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要点
2022年10月、国際会計基準審議会(IASB)は、IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)によって承認された「貸手のリース料免除(国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」およびIFRS第16号「リ―ス」)」に関するアジェンダ決定を最終化しました。本アジェンダ決定は、貸手側の会計処理、特に以下について取り上げています。
  • 貸手が賃料減免の前においてリース契約に基づく借手からのリース料の支払を免除すると見込む場合に、IFRS第9号の予想信用損失(ECL)モデルをオペレーティング・リース債権に対してどのように適用すべきか。
  • 賃料減免の会計処理において、IFRS第9号の認識の中止の要求事項を適用すべきか、IFRS第16号のリースの条件変更の要求事項を適用すべきか。

論点
2022年10月、オペレーティング・リースの貸手はIFRS第9号およびIFRS第16号の下で特定の賃料減免をどのように会計処理すべきかを質問した要望書に応え、IFRS ICのアジェンダ決定が最終化されました。検討された賃料減免は、リース契約に対する唯一の変更が借手からの特定のリース料を貸手が免除するものであり、当該減免の対象がオペレーティング・リース債権(および、リース収入)として貸手によって認識済みのリース料と未認識のリース料(将来のリース料)の双方であるものです。
IFRS ICは、リース料の免除に応じる前の期間において、貸手は、既にオペレーティング・リース債権として認識されたリース料の免除の見込みを含めた一定範囲の生じ得る結果を評価することにより算定される、偏りのない確率加重金額に基づいてオペレーティング・リース債権に対するECLを測定しなければならないと結論づけました。 これは、過大なコストや労力を掛けずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報が存在し、また、リース料の支払を免除するという見込みがECL測定において考慮に入れるべき潜在的なキャッシュ・フロー不足を反映しているという前提に基づいています(IFRS第9号第5.5.17項)。IFRS ICは、担保は提出された事実パターンには含まれていなかったため、見込まれるキャッシュ・フロー不足を見積る際の担保や他の信用補完に対する借手の権利に関する検討事項を分析しませんでした。
IFRS ICは、後述するように、リース料が免除される場合には、貸手はオペレーティング・リース債権にIFRS第9号の認識の中止の要求事項を適用し、未払リース料を含む将来のリース料にはIFRS第16号のリースの条件変更の要求事項を適用すべきであると結論づけました。
IFRS第9号の要求事項の適用にあたり、貸手は、リース料が免除される日の直前のオペレーティング・リース債権に係るECLを再測定し、差額を純損益で認識しなければなりません。リース料が免除された場合には、貸手は、関連するECL引当金を含むオペレーティング・リース債権の認識を中止しなければなりません。
PwCの所見
IAS第1号第82項では、以下を独立した表示科目で表示することが要求されています。
したがって、貸手は、関連する残高がIAS第1号の要求事項に従って適切に表示されているか検討する必要があります。
IFRS第16号の条件変更の要求事項を適用する際に、貸手は、IFRS第16号第87項に従い、将来のリース料の免除を新たなリースとして会計処理します。当初のリースに係る前払リース料または未払リース料を含め、新たなリースに基づく変更後の将来のリース料は、定額法または他の規則的な方法のいずれかで収益として認識されます。
誰がどのような影響を受けるか
要望書に記載された事実パターンでは、契約条件に対する唯一の変更は、一部のリース料の免除であるというシナリオでした。リース料の免除に加えて契約条件に追加的な変更がある場合には、契約条件の変更を会計処理する際に考慮しなければならない要素が追加される可能性があります。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック時には賃料の免除が広く行われており、過去の期間に重要性のある金額を免除している貸手は、本アジェンダ決定の影響を受ける可能性があります。さらに、何らかの理由により重要性のあるリース料の免除を継続している貸手は、将来的に影響を受ける可能性があります。
影響を受ける主要な領域は以下のとおりです。
  • IFRS第9号を適用するかIFRS第16号を適用するかFAQ 15.136.1 – How should a lessor account for forgiveness of amounts contractually due for past rent which they voluntarily forgive?(英語のみ)で検討されているように、契約上の支払期限が到来している過去の賃料の免除に、これまで会計方針の選択としてIFRS第16号を適用していた貸手は、本アジェンダ決定の影響を受ける。貸手は、適用する会計方針を再検討し、適用する会計処理がリース料の性質と整合していること(すなわち、オペレーティング・リース債権の定義が満たされているか否か)を確認する必要がある。
  • ECLの測定におけるリース料の免除の検討:貸手は、リース料の支払を免除するに先立って、報告日時点においてリース料免除の見込みに関する合理的で裏付け可能な情報が存在したかどうかを検討しなければならない。この場合、その情報はECL測定の中にひとつのシナリオとして含められる可能性がある。
PwCの所見
本アジェンダ決定は、オペレーティング・リース債権の測定におけるIFRS第9号の適用範囲は認識の中止および減損についてのみであることを明確にしています。
企業は、免除が報告日後のある時点で初めて行われた場合、ECL測定で情報が適切に取り込まれていたことを確保するために、報告日時点でどのような合理的で裏付け可能な情報が入手可能だったかを再検討する必要がある可能性があります。
さらに、本アジェンダ決定は、キャッシュ・フロー不足の見込みに与える担保の影響についてガイダンスを提供していません。リース料の免除に先立って、借手から担保を受けた貸手は、ECLモデルにおける担保の適切な会計処理を検討する必要があるでしょう。
  • IFRS9号の適用:貸手は、金融商品の定義を満たすオペレーティング・リースに基づくリース料の免除に対してのみ、IFRS第9号が適用されることを確保する必要がある。IAS第32号AG9項は、「貸手はオペレーティング・リースを金融商品とはみなさない(期限の到来していて借手が支払うべき個々の支払に関する部分を除く)」と述べている。
適用日
本アジェンダ決定の適用日は、新たな要求事項を会計システムに組み込むために十分な時間を企業に提供するIASBのデュー・プロセスに従っており、そのため、基準を適用する企業は、新たな要求事項に従って財務諸表を作成する十分な時間を有することになります。要求事項の適用を遅らせる企業は、特に影響に重要性がある場合には、関連する規制当局の見解や国や地域の法的環境も考慮すべきです。
本アジェンダ決定はIAS第8号に従って遡及的に適用されるため、比較数値の変更が生じる可能性があります。経営者が、本アジェンダ決定を受け、会計方針の変更が必要であるがまだ変更されていないと結論づけた場合には、IAS第8号第30項および第31項に基づく今後公表される基準に関する開示と同様の開示を提供することを検討すべきです。実際に会計方針が変更された場合、IAS第8号の会計方針の変更に適用される開示、およびIAS第1号の期首貸借対照表に対する潜在的な要求事項を考慮しなければなりません。
以下のFAQ のガイダンスもご参照ください。
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