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Q. 関連当事者の範囲および開示の内容・範囲について、教えてください。日本の基準とは何か違いがあるのですか。
A
国際財務報告基準(IFRS)では、IAS第24号「関連当事者についての開示」により関連当事者の開示に関する会計基準が定められています。
わが国では、「関連当事者の開示に関する会計基準」(企業会計基準第11号。以下、「会計基準」)および同適用指針(企業会計基準適用指針第13号。以下、「適用指針」)があります。IFRSと日本基準の間には、関連当事者の範囲や開示の内容・範囲において、いくつかの差異があります。
ここでは、IAS第24号の概要を説明し、合わせて日本基準との主要な差異について紹介します。
1. 関連当事者の範囲
以下の表1-1および表1-2において、IAS第24号の関連当事者の範囲を示し,合わせて日本基準との主な対応関係や差異を説明します。
表1-1: 関連当事者の範囲(個人の場合)
IFRS
(IAS第24号第9項参照)
日本基準
(会計基準第5項(3)参照)
(a)個人またはその近親者が次のいずれかに該当する場合には、報告企業と関連がある。
(i) 報告企業に対する支配又は共同支配を有している、
(ii) 報告企業に対する重要な影響力を有している、
(iii) 報告企業又はその親会社の経営幹部の一員である
日本基準では、会計基準第5項(3) において以下の規定があり、いくつかの点においてIAS第24号と差異があります。
⑥会社の主要株主及びその近親者
⑦会社の役員及びその近親者
⑧親会社の役員及びその近親者
⑨重要な子会社の役員及びその近親者

近親者の定義:
IAS第24号における個人の「近親者」とは、企業との取引において個人に影響を与えるか、または影響されることが想定される親族の一員であり、以下の(a) ~ (c) を含む、とされています。
(a) 個人の子及び配偶者又は家庭内パートナー
(b) 個人の配偶者又は家庭内パートナーの子
(c) 個人又は個人の配偶者もしくは家庭内パートナーの扶養家族
一方、日本基準における「近親者」とは、「二親等以内の親族、すなわち、配偶者、父母、兄弟、姉妹、祖父母、子、孫及び配偶者の父母、兄弟、姉妹、祖父母並びに兄弟、姉妹、子、孫の配偶者をいう。」(会計基準第5項(8))とされ、より詳細な規定がありますが、IAS第24号で関連当事者に含まれる「家庭内パートナー」は含まれていません。
主要株主:
IAS第24号第9項では、日本基準のように主要株主(保有態様を勘案したうえで、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主)である個人が関連当事者に該当するということは明示されておらず、支配、共同支配又は重要な影響力の有無が判断基準です。「重要な影響力」については、IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」において、投資先の議決権の20%以上を保有している場合には、明らかな反証がない限り、重要な影響力を有していると推定されるとされています。逆に、議決権の20%未満しか保有していない場合には、明らかな反証がある場合を除き重要な影響力を有していないと推定される一方、投資先の取締役会または同等の経営機関への参加や、配当その他の分配の意思決定を含む方針決定プロセスへの参加、重要な取引、経営陣の人的交流、重要な技術情報の提供等、いずれかの要件により重要な影響力の存在が証明される場合があるとされています。そのため、例えば議決権比率が15%の株主の場合、日本基準では関連当事者となりますが、IAS第24号では、重要な影響力を有しているという明らかな証拠(反証)がない限り、重要な影響力はないため関連当事者ではないと判断される場合があります(IAS第28号第5項および第6項)。
経営幹部:
IAS第24号第9項での「経営幹部」(企業の活動を直接、間接に計画・指示を行い、支配する権限及び責任を有するもので、企業の取締役(業務執行権限の有無を問わない)を含む)と日本基準の「役員」(取締役、会計参与、監査役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)は概ね一致していると考えられます。
重要な子会社の役員及びその近親者:
日本基準では、会社グループの事業運営に強い影響力を持つ「子会社役員」は関連当事者とみなされますが、子会社役員及びその近親者が関連当事者になることはIAS第24号では明示されていません。もし、子会社役員が報告企業の意思決定に重要な影響力を有するとみなされる場合は、IAS第24号においても関連当事者となります。
次に、関連当事者が会社等の場合について、以下の表1-2で比較します。
表1-2: 関連当事者の範囲(会社等の場合)
IFRS
(IAS第24号第9項参照)
日本基準
(会計基準第5項(3)参照)
(b) 企業は、次のいずれかの条件に該当する場合は、報告企業と関連がある。
(i) 当該企業と報告企業が同一のグループの一員である(親会社、子会社及び兄弟会社は互いに関連する)
日本基準においても、財務諸表作成会社の①親会社、②子会社、③同一の親会社をもつ会社が関連当事者となるという点について、差異はありません。
(ii) 一方の企業が他方の企業の関連会社又は共同支配企業(または、他方の企業が一員となっているグループの一員の関連会社又は共同支配企業)
日本基準においても、④財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(「その他の関係会社」という)並びにその他の関係会社の親会社及び子会社、⑤関連会社及び当該関連会社の子会社は、関連当事者となります。「その他の関係会社」には共同支配投資企業が含まれ、関連会社には共同支配企業が含まれることから、重要な差異はないと考えられます。
(iii) 双方の企業が同一の第三者の共同支配企業である
(iv) 一方の企業が第三者の共同支配企業であり、他方の企業が当該第三者の関連会社である
(v) 報告企業又は報告企業と関連がある企業の従業員給付のための「退職後給付制度」である
日本基準では、⑪従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る)と限定されていますが、IAS第24号では、そのような取引内容の限定はなく、さらに、「報告企業の関連会社」の年金制度(退職後給付制度)についても関連当事者になるとされています。
(vi) 当該企業が、前述(a) (表1-1参照)に示した個人に支配又は共同支配されている。
(vii) 前述(a) (i) に示した個人が当該企業に対する重要な影響力を有しているか、又は当該企業(もしくはその親会社)の経営幹部の一員である。
(viii) 企業(又は企業が属する企業集団の一員)が報告企業又はその親会社に経営幹部サービスを提供している。
日本基準では、表1-1 ⑥~⑨の個人が、議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社は関連当事者になります。
日本基準においても、IAS第24号においても、報告企業(財務諸表作成会社)の関連会社同士は、お互いに関連当事者にはならない点は共通です。
一方、IAS第24号では関連当事者である個人が支配、共同支配又は重要な影響力を有する会社等が関連当事者とされるのに対し、日本基準では、関連当事者である個人が「議決権の過半数」を所有している会社等が関連当事者とされており、数値基準が設けられている点には差異があります。さらに、全般に、支配や重要な影響力についての考え方自体に差異があり、したがって、子会社・関連会社の範囲も異なる点に注意が必要です。なお、IFRSにおける「支配」については、「KeyWord13:支配の考え方」をご参照ください。
2. 関連当事者についての開示
IAS第24号で定められている関連当事者についての開示内容は表2のとおりです。IAS第24号と日本基準間で若干の差異がありますので留意が必要です。
表2: IAS第24号「関連当事者についての開示」 内容
(1) 親会社と子会社の間の関係等(第13項)
・親会社の名称
・親会社が最終的な支配当事者と異なる場合には,最終的な支配当事者の名称
・親会社及び最終的な支配当事者が公表用の連結財務諸表を作成しない場合は、連結財務諸表を公表している次に上位の親会社の名称
(2) 経営幹部の報酬(第17項)
・報酬の合計額及び、下記分類ごとの金額
    ・短期従業員給付
    ・退職後給付
    ・その他の長期給付
    ・解雇給付
    ・株式に基づく報酬
(3) 取引及び未決済残高(コミットメントを含む)に関する情報(第18項)
・取引の金額
・未決済残高(コミットメントを含む)の金額及び以下の項目:
‐契約条件(担保設定等含む)及び決済に用いられる対価の内容
‐付与しているまたは付与されている保証の詳細
・未決済残高に関する貸倒引当金
・関連当事者に対する不良債権について期中に認識した費用
(少なくともこれらの項目を含む。)
(4) 関連当事者の開示区分 (上記(3)の開示は、右の区分ごとに個別に開示する必要がある。)(第19項)
・親会社
・企業に対して共同支配または重要な影響力を有する企業
・子会社
・関連会社
・企業が共同支配投資者となっている共同支配企業
・企業又はその親会社の経営幹部
・その他の関連当事者

重要性:
IAS第24号では、企業が財務諸表の開示対象期間の間に関連当事者との取引をしていた場合には、関連当事者との関係が財務諸表に与える潜在的な影響を財務諸表利用者が理解するのに必要な情報及び関連当事者との関係の内容を開示しなければならないとされており、開示に関する重要性について詳細な基準は特に定められていません。他方、日本基準では、適用指針において、開示にあたっての重要性の基準として、売上高の10%や総資産の1%等の数値基準が設けられています。
経営幹部の報酬:
IAS第24号は経営幹部の報酬の開示を要求しています。一方、日本基準では、役員報酬はコーポレート・ガバナンスに関する非財務情報として開示が規定されているため,関連当事者の開示の対象外とされています(「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」第24項参照)。
コミットメントの開示:
IAS第24号では、開示すべき関連当事者取引及び残高に「コミットメント」が含まれます。これは、財務諸表の利用者が関連当事者間取引における潜在的影響を理解するために有用であるためです。なお、日本基準においても、資金賃借取引、債務保証等または担保提供(受入れ)について開示される場合に記載すべき内容が定められています。
開示の区分:
IAS第24号では「親会社」「子会社」等関連当事者の区分ごとに取引等を記載することとなっています。また,企業の財務諸表に与える関連当事者取引の影響力を理解するために個々の開示が必要とされる場合を除き,類似の性質を持つ項目は総額で開示することができます(IAS第24号第24項)。これに対し日本基準では,原則として個々の関連当事者ごとに開示を求めるなど,比較的詳細な開示が求められています。
政府関連企業との取引に関する開示の免除:
IAS第24号では、政府(国家、地方、または国際機関のいずれかを問わず、政府、政府機関、及び類似機関)及び政府関連企業(政府が支配、共同支配、または重要な影響力を有している企業)が関連当事者となる場合に一部の開示要求が免除されます(IAS第24号第25項)が、日本基準にはそのような取引の相手先によって開示対象外とする規定はありません。IAS第24号第25項では、(a) 報告企業に対する支配、共同支配もしくは重要な影響力を有する政府、(b) 同一の政府が報告企業と他の企業の両方に対する支配もしくは共同支配または重要な影響力を有しているために関連当事者となっている当該他の企業との取引についての開示の一部が免除されます。
*このQ&Aは、『週刊 経営財務』 2879号(2008年07月28日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2019年12月31日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、PwCあらた有限責任監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。 
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