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IFRSのエンフォースメントにより、経営者が財務諸表の作成時に検討すべき項目が増えることになります。PwCアカウンティング・コンサルティング・サービスのMadhuri Ravi Srinivasanが最近公表されたESMA報告書の主要なポイントについて解説します。


欧州証券市場監督局(ESMA)は、最近、「会計執行者によるエンフォースメントおよび規制活動に関する報告書(2015年)」を公表しました。この報告書は、2014年エンフォースメントの優先事項(Enforcement Priorities for 2014)に関する欧州会計執行者によるレビュー結果をまとめたものです。

このレビューは、欧州の規制市場に上場するIFRS適用企業すべての約20%にあたる1200社の発行者を対象に行われました。レビューの結果、レビュー対象の25%の発行者に対して、会計執行者による是正措置(エンフォースメント・アクション)が取られました。

注目領域はどこか


ESMAは、以下の3つの項目をこの年の重点的に取り組む優先事項としていました。

(a) 連結財務諸表の表示および関連する開示

(b) 共同支配の取決めの当事者による財務報告および関連する開示

(c) 繰延税金資産および不確実な税務上のポジションの認識および測定

主な調査結果


連結財務諸表


欧州連合(EU)が承認したIFRSを利用する企業にとって、2014年は、IFRS第10号「連結財務諸表」およびIFRS第12号「他の企業への関与の開示」を適用する最初の事業年度となりました。発行者の大半は、企業の議決権の過半数未満しか保有していない場合における支配の存在についての分析は行っているものの、財務諸表上では、関連する開示が欠如しているケースが多くみられました。特に、以下のような側面の開示がなされていませんでした。
  • 投資先に対するパワーを有していることを企業がどのように正当化しているのか
  • 投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャー
  • 投資者のリターンの額に影響を及ぼすように投資先に対するパワーを用いる能力
議決権の50%超を所有する投資を連結しなかった発行者の中には、それを正当化する根拠(例えば、共同支配の形成や他の株主が支配することに関する株主間協定の存在など)を開示していない発行者もありました。

組成された企業に関連する開示については、比較的に十分に行われていたと考えられます。組成された企業に関与する発行者の90%が、非連結の組成された企業に対する持分の内容、程度およびリスクについて、財務諸表利用者が理解して評価できるような情報を開示していました。
重要ポイント
支配の概念は、ほとんどすべてのケースにおいて適切に適用されているようです。不十分だったのは開示の程度でした。こうした開示は企業に特有のものである必要があり、また、企業の達した結論の正当性について財務諸表利用者が評価できるよう十分かつ詳細である必要があります。

共同支配の取決め


ここでも、注目された論点は開示の程度でした。ほとんどの共同支配事業は、別個の(法的主体である)ビークルを通じて組成されていましたが、多くの発行者は、当事者が共同支配の取決めの資産に対する直接的な権利および負債に対する直接的な義務を有しているかを、財務諸表利用者が評価するために必要な、具体的な情報を開示していませんでした。同様に、取決めが共同支配事業なのか共同支配企業なのかを評価する際に検討した要素について、十分な情報を開示した発行者はごくわずかでした。

ただし、驚くことではありませんが、投資先の基本的な情報(例えば、関係の内容や事業の場所)については、ほぼすべての発行者が正しく開示していました。

IFRS第11号の初めての適用によって、共同支配の事業または共同支配の資産から共同支配企業へ、または共同支配企業から共同支配事業へと、一部において分類変更が行われることになりました。しかし、分類変更した発行者の多くは、評価の際に検討した関連する要素など、変更について十分な開示を行っていませんでした。
重要ポイント
「連結財務諸表」と同様に、分類について企業が達した結論に関して重要な論点はありませんでした。むしろ、財務諸表利用者が分類の背景にある合理的根拠を理解できるように、十分に詳細な情報の提供が重要視されています。

繰延税金資産および不確実な税務ポジション


新規の要求事項ではないにもかかわらず、驚くべきことに(そうでもないかもしれませんが)、レビュー対象となった発行者のほぼ3分の1において、税務上の繰越欠損金から生じた繰延税金資産についての開示が不十分でした。ほとんどのケースにおいて、繰延税金資産の認識の根拠となる証拠の内容が開示されていませんでした。また主な仮定が開示されないケースもみられました。

その他に関心を集めたのは、数多くのケースにおいて、繰延税金資産が5年を超える期間において回収されると見込まれていたことです。これは当該認識について信頼すべき根拠が提示されていなければならないことを強く示唆します。

発行者の約半数は不確実な税務ポジションに関する会計方針を開示しておらず、発行者のほぼ4分の3は測定基礎を開示していませんでした。
重要ポイント
繰延税金資産の認識の根拠となる証拠に関する開示が十分であるかどうかは、現在も継続中の論点のようです。
不確実な税務ポジションに関し、具体的なガイダンスの欠如が実務の不統一を生じさせたようです。ガイダンスを明確化する、このトピックに関する解釈が間もなく公表される見込みです。IAS第12号「法人所得税」は、2016年においても引き続き重点領域となるでしょう。

次のステップ


ESMAおよび欧州各国の執行者は、2014年におけるIFRSの適用が高水準であったことを認めていますが、まだ改善の余地があると考えています。

開示に関する取組みについて公表が見込まれるガイダンスやその他のIASBによる公表物と併せて、「2015年エンフォースメントの優先事項(Enforcement Priorities for 2015)」に対する認識を高めることが、発行者がIFRSを適用する上での手助けとなるでしょう。

2015年の財務諸表に共通する優先事項には、以下のトピックが含まれます。
  • 金融市場の状況が財務諸表に与える影響
  • キャッシュ・フロー計算書および関連する開示
  • 公正価値測定および関連する開示
代替的業績指標に関するESMAガイドラインは、2016年7月3日以後のすべての公表物に適用されます。
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