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将来予測的な情報を組み入れることは、国際財務報告基準(IFRS)第9号の下での大きな変更点です。PwCの金融商品の専門家であるNitassha Somaiが、未来を占う水晶玉を覗きこむように、予想信用損失モデルについて解説します。
IFRS第9号の予想信用損失(ECL)モデルは、過去や現在の先にある将来事象を検討して信用損失を算定することを企業に要求しています。将来のマクロ経済的事象を含めることを求める要求事項は、新モデルのもとでの重要な変更点です。それはまるで、魔法の呪文を使って水晶玉に将来の姿を浮かび上がらせるようなものです。会計士は次世代の占い師なのでしょうか。
合理的かつ裏付け可能な情報が意味するものとは
経営者は、過度なコストまたは労力をかけずに合理的で裏付け可能な入手できる全ての情報を検討しなければなりません。銀行、特に大手と言われる銀行ほど「過度なコストまたは労力」についてしっかりと主張することはできないでしょう。信用リスク管理が彼らの中心的な業務だからです。
1度限りの事象(英国のEU離脱(Brexit)など)も含めて、合理的な経済的シナリオを考慮に入れなければなりません。例えば、景気の悪化が失業をもたらす場合には、小売業のポートフォリオの回収可能性を決定する際にそのことを考慮すべきであると見込まれます。
発生する可能性が低い、またはほとんどないからといって、その情報を排除することはできません。しかし、ほとんど、またはまったく根拠のない極めて投機的なシナリオを考慮に入れることは期待されていません。発生の可能性が低い事象を排除するリスクと、ほとんどまたは全く根拠のない極めて投機的な事象を含めることのバランスを取る必要があります。そして、その決定は、経営者によって適切に文書化されなければなりません。
いくつのシナリオを含めるか
シナリオの数は、規定されておらず、金融資産の種類、業種および経済環境などの多くの要因に左右されます。経営者は、(偏向しない算定を可能にするために)幅広いシナリオを考慮に入れ、「非線形性」を検討することが要求されます。「非線形性」というのは、マクロ経済的なシナリオにおけるパーセンテージの変化が信用損失の変動と比例しない可能性があることを意味します。例えば、10%の失業率の上昇が、信用損失を2倍または4倍にする可能性がある、ということです。
モデルが適切に変化を反映するよう、シナリオおよび非線形性の範囲を継続的に再評価しなければなりません。評価は報告日ごとに見直す必要があります。
多くの銀行は、実務上、3つのシナリオを使って3年から5年の将来を予測しているようです。5年先の予測は、信頼性がより低くなると考えられます。
考慮に入れる方法
将来予測的な情報は、(デフォルト確率(PD)を調整した)信用モデルまたは経営上の代替的モデル(overlay)のいずれかで提供することができます。たったひとつの正解というものは存在せず、採用された方法は、企業ごと、または金融資産ごとで変わる可能性があります。大半の企業が実務では信用モデルを修正することを好みます。
経営者は、将来予測的な情報を組み入れる方法が首尾一貫していること、また二重算入されていないことを確保しなければなりません。信用モデルは修正しないでください。そして、経営上の代替的モデルを提供してください。
結論
水晶玉を使って予測できることは、以下のとおりです。
銀行は、将来予測的なシナリオを、ECLおよび信用リスクの著しい増大の両方の検討に組み入れる。
合理的で裏付け可能なシナリオの数およびその組入方法の決定は、扱いにくく高度な判断を要する領域である。この情報を組み入れるのに必要なデータおよびモデルが不足しているため、経営者にとっては移行が重要な課題となる。
ECLに1度限りの将来予測的事象の影響を組み入れることが可能でない稀なケースも含めて、財務諸表の利用者が将来予測的な情報のECLに対する影響を理解できるよう、経営者の判断については十分な開示を行わなければならない。
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