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新しい収益基準である国際財務報告基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」は、保険契約をその範囲から明確に除外しています。しかし、保険会社が、顧客との保険以外の契約または保険契約に含まれる要素がIFRS第15号の範囲に含まれることに気付く場合があります。PwCアカウンティング・コンサルティング・サービスのSam King-Jayawardanaが、保険会社が注意すべき領域について検討します。


国際会計基準審議会(IASB)および米国財務会計基準審議会(FASB)は、2014年5月、新収益基準を共同で公表しました。新収益基準には、顧客とのすべての契約に関する収益の認識時期と金額を決定するための5つのステップが含まれています。
  1. 顧客との契約を識別する
  2. 契約における履行義務を識別する
  3. 取引価格の合計を算定する
  4. 取引価格の合計を契約におけるそれぞれの履行義務に配分する
  5. 履行義務の充足時に(または充足するにつれて)収益を認識する
IFRS第15号は、2018年1月1日より適用されます。

IFRS第15号の範囲は保険会社および保険契約にどのように適用されるか


新収益基準は、特に範囲から除外されていない限り、顧客とのすべての契約に適用される包括的な基準です。IFRS第4号「保険契約」およびIFRS第9号「金融商品」の範囲に含まれる保険契約や金融商品は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の範囲には含まれません。

しかし、保険会社は、その総合的な事業の一部として、新収益基準の範囲に含まれるような、その他のサービス(例:資産運用や保険金請求管理)を提供することがあります。

IFRS第15号は保険契約における保険以外の要素にどのように適用されるか


新収益基準は、「顧客との契約は、その一部が本基準の範囲に含まれ、一部が他の基準の範囲に含まれる場合がある」と述べています。
こうした状況が保険契約に該当する場合、契約の全部または一部が別の基準の範囲に含まれるか否かを判定するため、適用可能な他の基準に含まれる(契約に含まれる会計単位を識別する)区分および(または)測定に関するガイダンスを考慮する必要があります。その後、残された要素に新収益基準のガイダンスを適用します。保険会社は、他の基準には区分および(または)測定ガイダンスが含まれていない場合にのみ、新収益基準におけるそれぞれのガイダンスを適用します。言い換えれば、IFRS第15号のガイダンスを検討する前に、まずはIFRS第4号「保険契約」に含まれる区分に関するガイダンスが適用される、ということになります。
アンバンドリングから予想される影響


現在、保険会社は、特定の状況における組込デリバティブおよび預り金要素を除き、保険契約から保険以外の要素を分離(アンバンドル)することを要求されていません。IFRS第15号は、他の基準の区分に関する規則を参照している(そのような規則を定めるガイダンスがある場合)ため、現時点ではアンバンドリングに関する規則の変更はありません。

新しい保険基準に関するプロジェクトの第IIフェーズにおいて、保険以外の財およびサービスのアンバンドリングについて明確に取り扱うことが見込まれていますが、PwCは、新しい保険基準の下で、保険契約の中に統合されているまたは相互関連するサービス要素が区分されることになると予想していません。契約の中のある要素を他の要素から独立して測定できない場合、または、他の要素がなしに保険契約者がそこから便益を得ることができない場合、その要素は相互に関連しています。
重要ポイント


PwCは、財産契約/損害保険契約に含まれる保険金の請求処理または生命保険契約に含まれる資産運用サービスなどの統合されたサービス要素は、保険の主契約から区分されないと見込んでいます。しかし、保険会社は、新保険基準の動向を注視しておかなければなりません。

新収益基準の範囲に含まれる契約に関する主な検討事項


別個の履行義務を識別する


履行義務とは、顧客に別個の財またはサービスを移転するという当該顧客との契約における約束です。以下の場合、財またはサービスは別個のものです。

(i) 顧客が、それ単独で、または容易に利用可能な他の資源との組み合わせで便益を受けることができる。

(ii) 契約の中の他の約束と区分して識別可能である。

別個の履行義務は、取引価格が配分され、収益認識の時期を決定する履行義務の充足が行われる会計単位であるため、基本となるものです。

保険会社が契約上、保険や資産運用契約とは別に、他のサービスを提供する場合、当該サービスから得た報酬には収益認識基準を適用しなければなりません。したがって、そこに含まれるサービスがそれぞれ別個のものであるかどうかを判断するため、分析を行わなければなりません。一般的なサービスには、保険金請求事務、複雑な保険金請求管理、リスク軽減、ファイナンシャルプランニング、資産のレビューおよび評価、財務分析ならびに健康や安全の管理などが含まれます。このようなサービスは単独で顧客に提供できるため、保険と統合される要素ではなく、別個のものとみなす可能性があります。

顧客との契約が複数の履行義務を含んでいる場合、保険会社は、識別したそれぞれの履行義務について、対価の配分および収益認識のパターンを決定することが求められます。

取引価格に変動対価を含める


現在、保険会社は、保険以外の契約による収益を、リスクおよび経済価値の移転または完成段階に基づいて認識しています。IFRS第15号の下では、保険会社は契約開始時に保険以外の契約(または保険契約に含まれる保険以外の要素)の取引価格を決定し、これを履行義務に配分し、それから当該履行義務が充足されるにつれて収益を認識することが要求されます。
保険会社は、将来の事象の結果によって変動する対価または将来の事象の結果を条件とする対価を要素として含む契約を有していることがあります。そのような対価は変動対価として知られており、IFRS第15号は、重大な戻入れが生じない可能性が非常に高い範囲でのみ、変動対価を取引価格に含めることを要求しています。
生命保険会社は、投資契約に関連する資産運用サービスの報酬を受け取ることがあります。このような報酬は、ファンドの純資産の一定割合であることが多く、日次または月次で支払われ、金額の決定時に認識されます。サービスはすでに提供されており、変動対価に関連する不確実性(すなわち、管理するファンドからの分配)は各報告期間の終了日に解消されるため、IFRS第15号の下でこの報酬の認識が変更されることは見込まれていません。しかし、契約がクローバックを認める範囲内で、あるいは保険会社が報告期間の終了日にも存続する不確実性についての報酬を前倒しで認識している場合には、認識されたそのような金額に将来の報告期間において重大な戻入れが発生するリスクがあるか否かを検討する必要性があります。

保険会社は、保険金請求管理サービスに対する業績報酬など、変動対価を含むその他のサービスを提供していることがあります。収益が重大な戻入れの対象になるかどうかの判断を求める新しい要求事項と保険会社の現行実務を比較した結果によっては、このようなサービスの収益認識を変更する必要があるかもしれません。

上述したとおり、このようなサービスの提供が保険契約全体における不可欠な一部分である場合には、IFRS第15号の範囲に含まれません。

次のステップ


新保険基準の最終化および公表予定は引き続き流動的です。保険会社の皆様には、PwCのIFRS newsまたは貴社担当の監査チームを通じて、最新動向に関する情報の入手を継続されることをお勧めします。
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