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論点

IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)(以下、「IC」)は、研究開発(R&D)プロジェクトの資金を調達するために政府から受け取っている返還の可能性のある現金は、国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」に基づく金融負債であると結論付けました(国際会計基準(IAS)第32号「金融商品:表示」においても同じ結論となります)。この金融負債は、当初に公正価値で認識され、受け取った現金と金融負債の公正価値との差額は政府補助金であり、IAS第20号「政府補助金」に基づいて会計処理されます。

ICに提出された事実は以下のとおりでした。
  • 政府は、適格な研究プロジェクトのために企業に現金を提供している。
  • 企業が、研究プロジェクトの結果を利用して商業化することを決定(プロジェクトが成功)した場合、現金は返還することとなる。
  • 企業がプロジェクトの中止を決定した場合、研究の成果は政府に移転される。
ICは、アジェンダ決定を公表し、この取決めは金融負債であると結論付けました。企業は、非金融的義務(研究結果)によって決済すること以外では、現金の引渡しを回避できません。企業は現金または資産で返済し、その融資は「返済免除」されないため、受け取った現金はIAS第20号の範囲に含まれません。[IAS第32号第20項]

影響

影響を受ける企業


同様の融資の取決めは、多くのさまざまな政府が実施しています。中止した研究プロジェクトの成果を引き渡すことを求める条項は、競争法の遵守目的のため、通常は取決めに含まれています。この種の政府の計画は、多くの場合、比較的小規模なバイオテク企業や製薬会社によって特に新規事業の立ち上げ期間に利用される可能性が高いと言えます。

しかし、製薬業界におけるR&D資金は、ベンチャー・キャピタリスト(VC:ベンチャー事業への投資家)、政府および慈善団体など、多くの出資者から拠出されます。ICが検討したのは非常に特定された事実パターンでしたが、類似した特徴を有する取決めに広い範囲で影響します。

VCは、設立されたばかりの製薬会社のR&Dプロジェクトに融資する場合があります。返済は、医薬品の商業化をトリガーとして、定額または売上比率などに基づき行われます。製薬会社が商業化しないことを選択したり、あるいは研究が失敗したりした場合には、製薬会社は知的財産または研究成果をVCに移転することが要求されます。多くの規制当局はICのアジェンダ決定に注目しており、類似する事実パターンも金融負債として処理されるべきと見込んでいます。製薬会社が医薬品の商業化について将来有望との見通しを持たない状況において、知的財産の移転を求める要求事項がVCの持分を保護します。
慈善団体は、多くの場合において、特定の疾病・疾患の治療に関する研究支援またはより広範囲の科学研究プロジェクトを支援します。慈善団体からの助成金は、政府の計画またはVC資金と同様に幅広い特徴を含んでいる可能性があります。慈善基金の管財人は、慈善基金が、有益な成果が共有されずに新設の製薬会社などの営利組織の利益になることがないようにする責務があります。

どのような影響があるか


政府、慈善団体、またはその他の当事者から類似の条件で援助を受けている企業は、現行の会計処理に対するアジェンダ決定の影響を検討しなければなりません。現金を受け取っている場合には、IFRS第9号(IAS第32号/第39号)の規定に従って金融負債を認識しなければならない可能性があります。

アジェンダ決定の適用時期


アジェンダ決定は即時適用されます。アジェンダ決定は、本来あるべき会計上の取扱いに関するICの見解を明確にしています。表示を修正する場合は、会計方針の変更として会計処理しなければなりません。そのため遡及的に会計処理する必要があり、比較数値については修正再表示しなければなりません。

詳しい情報の入手先


アジェンダ決定の全文は、IFRIC Update(2016年5月)(英語)をご参照ください。
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