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IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)(以下、「IC」)は、定期会議において、最大で20件までの様々な論点を定期的に検討しています。議論された論点のうち、解釈指針が作成されるのは、非常に限られます。改善や狭い範囲の修正となるものもありますが、多くの論点は却下されます。アジェンダに取り上げられなかった論点は「IFRICリジェクション(ICに却下された論点)」となり、これらは会計業界においては「非IFRIC(not an IFRIC)」もしくはNIFRICsとして知られています。NIFRICsは(2002年以降)成文化されており、国際会計基準審議会(IASB)の発行する基準書の「グリーンブック」に掲載されていますが、厳密には、権威のある会計基準書等に該当しません。このシリーズ記事では、ICによって「却下された」論点について知っておくべきことを取り上げます。今回はIAS第19号「従業員給付」を扱います。 |
a) IAS第19号は、どの社債がHQCBに該当するかを特定していない。 b) 過去の一般的な実務では、一般に認められた格付機関が付与する最上位2段階の格付け(例えば、「AAA」および「AA」)の一方を受けている上場社債は、通常、HQCBであると考えられてきた。 c) 金融危機により「AAA」または「AA」の社債の数が減少している。
a) 確定給付制度債務の現在価値を算定するために用いた重要な数理計算上の仮定は開示しなければならない。 b) 通常、割引率は重要な数理計算上の仮定である。 c) 企業は、経営者が企業の会計方針を適用する過程で行った判断を開示しなければならない(通常、HQCBの母集団の識別には判断が求められる)。
(a) 企業は、制度に対する拠出金について損金算入を受ける。 (b) 当該制度は、受け取った拠出金および稼得した投資収益に係る税金を支払う。 (c) 当該制度は、支払った給付についての損金算入を受けない。
(a) 確定給付制度債務の測定に関する設例の中では、支払うべき拠出金および給付に係る税金のみが言及されている。 (b) 制度資産に係る収益を算定する際に、企業は、制度資産の運営管理に係る費用および制度自体による未払税金(確定給付制度債務の測定に使用された数理計算上の仮定に含まれている税金以外)を減額する。 (c) 当該債務の測定は、制度が実際に保有する制度資産の測定から独立していなければならない。
トピック | 結論の要旨 |
割引率の算定 (2002年2月) | ICは、HQCBについて厚みのある市場が存在せず、かつ国債の期間が給付債務よりもかなり短い場合の割引率の決定方法について検討した。IAS第19号は十分なガイダンスを提供しているとして、この論点は却下された。 |
割引前の権利確定した従業員給付 (2002年4月) | ICは、従業員の退職時に支払予定の権利確定した給付は、割引前の金額で認識することが可能かどうかについてのガイダンスの公表を検討した。IAS第19号は、権利確定した給付に関する負債の測定には、従業員の退職予定日が反映されるべき旨および負債は現在価値に割り引かれる旨を明記している。 |
保険制度の分類 (2002年8月) | ICは、スウェーデンで創設された特定の保険型年金制度に関連したガイダンスを提供するかどうかを検討した。IAS第19号は、検討対象となったこの制度が確定給付制度であることを明確に示している。 |
合成的に作成したHQCBと同等の利回り (2005年6月) | 別の国の債券市場を参照して合成的に作成したHQCBと同等の利回りは、割引率の決定に使用することができない。 |
従業員の長期勤続休暇 (2005年11月) | ICは、IAS第32号の範囲からの従業員給付制度の除外は、IAS第19号の範囲に含まれる、公式および非公式のさまざまな取決めによって構成されうるすべての従業員給付を対象とすることが明らかである旨に合意した。 |
特別賃金税 (2007年3月) | ICは、確定給付に関連する税金は確定給付制度債務の一部として取り扱うべきかどうかの検討を要請された。世界各国に年金費用に係るさまざまな税金が存在する可能性があり、それらが法人所得税(IAS第12号)であるのか、従業員給付(IAS第19号)に関する費用であるのか、その他の費用(IAS第37号)であるのかは判断に拠る。 |
縮小および負の過去勤務費用 (2007年5月) | ICは、給付の削減を伴う制度改訂は、縮小または負の過去勤務費用のいずれとして会計処理すべきかの明確化を要請された。ICは、負の過去勤務費用と縮小との区別が曖昧であることに留意したが、この論点をIAS第19号の修正プロジェクトに含めるようIASBに提言することを決定した。
この論点は、2011年のIAS第19号の修正によって明確化されたため、このアジェンダ決定は重要ではなくなった。
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退職後給付-確定給付制度のための給付の配分 (2007年9月) | IAS第19号は、企業に対し、給付算定式に従って、確定給付制度における給付を勤務期間に帰属させることを要求している。この要求事項は、当該給付算定式により後期の年度に著しく高い水準の給付が配分されることとなる場合には適用が除外されるが、そのような場合、企業は定額法で給付を配分する。
ICは、過去に、現在給与に関して表現された給付算定式が後期の年度に著しく高い水準の給付を配分しているかどうかを判断するにあたって、予想される将来の昇給を企業が考慮すべきかどうかについて、検討を行っている。ICは、IASBが確定給付制度を取り扱う複数のプロジェクトを進行中であったことから、この論点をアジェンダから削除することを決定した。2011年のIAS第19号の修正ではこの論点への対応は行われなかった。ICは、IFRIC D9「拠出金又は名目的拠出金に係る約定収益による従業員給付制度」の結論の根拠において、現在給与を用いて表現されている給付算定式(全期間平均給与比例制など)が後期の年度に著しく高い水準の給付を配分しているかどうかを判断するにあたっては、予想される将来の昇給を考慮すべきであるとの結論を下した。これは、昇給によって後期の年度における給付が著しく高い水準にならないのであれば、給付が給付計算式に従って勤務期間に配分されることを意味する。しかし(後期の年度における)昇給が著しい場合には、定額法での配分を行わなければならない。
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政府による制度変更 (2007年11月) | 政府による制度変更の会計処理は、事業主が行う変更と同じでなければならない。 |
従業員拠出の取扱い (2007年11月) | ICは、従業員拠出の一般的な会計処理、および給付を支給するコストを従業員と事業主との間で分担する年金制度の会計処理の明確化を求める要望を受けた。制度の継続的な費用に対する従業員拠出は、企業の当期勤務費用の負担を削減する。給付の支給時に支払われるべき従業員拠出は、確定給付制度債務の算定において考慮しなければならない。次に、制度の正式な規約(または推定的債務)が、企業に対して将来の期間における給付の変更を要求する場合には、債務の測定にはそうした変更を反映させる。 |
勤務期間中の死亡給付 (2008年1月) | ICは、従業員が雇用期間中に死亡した場合の支払(「勤務期間中の死亡」給付)の帰属に関するガイダンスを求める要望を受けた。IAS第19号は、「従業員によるそれ以降の勤務が、それ以降の昇給の影響を除けば、当該制度の下での重要な追加の給付を生じさせなくなる日まで」給付費用を帰属させることを要求している。 |
制度資産の定義 (2008年1月) | ICは、企業が自社の従業員を対象とする年金制度に対して発行した投資または保険証券の会計処理に関するガイダンスを求める要望を受けた。保険証券が従業員給付制度に基づき設けられた基金に対してグループ企業により発行されたたものである場合、その取扱いは当該保険証券が「報告企業の発行した譲渡不能の金融商品」であるかどうかに拠る。当該保険証券が関連当事者によって発行されたものである場合、適格な保険証券の定義を満たさない可能性がある。 |
業績ハードルに基づく年金の約定 (2008年1月) | 数理計算上の仮定は、退職後給付を支給する最終的なコストを算定する変数についての、企業の最善の見積りである。業績目標は、退職後給付を支給する最終的なコストに影響を与える変数である。したがって、それらを給付額の算定に含めなければならない。さらに、業績ハードルが給付に影響を与える場合、給付の帰属への影響も考慮しなければならない。 |
清算 (2008年5月) | 確定給付制度債務の測定の基礎となる数理計算上の仮定において考慮されている事象は、IAS第19号に基づく清算として取り扱われない。 |
従業員利益分配に関する法定の取決めの会計処理 (2010年11月) | ICは、税法に従って計算された利益の10パーセントを従業員に分配することを企業に対して要求する、従業員利益分配(EPS)に関する法定の取決めの会計処理についての明確化を求める要望を受けた。そうしたEPSに関する取決めは従業員に支払うべき金額を税法に従って計算するものではあるが、従業員給付(IAS第19号)の定義を満たす。したがって、企業は、そうした従業員利益分配に関する取決めとの関連において、将来において予想される課税所得と会計上の利益の差額の戻入れに関連した資産または負債を認識してはならない。 |
権利確定条件付きの確定拠出制度 (2011年7月) | 権利確定条件が事業主に対して不足分を補うための追加拠出を要求しない場合、権利確定条件の有無が確定拠出制度としての分類に影響を与えることはない。さらに、IAS第19号に基づく確定拠出制度の会計処理は、当該制度を運営する別個の事業体に対して拠出を行うという事業主の義務に着目している。したがって、確定拠出制度に対する各拠出は、事業主が確定拠出制度に対する拠出について支払義務を負う勤務期間にわたって、費用として認識するか、負債(未払費用)として認識しなければならない。この勤務期間は、確定拠出制度から給付を受け取る資格を従業員に与えるための勤務期間とは区別される。返金は、事業主が返金を受け取る権利を得た時点で資産および収益として認識される。 |
「時短労働(Altersteilzeit)」制度に対する解雇給付の定義の適用 (2012年1月) | ICは、ドイツの「時短労働(Altersteilzeit)」制度に対するIAS第19号の適用に関するガイダンスを求める要望を受けた。事例では、IAS第19号(2011年改訂)第162項(a)と整合的に、報奨金の支払が一定期間にわたる従業員の勤務の完了を条件としているという事実は、給付が当該勤務の見返りであることを示している。したがって、当該給付は解雇給付の定義を満たさない。 |
拠出ベース約定の会計処理:2011年のIAS第19号の修正の影響 (2012年9月) | 2011年のIAS第19号の修正では、リスク分担の特徴の取扱いが明確化された。IASBは、この修正において、拠出ベース約定に固有な要素を取り扱う意図がなかった。したがって、当該約定が従業員と事業主との間のリスク分担契約の要素も含んでいる場合を除いて、2011年の修正による拠出ベース約定の会計処理の変更は生じないと予想されている。 |
数理計算上の仮定:割引率 (2013年11月) | ICは、「AA」よりも低い格付けの社債をHQCBと考えることができるかどうかの検討を求める要望を受けた。「優良」という用語は、絶対的な信用度を反映するものであり、社債の所与の母集団についての相対的な信用度の概念ではない。 |
税引前または税引後の割引率 (2013年7月) | 確定給付制度債務の計算に使用する割引率は、税引前の割引率でなければならない。したがってこの論点をアジェンダに追加しないことが決定された。 |
拠出に対するリターンを保証している従業員給付制度 (2014年5月) | こうした制度についての会計処理の要求事項の開発は、IASBの調査研究アジェンダを通じて行う方が適切に扱えるだろうとされた。 |
確定給付制度において保有する長寿スワップ (2015年3月) | ICは、確定給付制度において保有する長寿スワップは、制度資産として公正価値で測定すべきか、「適格な保険証券」として他の基礎で測定すべきかについての検討を求める要望を受けた。一般的な実務においては、長寿スワップを単一の金融商品として会計処理し、制度資産の一部として公正価値で測定している。 |
PricewaterhouseCoopers LLP
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