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日本基準トピックス 第421号
主旨
  • 2021年2月10日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」とする)は、第451回企業会計基準委員会(2021年2月9日開催)の議事概要として、「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(2021年2月10日更新)」(以下、「本議事概要」とする)を公表しました。
  • 本議事概要は、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方についてASBJがこれまでに公表した以下の議事概要の考え方を引き続き周知するとともに、現状における論点を審議し、これらの議事概要を更新する形で公表されたものです。
  • 本議事概要では、企業会計基準第 31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下「見積開示基準」という)との関係を明らかにして欲しい等の意見が聞かれたことから、見積開示基準を適用する前後に分けて取扱いが示されています。
  • 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。
経緯
2020年4月10日、ASBJは、第429回企業会計基準委員会(2020年4月9日開催)の議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」を公表し、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて様々な会計上の見積りを行う際の留意点を示しました(日本基準トピックスNo.397参照)。
しかしながら、2020年4月末より始まった2020年3月期決算の決算発表において、追加情報の開示が十分に行われないのではないかとの懸念から、ASBJは、2020年5月11日に第432回企業会計基準委員会(2020年5月11日開催)の議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(追補)」を公表しました(日本基準トピックスNo.399参照)。
第429回企業会計基準委員会の議事概要および第432回企業会計基準委員会の議事概要で示された、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方は以下のとおりです。
(1) 「財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出する」上では、新型コロナウイルス感染症の影響のように不確実性が高い事象についても、一定の仮定を置き最善の見積りを行う必要があるものと考えられる。
(2) 一定の仮定を置くにあたっては、外部の情報源に基づく客観性のある情報を用いることができる場合には、これを可能な限り用いることが望ましい。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響については、会計上の見積りの参考となる前例がなく、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がないため、外部の情報源に基づく客観性のある情報が入手できないことが多いと考えられる。この場合、新型コロナウイルス感染症の影響については、今後の広がり方や収束時期等も含め、企業自ら一定の仮定を置くことになる。
(3) 企業が置いた一定の仮定が明らかに不合理である場合を除き、最善の見積りを行った結果として見積もられた金額については、事後的な結果との間に乖離が生じたとしても、「誤謬」にはあたらないものと考えられる。
(4) 最善の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定は、企業間で異なることになることも想定され、同一条件下の見積りについて、見積もられる金額が異なることもあると考えられる。このような状況における会計上の見積りについては、どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、財務諸表の利用者が理解できるような情報を具体的に開示する必要があると考えられ、重要性がある場合は、追加情報としての開示が求められるものと考えられる。
上記(4)の「重要性がある場合」とは、当年度に会計上の見積りを行った結果、当年度の財務諸表の金額に対する影響の重要性が乏しい場合であっても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合があるため、これに該当する場合は、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが、財務諸表の利用者に有用な情報を与えることになると思われ、開示を行うことが強く望まれる。
また、上述の考え方について、四半期決算における考え方を明らかにして欲しいとの意見が聞かれたことから、ASBJは、2020年6月26日に、以下の考え方を示した第436回企業会計基準委員会の議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(2020年6月26日更新)」を公表しました(日本基準トピックスNo.405参照)。
  • 前年度の財務諸表において上記(4)に関する追加情報の開示を行っている場合で、四半期決算において新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に重要な変更を行ったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該変更の内容を記載する必要があるものと考えられる。
  • 前年度の財務諸表において仮定を開示していないが、四半期決算において重要性が増し新たに仮定を開示すべき状況になったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該仮定を記載する必要があるものと考えられる。
  • 前年度の財務諸表において上記(4)に関する追加情報の開示を行っている場合で、四半期決算において新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に重要な変更を行っていないときも、重要な変更を行っていないことが財務諸表の利用者にとって有用な情報となると判断される場合は、四半期財務諸表に係る追加情報として、重要な変更を行っていない旨を記載することが望ましい。
概要
ASBJは、第429回企業会計基準委員会の議事概要を公表してから約10か月が経過するものの、現状においても、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を予測することが困難である状況に変化はなく、会計上の見積りを行う上で、特に将来キャッシュ・フローの予測を行うことが極めて困難な状況であることに変わりはないとしています。このため、本議事概要は、これまでに公表した議事概要の考え方を引き続き周知するとともに、現状における論点を審議し、これまでに公表した議事概要を更新する形で公表されました。本議事概要における考え方は以下のとおりです。
見積開示基準を適用する前の取扱い
見積開示基準を適用する前の年度決算に関する取扱いおよび四半期決算の取扱いについては、第429回企業会計基準委員会の議事概要、第432回企業会計基準委員会の議事概要および第436回企業会計基準委員会の議事概要で示した考え方から変わらない。
見積開示基準を適用した後の取扱い
  • 第429回企業会計基準委員会の議事概要および第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した考え方のうち、上記(1)、(2)および(3)については、見積開示基準の適用後も、会計上の見積りを行う上で新型コロナウイルス感染症の影響を考えるにあたり変わらない。
  • 見積開示基準は、重要な会計上の見積りとして識別した項目について、当年度の財務諸表に計上した金額、および会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報を開示することとしている。後者には、例えば、当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法、当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定、および翌年度の財務諸表に与える影響が含まれる。
したがって、第429回企業会計基準委員会の議事概要および第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した考え方のうち、(4)において重要性がある場合に追加情報としての開示が求められる新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等の一定の仮定については、見積開示基準で求められる開示に含まれることが多いと想定され、前段に記載した他の開示と合わせ、新型コロナウイルス感染症の影響について、より充実した開示になることが想定される。
なお、見積開示基準に基づく開示において、第429回企業会計基準委員会の議事概要および第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した開示がなされる場合、改めて追加情報として開示する必要はないものと考えられる。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響に重要性がないと判断される場合であっても、当該判断について開示することが財務諸表の利用者にとって有用な情報となると判断し、追加情報として開示しているケースが見られる。見積開示基準に基づく開示は、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目について求められるものであるため、このような開示は、見積開示基準により求められる開示には含まれないが、引き続き、追加情報を開示する趣旨に沿ったものになると考えられる。
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