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日本基準トピックス 第442号
主旨
  • 2022年3月15日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」とする)は、「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」(以下、「本論点整理」とする)を公表しました。
  • 本論点整理は、金融商品取引法における電子記録移転権利または資金決済法における暗号資産に該当するICO(Initial Coin Offering。企業等がトークン(電子的な記録・記号)を発行して、投資家から資金調達を行う行為の総称である。)トークンの発行および保有等に係る取引に関する会計基準を整備していく一環として、関連する論点を示し、基準開発の時期および基準開発を行う場合に取り扱うべき会計上の論点について関係者からの意見を募集することを目的としています。
  • また、本論点整理と合わせて別途公表された実務対応報告公開草案第63号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」(以下、「実務対応報告(案)」とする)で取り扱わないこととした一部の論点について、本論点整理の中で関係者からの意見を募集することとしています。
  • 本論点整理についてのコメントの提出期限は、2022年6月8日とされています。
    • 本論点整理の原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。
経緯
2016年に改正された「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下、「資金決済法」とする)を受け、ASBJは、2018年3月に実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(以下、「実務対応報告第38号」とする)を公表しました。実務対応報告第38号は、公表時点において仮想通貨に関連するビジネスが初期段階にあり、今後の進展を予測することは難しいことや仮想通貨の私法上の位置づけが明らかではないことを踏まえ、当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみを定めていました。企業が仮想通貨を発行した場合の会計処理については、取引の実態とそこから生じる論点が網羅的に把握されていない状況にあったことから、実務対応報告第38号の範囲から除外していました。
2019年に成立した「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第28号)により、金融商品取引法が改正されました。これにより、いわゆる投資性ICOについては、金融商品取引法の規制対象となりました。他方、投資性ICO以外のICOトークンについては、併せて改正された資金決済法上の「暗号資産」に該当する範囲において、引き続き資金決済法の規制対象に含まれることとされました。なお、資金決済法の改正により、仮想通貨は暗号資産に呼称が変更されました。そのため、本論点整理においても、基本的に呼称は「暗号資産」で統一されています。
このように金融商品取引法及び資金決済法が改正されたことを受けて、ASBJは、金融商品取引法上の電子記録移転権利または資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行・保有等に係る会計上の取扱いに係る検討を行ってきました。
資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンについては、対象とする取引事例が少数であり、特に個別性が強いことも考えられる発行取引に関して、取引に対する関係者の共通認識が必ずしも定まっていないと考えられることから、本論点整理において、識別した論点の整理を公表し、関係者からの意見を募集することとしています。
また、実務対応報告(案)の審議の過程において取り扱わないこととした、金融商品取引法上の電子記録移転有価証券表示権利等の一部の論点についても、関係者からの意見を募集するために、本論点整理において取り扱っています。
範囲
金融庁が2018年12月に公表した「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書(以下、「研究会報告書」とする)によれば、「ICO(Initial Coin Offering)について、明確な定義はないが、一般に、企業等がトークンと呼ばれるものを電子的に発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為を総称するものとされている。」と記載されています。また、研究会報告書によれば、「ICOは、その設計の自由度が高いことから様々なものがあると言われているが、トークン購入者の視点に立った場合には、以下のような分類が可能と考えられる。」と記載されています。
ICOトークンの分類
発行者の債務の内容
本論点整理における取扱い
(1) 投資型
発行者が将来的な事業収益等を分配する債務を負っているとされるもの
-(*1)
(2) その他権利型
発行者が将来的に物・サービス等を提供するなど、上記の投資型以外の債務を負っているとされるもの
〇(*2)
(3) 無権利型
発行者が何ら債務を負っていないとされるもの
(*1)このうち、電子記録移転有価証券表示権利等に該当するICOトークンについては、実務対応報告(案)で取り扱っている。実務対応報告(案)で取り扱わないこととした一部の発行および保有に関する論点については、本論点整理において取り扱っている。
(*2)このうち、資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンを対象として、その発行および保有に関する論点について取り扱っている。
主要な論点
本論点整理では、主要な論点として、資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行および保有に関する論点を取り扱っています。
論点
論点の内容
【論点1】 基準開発の必要性及び緊急性、並びにその困難さ
現在観察できる少数の取引事例だけでは、我が国における対象取引の経済的実態を捉えることが難しく、また暗号資産の私法上の取扱いが明らかでなく、国際的な基準開発が行われていない状況で、国際的な基準開発に先行して我が国の基準開発に着手し、その後に国際的な会計基準が開発された場合には、再度我が国の基準開発を行う可能性がある。
基準開発にあたっては、対象取引が普及し、当該取引に対する関係者の共通認識が一定程度定まる必要があるとして、以下について検討している。
(1) 対象取引のこれまでの実施状況および今後の普及見込み、並びに現在、会計基準が存在しないことが対象取引の普及に及ぼしている影響の有無を踏まえ、速やかに基準開発に着手すべきか否か
(2) 速やかに着手しないとした場合、基準開発を進める上で障害となり得る状況の存在およびその解消見込みを踏まえ、効果的かつ効率的な基準開発の観点から、どのようなタイミングで基準開発に着手すべきか
【論点2】 ICOトークンの発行者における発行時の会計処理
発行者が負担する義務によりICOトークンを以下の2つに分類し、それぞれの会計処理を検討している。
無権利型
一部の投資家はICOトークンに付与されている権利に着目して投資を行うのではなく、当該ICOトークンを他者に売却することによる値上がり益を期待して投資を行うことによるものと考えられる。この場合、発行者は、何ら義務を負担していないことから認識すべき負債は存在しないと考えられ、対価の受領時においてその全額を利益に計上することが考えられる。
その他権利型
ICOトークンの発行取引の実態をどう捉えるのかが論点であるとしており、以下の考え方を説明している。
(1) 契約自由の原則の下で自発的に発生した独立第三者間取引においては経済的に等価交換が成立している(その結果、当初認識時に利益を計上するケースは生じ得ない)とする考え方
(2) 提供する財またはサービスの価値が調達した資金の額に比して著しく僅少であるケースの存在をICOトークンの発行取引の実態を示す特徴の1つとして捉え、当該取引を会計上適切に描写するため、等価交換が常に成立しているものとしては取り扱わない(その結果、当初認識時に利益を計上するケースは生じ得る)とする考え方
その他の論点
本論点整理では、その他の論点として、資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンならびに金融商品取引法上の電子記録移転有価証券表示権利等の発行および保有に関する論点を取り扱っています。
論点
論点の内容
【論点3】 資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行及び保有に関するその他の論点
自己が発行したICOトークンの保有を以下の2つの場合に分けて、それぞれの会計処理を検討している。
(1)   ICOトークンの発行時において自己に割り当てたICOトークンの会計処理
(2)    ICOトークンの発行後において第三者から取得したICOトークンの会計処理 1
【論点4】 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有に関する論点
電子記録移転有価証券表示権利等の発行および保有に関して、実務対応報告(案)で取り扱わないこととした以下の論点を検討している。
(1)  株式会社以外の会社に準ずる事業体 23における発行及び保有の会計処理
(2)   株式または社債を電子記録移転有価証券表示権利等として発行する場合に財またはサービスの提供を受ける権利が付与されるときの会計処理
(3)   暗号資産建の電子記録移転有価証券表示権利等の発行の会計処理
(4)   組合等への出資のうち電子記録移転権利に該当する場合の保有の会計処理
_______________________________________________________________
1【論点2】における「発行者が何らかの義務を負担している場合」を前提としている。
2 資産の流動化に関する法律」に基づく特定目的会社、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づく投資法人、投資事業組合、海外における同様の事業を営む事業体、パートナーシップその他これらに準ずる事業体で営利を目的とする事業体がこれに該当する。
3 本論点整理では、会社に準ずる事業体と信託を合わせ、会社に準ずる事業体等としている。
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