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国際会計基準(IAS)第21号「外国為替レート変動の影響」に関連する、IFRS解釈指針委員会で却下された論点の実務上の影響について、PwCアカウンティング・コンサルティング・サービスのMaria Opazoが検討します。


今あなたは何かの答えを探していますか?
もしかしたらそれはすでに専門家によって検討済みかもしれません。
IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)(以下、「IC」)は、定期会議において、最大で20件までの様々な論点を定期的に検討しています。議論された論点のうち、解釈指針が作成されるのは、非常に限られます。改善や狭い範囲の修正となるものもありますが、多くの論点は却下されます。アジェンダに取り上げられなかった論点は「IFRICリジェクション(ICに却下された論点)」となり、これらは会計業界においては「非IFRIC(not an IFRIC)」もしくはNIFRICsとして知られています。NIFRICsは(2002年以降)成文化されており、国際会計基準審議会(IASB)の発行する基準書の「グリーンブック」に掲載されていますが、厳密には、権威のある会計基準書等に該当しません。このシリーズ記事では、ICによって「却下された」論点について知っておくべきことを取り上げます。今回はIAS第21号「外国為替レート変動の影響」を扱います。
IAS第21号は外貨建取引の会計処理、外国事業の純損益および財政状態の表示通貨への換算、ならびに企業の純損益および財政状態の表示通貨への換算に適用されます。

IAS第21号に関連した論点はICのアジェンダ上に時折登場する傾向にあり、長年の間に多くの論点が却下されてきました。これらの却下された論点のいくつかについて以下に解説します。

為替レート(2003年4月)


ICは、複数の為替レートが利用可能な場合にはどのレートを使用すべきかについて議論しました。ICは、この点についてはIAS第21号が明確であることに合意しました。いくつかの為替レートが利用可能な場合、使用するレートは、当該取引または残高が表すキャッシュ・フローが測定日に発生したとした場合に当該キャッシュ・フローを決済し得たであろうレートになります。

機能通貨の決定(2010年3月)


企業の機能通貨を特定する場合には、主たる指標および二次的な指標を考慮しなければなりません。しかし、この原則により、関連の企業、特に投資企業に関する各指標に与えられる相対的な重要性の検討が困難となっています。

ICは、IAS第21号で示されている以下の要素を全体として考慮すべきであることを強調しました。
  • 企業が営業活動を行う主たる経済環境
  • 販売価格に影響を与える通貨
  • 労務費およびその他の関連するコストに影響を与える通貨
  • 企業が資金を創出する通貨および営業活動からの入金額を通常は保持する通貨など、その他の要素
ICは、上記のような評価を行うためには高度な判断の適用が求められることから、この論点は解釈指針を公表しても解決しないだろうとの結論に達しました。

投資の払戻しおよび為替換算調整勘定(FTCR)(2010年9月)


ICは、外貨の払戻しが発生する場合の為替換算調整勘定(FCTR)の振替に関するガイダンスについて議論しました。所有持分の減少は、被投資企業に対する投資企業の持分比率の減少を原因とする場合(相対的減少)と、投資の絶対額の減少(例:比例持分の比率に影響を与えない可能性のある準株式ローンの返済、または配当の支払)を原因とする場合があります。

ICは、解釈の違いにより実務上の不統一が生じ得ることを認識しました。しかし、適時に合意に達することは難しいと考えたため、この論点をアジェンダに追加しないことを決定しました。また、ICは、この論点を2011年以後の潜在的アジェンダとしてIAS第21号の全面見直しで取り扱うことをIASBに推奨しました。

PwCの見解では、持分の相対的減少と絶対的減少のいずれの概念でとらえたとしても、部分的な処分として会計処理するという結論を導くことができると考えます。また、会計方針(相対的減少、絶対的減少または両方の概念)の選択が存在し、選択した方針は継続して適用しなければなりません。

外国為替の制限および超インフレ経済(2014年11月)


ベネズエラの経済環境(超インフレ経済下にある現地の為替レートを完全には反映していない可能性のあるいくつかの公式な為替レートの導入を伴った厳格な外国為替管理)が原因となり、ICは、同国内に投資または子会社を保有する企業に関する以下の論点についての質問を受けました。
  • 利用可能ないくつかの為替レートがある場合に、在外営業活動体に対する企業の純投資の換算にはどのレートを使用すべきか
  • 交換可能性が長期的に欠如している場合には、どのようなレートを使用すべきか
第1の論点に関連して、ICは、一般的な実務としてIAS第21号の原則が適用されており、すなわち、使用される為替レートは、キャッシュ・フローが測定日に発生したとした場合に将来キャッシュ・フローまたは残高を決済し得たであろうレートであることに着目しました。また、第2の論点に関し、ICは、交換可能性の長期的な欠如はIAS第21号のガイダンスで扱われていないことに着目しました。しかし、この論点に対応するためにはより幅広いプロジェクトが必要となるとして、ICはこの論点を却下しました。

しかし、ICは、為替レートの影響に企業の業績を理解する上での重要性がある場合に適用される、IAS第1号「財務諸表の表示」およびIFRS第12号「他の企業への関与の開示」に記載の以下の開示要求事項を確認しました。
  • 重要な会計方針および判断の開示
  • 翌事業年度中に重要性のある修正を生じる重要なリスクがある、見積りの不確実性の発生原因の開示
  • 資産のアクセスまたは利用および負債の決済を行う企業の能力に関する重大な制限の内容および程度の開示
IAS第21号に関するIFRICリジェクションの要旨
トピック
結論の要旨
外国為替レートの 変動の影響
(2003年4月)
IAS第21号は、企業に対し、いくつかの為替レートが利用可能な場合には、使用するレートは、当該取引または残高が表す将来キャッシュ・フローが測定日に発生したとした場合に当該キャッシュ・フローを決済し得たであろうレートを使用することを要求している。
取引日における資産および負債の換算
(2004年10月)
ICは、初度適用企業に対し、IAS第21号の機能通貨アプローチを適用するのではなく、すべての資産および負債を移行日の為替レートで換算することを企業に認める特定の例外措置を認めるべきかどうかについて議論した。ICは、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」およびIAS第21号のとる立場は明確であり、この論点の解釈にはなんらかの救済措置を提供するような余地がないことに合意した。
投資持株会社の 機能通貨の決定
(2010年3月)
ICは、投資持株会社の機能通貨の決定において、個別財務諸表上、子会社の基礎的な経済環境を考慮すべきであるかどうかに関するガイダンスを求める要望を受けた。IAS第21号に言及されている指標は総体的に適用すべきであり、この評価には高度な判断が必要となる。
投資の払戻しおよび為替換算調整勘定(FTCR) (2010年9月)
ICは、外貨による投資の払戻が発生した場合の為替換算調整勘定の振替に関するIAS第21号の適用に関して複数の解釈が存在することにより、実務上の不統一が生じる可能性があることについて検討した。しかし、この論点について適時に合意に達することは難しいと考え、この論点を却下した。
外国為替の制限および超インフレ経済
(2014年11月)
ICは、長期的な交換可能性の欠如はIAS第21号のガイダンスで扱われておらず、そのためこうした状況でIAS第21号をどのように適用するのかが完全には明確でないことに着目した。しかし、この論点を扱うにはより幅広いプロジェクトが必要になる可能性があるとして、この論点をアジェンダに取り上げないことを決定した。
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