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営業債権の信用損失に対するより簡素化されたアプローチについて、PwCの金融商品の専門家であるIlaria Evansが解説します。
減損は、IFRS第9号による最大の変更の1つであり、複雑な領域です。減損は、過去の実績および現在の状況に加え、将来予測的な情報に基づいていなければなりません。ほとんどの企業は、新しい情報を収集し、重要な判断を適用する必要があります。
今月号の記事では、売上債権に係る予想信用損失の算定に関して、IFRS第9号が認めている実務上の便法の1つである引当マトリクスの使用について解説します。
ステップ1-売上の期間および当該売上に関連する不良債権を定義
引当マトリクスを用いる際の最初のステップは、不良債権として貸倒償却された営業債権の割合を分析するために、適切な期間を定義することです。この期間は、有用な情報を提供するのに十分なものでなければなりません。期間が短すぎると、情報が意味あるものにならず、期間が長すぎると、市場状況や顧客ベースの変化によって分析が有効なものになりません。この設例では、期間を1年とします。期間中の債権の合計額はCU10,000であり、最終的に貸倒償却された債権は、CU300でした。
ステップ2-債務者の支払プロファイルを算定
ステップ2では、不良債権の貸倒償却時点までの、各期間バケットの末日における債権の残高を決定します。このステップで算定された年齢プロファイルは、次のステップで、債務不履行率を算定する際に非常に重要となります。
ステップ2-債務者の支払プロファイルを算定
売上合計(CU)
10,000
支払額合計
売上の年齢プロファイル
(ステップ3へ)
30日以内の支払
(2,000)
(2,000)
8,000
30日から60日までの支払
(3,500)
(5,500)
4,500
60日から90日までの支払
(3,000)
(8,500)
1,500
90日超の支払
(1,200)
(9,700)
300
[貸倒償却]

ステップ3-過去の貸倒損失割合を算定
過去の貸倒損失割合を計算するために、ステップ3では期間バケットを用いて債権の分析を行います。債務者に対する最終的な貸倒償却額CU300が、各期間バケットに適用されます。
ステップ3-過去の貸倒損失割合を算定
[ステップ2で算定した年齢ごとの金額 ÷ 売上全体の信用損失]
売上現在
売上から30日後
の未払残高
売上から60日後
の未払残高
売上から90日後
の未払残高
売上の年齢
プロファイル [1]
10,000
8,000
4,500
1,500
損失 [2]
300
300
300
300
債務不履行率
[2]/
[1]
3%
3.75%
6.67%
20%

ステップ4-将来予測的な情報に関して損失率を調整
ステップ4は、このプロセスにおいてもっとも判断を要するステップになる可能性があります。過去の貸倒損失率を調整する際に、特定の債務者たちに対する債権に関して、何が不良債権のレベルに影響を与えているのかを理解することがカギとなります。例えば、企業が小売の顧客に販売を行っている場合、債務不履行率は失業と相関関係があります。
ステップ4-将来予測的な情報に関して損失率を調整
以下の変化を考慮する
  • 経済、規制、技術環境(例-業界予測、GDP、雇用、政策)
  • 外部の市場指標
  • 顧客ベース
前提条件
  • 景気後退/失業率の上昇の予想
  • 当初と同じ支払プロファイルおよび売上を想定
  • その結果、損失は、300から400に調整される
売上現在
売上から30日後
の未払残高
売上から60日後
の未払残高
売上から90日後
の未払残高
売上の年齢
プロファイル [1]
10,000
8,000
4,500
1,500
損失 [2]
400
400
400
400
債務不履行率
[2]/[1]
4%
5%
8.9%
27

ステップ5-ステップ4で決定した債務不履行率を用いて予想信用損失を算定
最後に、ステップ4で算定した債務不履行率を用いて、当期末時点の実際の債権に対して、期間バケットごとに債務不履行率を当てはめます。この設例ではCU12の信用損失が計上されます。
ステップ5-ステップ4で決定した債務不履行率を用いて予想信用損失を算定
合計
現在
(0日-30日)
30日-60日
60日-90日
90日超
営業債権の
期末残高 [1]
140
50
40
30
20
債務不履行率 [2]
4%
5%
8.9%
27%
予想信用損失
[1] × [2]
CU12
CU2
CU2
CU2.7
CU5.3

結論
  • IFRS第9号には、不良債権の引当金の増加や変動性をもたらす可能性のある、減損に関する新規の複雑な要求事項が含まれています。
  • 引当マトリクスは、企業が予想信用損失を算定する際の実務上の便法です。
  • 引当マトリクスには規定された方法はありませんが、負債の期日が経過すればするほど支払われない可能性が高くなる、将来予測的な情報を含めるという2つの重要な要素が反映されるべきです。
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