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日本基準トピックス 第478号
主旨
  • 2023年12月22日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の一部改正(以下、「本改正」という)を公表しました。
  • 本改正では、企業が締結している個別分野における「重要な契約」について、開示すべき契約の類型や求められる開示内容を具体的に明らかにしています。
  • 原文については、金融庁のウェブサイトをご覧ください。
経緯
我が国における「重要な契約」に関する開示について、有価証券報告書等では、企業が「重要な契約」を締結している場合、【経営上の重要な契約等】にその概要を記載することが求められています。また、借入金や社債等に付された財務上の特約(コベナンツ、財務制限条項等が含まれる)のうち、投資判断に重要な影響を及ぼすと認められるものについては、財務諸表への注記が求められています。しかし、実際の開示状況は、同様の制度を有する諸外国と比較して不十分であるとの指摘が存在しました。
2022年6月に公表された「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告」では、こうした指摘を踏まえ、個別分野における「重要な契約」について、開示すべき契約の類型や求められる開示内容を具体的に明らかにすることで、適切な開示を促すことが考えられるとされました。
本改正は、当該ディスクロージャーワーキング・グループ報告を踏まえ、有価証券報告書等および臨時報告書の記載事項について、改正しています。
概要
本改正では、従来の「重要な契約」に関する開示規定に加えて、個別分野において開示すべき契約の3つの類型を示し、開示内容を具体的に規定しています。
これらが存在する場合、有価証券報告書等での開示(*1)が求められることに加え、ローン契約と社債に付される財務上の特約については、ローン契約の締結時または社債の発行時等に臨時報告書の提出が求められます。
類型
開示書類
重要な契約等
主な開示内容
1.企業・株主間のガバナンスに関する合意
有価証券報告書等
有価証券報告書等の提出会社(*2)が、提出会社の株主との間で、以下のガバナンスに影響を及ぼし得る合意を含む契約(重要性の乏しいものを除く)を締結している場合
(a) 役員候補者指名権の合意
(b) 議決権行使内容を拘束する合意
(c) 事前承諾事項等に関する合意
  • 契約の概要(年月日、相手方、合意の内容を含む)
  • 合意の目的
  • 取締役会における検討状況その他の提出会社における合意に係る意思決定に至る過程
  • (企業・株主間のガバナンスに関する合意の場合)合意が提出会社の企業統治に及ぼす影響(影響を及ぼさないと考える場合には、その理由)
2.企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意
有価証券報告書等
有価証券報告書等の提出会社が、提出会社の株主(大量保有報告書を提出した株主)との間で、以下の株主保有株式の処分等に関する合意を含む契約(重要性の乏しいものを除く)を締結している場合
(a) 保有株式の譲渡等の禁止・制限の合意
(b) 保有株式の買増しの禁止に関する合意
(c) 株式の保有比率の維持の合意
(d) 契約解消時の保有株式の売渡請求の合意
3.ローン契約と社債に付される財務上の特約(*3)
有価証券報告書等
有価証券報告書等の提出会社または連結子会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結または社債の発行をしている場合であって、その期末残高が連結純資産額の10%以上である場合
  • 契約の概要(年月日、相手方の属性(ローン契約の場合)、金額および期限、担保の内容を含む)
  • 財務上の特約の内容
臨時報告書
有価証券報告書等の提出会社または連結子会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結または社債の発行をした場合であって、その元本または発行額の総額が連結純資産額の10%以上(*4)である場合
弁済期限もしくは償還期限の変更、財務上の特約の内容の変更(*5)があった場合
  • 契約の概要
  • 変更内容、変更日
財務上の特約に抵触した場合
  • 契約の概要
  • 抵触事由、解消または改善するための対応策
*1 記載すべき事項の全部または一部を同一開示書類の他の箇所(例えば、財務諸表の注記等)に記載した場合には、その旨を記載することにより、当該他の箇所において記載した事項の記載を省略することができる。なお、有価証券報告書等の記載内容を補完する詳細な情報については、任意開示書類等を参照することも可能。
*2 提出会社が持株会社の場合には、その連結子会社を含む。
*3 当該提出会社または連結子会社の財務指標があらかじめ定めた基準を維持することができない事由が生じたことを条件として当該提出会社または連結子会社が期限の利益を喪失する旨の特約(コベナンツ、財務制限条項等)に限る。なお、特定融資枠契約に関する法律第2条第1項に規定する特定融資枠契約(コミットメントライン)は含まれない。
*4 公開草案(2023年6月30日公表)では3%とすることが提案されていたが、臨時報告書の提出件数が著しく増加し、企業負担が過剰なものとなるといったパブリックコメントにおける意見を踏まえ、10%に見直された。
*5 変更の内容が当該財務上の特約に定める事由および当該事由の発生があった場合の効果に照らして軽微なものを除く。
適用時期
本改正に係る内閣府令は2024年4月1日から施行され、改正後の規定は、以下のとおり適用されます。
「重要な契約」の有価証券報告書等への記載
2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用
ただし、施行日前に締結された契約については、2025年3月31日以前に開始する事業年度に係る有価証券報告書等までは省略可能(3月決算会社の場合、2025年3月期まで省略可能、2026年3月期は省略不可)(*6)
財務上の特約に係る臨時報告書の提出
2025年4月1日以後に提出される臨時報告書から適用
ただし、施行日前に締結された契約について、財務上の特約に変更があった場合等に係る臨時報告書は、2026年3月31日までは省略可能 (*6)
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