある調整項目について説明する。
  • APMの目的適合性および信頼性を財務諸表の利用者が理解できるように、APMの使用について説明する。
  • GAAP指標よりも、目立たない形で、強調せずに、権威付けのない方法で表示する。
  • APMを表示する際は比較情報も提供する。なお、比較情報についても調整表が必要となる。
  • APMを定義し、一定期間にわたって一貫させる。変更があればその根拠を示す。
次のステップ


規制当局、投資家、そしてマスメディアに至るまで、引き続き多くの人々がAPMに注目しています。調査結果を踏まえ、PwCは、APMとGAAP指標との調整項目が、目的適合性があり、理解しやすく、そして誤解を招かないものとするために、企業にはさらなる努力が必要であると考えています。
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