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国際会計基準(IAS)第39号「金融商品:認識及び測定」に基づくヘッジ会計を維持する方が容易に思える場合でも、さらに検討すべき事項があることを、PwCグローバルの金融商品担当のリーダーであるSandra Thompsonが解説します。
国際財務報告基準(IFRS)第9号は、2018年より強制適用になります。しかし、企業は、ヘッジ会計の新しい要求事項をIFRS第9号の他の要求事項とともに適用するか、またはIAS第39号の下での現行のヘッジ会計を維持するかを選択することができます。これは、「全部かゼロか」の選択です。すなわち、企業は、ヘッジ会計のすべてをIFRS第9号に移行するか、あるいは、ヘッジ会計のすべてに対してIAS第39号を適用し続けなければなりません。すべての企業にこの選択があり、ヘッジのすべてに適用されますが、この選択はヘッジ会計に限られています。いずれにしても企業は、IFRS第9号のその他の部分については2018年より適用しなければなりません。
企業は、IAS第39号のヘッジ会計を維持したほうが容易だと考えるかもしれません(特に、その年に新収益基準であるIFRS第15号も適用しなければならないとなればなおさらです)。しかし、そう判断する前に企業が検討すべきことについて解説します。
IFRS第9号のヘッジ会計を適用するために行うべき作業
IFRS第9号のヘッジ会計を適用するために行うべきいくつかの作業があります。例えば、単純なヘッジのみを有しておりIAS第39号に基づくヘッジ会計を適用している企業でさえも、IFRS第9号に準拠するためにヘッジの文書化を更新する必要があります。また企業は、非有効部分を測定する場合、貨幣の時間的価値を含める必要があり、IAS第39号に基づきこれを行っていなかった企業はこの変更を行う必要があります。しかし、単純なヘッジについては、この作業はそれほど煩雑とはならないでしょう。
より複雑なヘッジについては、行うべき作業はより多くなる可能性があります。しかし、これは通常、IFRS第9号の改訂されたヘッジ会計の要求事項による便益を得るためのものとなります(主な便益については後述)。特に、企業がIAS第39号の下ではヘッジ会計ができなかったケースでも、今後はヘッジ会計が可能となる可能性があります。
IFRS第9号のヘッジ会計を適用しない場合であっても行うべき作業
IAS第39号のヘッジ会計を維持する選択をする企業は、その場合であっても、IFRS第9号に基づく新たな開示を行う必要があります。これらの開示は、IFRS第9号のヘッジ会計の要求事項を補完します。例えば、新しい開示には、企業のリスク管理戦略、経済的関係があることの判断方法、および各種類のヘッジについてのヘッジ比率の決定方法が含まれます。これらは、IFRS第9号の下でヘッジの文書化に含める必要のある事項に類似しています。これは、IFRS第9号のヘッジ会計を適用する上で必要な作業の多くは、企業がIAS第39号のヘッジ会計の維持を選択している場合であっても、新たな開示のために要求されることを意味します。結果として、IFRS第9号のヘッジ会計に移行する際に必要な追加的な作業は少なくなる可能性があります。
IFRS第9号のヘッジ会計を適用する便益
IASBがIAS第39号のヘッジ会計の要求事項を改訂した主な目的は、経済的ヘッジがヘッジ会計に適格となることを容易にすることでした。例えば、以下の改訂が行われています。
  • 80%-125%の「明確な境界線」による有効性テストは、経済的関係があることを求める要求事項と置き換えられます。これにより、一部のヘッジ関係について現行のヘッジ会計の要件を満たさなかった主な原因が解消されます。
  • 企業は、より多くのリスク要素および項目グループの「階層」を指定することが可能です。
  • オプション、クロスカレンシー金利スワップおよび先渡契約を用いてヘッジすることで、損益計算書上の変動性をより低く抑えることができます。
IFRS第9号の下では、ヘッジが経済的に有効である場合、会計処理がこれを反映する可能性がより高くなります。これは、次の3つの理由から重要です。
  • IFRS第9号は、会計処理とリスク管理方法をより整合させる重要な機会を企業に提供します。
  • IFRS第9号は、企業がヘッジ戦略を再評価するためのチャンスとなります。損益計算書の変動性が生じるため棄却された過去の戦略を、今後は使用できるかもしれません。IFRS第9号の適用は、リスク管理に影響を及ぼし、「単なる」会計上の変更にとどまらない可能性があります。
  • IFRS第9号により、企業は、より明確に「リスク管理のストーリーを伝える」ことが可能となります。投資家は、リスクおよびリスク管理方法にますます注目するようになっており、したがって、これは企業のコミュニケーション戦略の重要部分となります。
結論
  • IFRS第9号のヘッジ会計を適用するためにはいくつかの追加作業が必要となるため、IAS第39号のヘッジ会計を維持する方が容易に思えるかもしれません。
  • しかし、IAS第39号を維持する場合であっても、新たなIFRS第9号の開示のために、企業はIFRS第9号適用時の作業の大部分を行う必要があり、全体としてIAS第39号を維持することの方が著しく容易とはいえそうにありません。
  • 企業がIAS第39号のヘッジ会計を維持する場合、IFRS第9号への移行で得られる便益のすべてを得るチャンスを逃すことになります。
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