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国際会計基準(IAS)第12号「法人所得税」に関連するIFRS解釈指針委員会に却下された論点の実務上の影響について、PwC USアカウンティング・コンサルティング・サービスのSimon Whiteheadと角田哲史が検討します。


今あなたは何かの答えを探していますか?
もしかしたらそれはすでに専門家によって検討済みかもしれません。
IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)(以下、「IC」)は、定期会議において、最大で20件までの様々な論点を定期的に検討しています。議論された論点のうち、解釈指針が作成されるのは、非常に限られます。改善や狭い範囲の修正となるものもありますが、多くの論点は却下されます。アジェンダに取り上げられなかった論点は「IFRICリジェクション(ICに却下された論点)」となり、これらは会計業界においては「非IFRIC(not an IFRIC)」もしくはNIFRICsとして知られています。NIFRICsは(2002年以降)成文化され、国際会計基準審議会(IASB)の発行する基準書の「グリーンブック」に掲載されていますが、厳密には、権威のある会計基準書等に該当しません。このシリーズ記事では、ICに「却下された」論点について知っておくべきことを基準書ごとに取り上げます。今回はIAS第12号「法人所得税」を扱います。

IAS第12号は、ICの会議において比較的頻繁に登場する基準で、現在までに20を超えるIFRICリジェクションが発生しています。すべての論点について詳しく取り上げると字数が足りませんので、ここではより興味深い論点に焦点を当てていきます。本稿の末尾にすべてのNIFRICsを記載した一覧表が付されていますのでご参照ください。

利息および課徴金の分類(2004年6月)


ある議案提出者は、ICに対し、法人所得税の支払額の過不足に対する利息および課徴金はどこに表示すべきかについて質問しました。ICは、IAS第1号「財務諸表の表示」およびIAS第12号の開示要求事項は、企業がそのような金額をどこに表示しているかを財務諸表利用者に知らせるのに十分であるとの結論を下しました。その結果、ICはこの問題に関するガイダンスの提供を差し控えました。これは、これらの金額の表示について会計方針の選択が存在することを意味しています。

単一資産法人(corporate wrapper)の資産(2005年11月および2014年7月)
単一資産法人の資産は、長年にわたり存続している論点です。よく認識されている問題点は、IAS第12号が単一資産法人内での資産の回収による帰結と資産を保有する法人(すなわち、単一資産法人)に対する投資の回収による帰結の両方に係る繰延税金の認識を要求している点です。多数の企業が単一資産法人内の資産を売却する予定はなく、むしろ資産を保有する企業を売却する予定だけであるため、「投資先内部に係る一時差異(インサイド・ベーシス差異)」は該当しないと主張するでしょう。しかし、IAS第12号には両方の一時差異の計上を回避できるような例外規定はありません。

ICは、当初2005年にこの要望書を却下しました。当時、IASBが米国会計基準審議会(FASB)と共に法人所得税のコンバージェンスされた会計基準の作成作業中であったためです。しかし、2009年に、公開草案に対して非常に否定的なフィードバックが寄せられる中でプロジェクトが破綻したため、この論点が解決することはありませんでした。2014年にこの論点がICに再提出された際には、ICは、基準(IAS第12号)の要求事項は明確であるため、この論点について解釈指針の公表という方法では対応できず、また、基準を修正する場合、その範囲は年次改善の権限を超えることになると結論を下しました。その結果、ICは、IASBに対してこの論点を法人所得税に関するリサーチ・プロジェクトの一部として検討することを提言しました。

要約すると、短期的にはこの論点への対応が行われる予定はなく、企業は単一資産法人の資産に係る2つの繰延税金ポジションの計上を継続しなければならないようです。

IAS第12号の範囲(2005年12月、2006年3月、2009年5月および2014年7月)


長年にわたり、ICは、IAS第12号の範囲についての多数の質問を受けてきました。議案提出者は、総収入または従量を基礎とする税金は法人所得税なのか否か、不確実な税務ポジションは法人所得税のガイダンスの範囲に含まれるのかそれともIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に基づく引当金と考えるべきなのかについて質問してきました。

ICは、法人所得税は一定の純利益を基礎とする税金のみであることを確認しました。総収入を基礎とする税金、または利益を基礎とする税金の代わりに支払われる税金(従量税など)は法人所得税の定義を満たしません。税金が法人所得税であるとされるためには、会計上の税引前利益を基礎とする必要はありませんが、何らかの形で収益から費用を控除した純額を基礎としたものでなければなりません。賦課金は、税金と称されることが多いですが、IAS第37号の範囲に含まれることを確認するアジェンダ決定(2006年3月および2009年5月)を受け、ICは賦課金の会計処理を明確化するIFRIC第21号「賦課金」の開発を進めました。

一部においては、不確実な税務ポジションをIAS第37号の範囲とするのが適切であると考えられていたことから、不確実な税務ポジションに関し、ある程度の実務上の多様性が存在していました。ICは、2014年、不確実な税務ポジションは法人所得税であり、IAS第37号は法人所得税をその範囲に含まないことを確認しました。この結論は、今後公表が予定されている法人所得税の不確実性に関するICの解釈指針において再確認される見込みです。

企業に損失が生じている場合の繰延税金資産の認識(2014年5月)


IAS第12号は、繰延税金資産が回収可能かどうかの検討において、企業に対し、まず将来加算一時差異について検討し、次に課税所得の稼得の可能性を評価し、最後にタックス・プランニングの機会が利用可能かどうかを検討することを要求しています。ある議案提出者は、ICに対し、企業に損失が生じる見込みである場合において、繰延税金資産の認識の根拠として将来加算一時差異を用いることが適切かどうかを質問しました。

ICは、企業に損失が生じる見込みである場合においても、同じ性質の繰延税金負債が認識される範囲で、繰延税金資産を認識すべきであると確認しました。繰延税金負債は、貸借対照表上で認識された将来の課税所得の発生源であるため、企業が将来の繰延税金負債の戻入れと同じ期間に損金算入を生じさせる繰延税金資産を有する場合には、繰延税金資産を認識しなければなりません。

未払当期税金の割引(2004年6月)


議案提出者がICに対し、企業が税金を12か月以上の期間にわたって支払うことを認められている場合、未払法人所得税を割り引くべきかどうかを質問しました。ICは、一般的に割引を支持しましたが、当期税金の割引は、当時のIAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」における、市場よりも低利の政府からの借入金に関する追加的な金利の帰属計算をしてはならないという規定と矛盾する可能性について懸念を示しました。しかし、この論点が議論された当時、この矛盾は、IAS第20号を廃止するというIASBの仮決定事項により解決される見込みでした。IAS第20号の廃止により、ICはこの論点の結論が不明確になるとは考えていませんでした。その上で、ICは、重要性が高い場合には未払当期税金を割引かなければならないことに留意しました。

しかし、その後、IASBは、IAS第20号を廃止しないことを決定した上、IAS第20号を修正して2009年1月1日以後に開始する期間から市場金利を下回る政府からの借入金についての金利の帰属計算を行うことを要求しました。このことにより、この論点は割引を支持する方向で解決されるかもしれないと期待されていた一方で、2009年1月までに法人所得税基準のコンバージェンスプロジェクトは本格的に進み、同月に開催された両審議会の合同会議において、IASBとFASBは当期税金の割引に関する論点について見解を公表しないことを決定しました。このプロジェクトは最終的に中止されましたが4、IASBが当期税金の割引の論点について見解を示すことを差し控えたという事実により、実務上の多様性が存続することになりました。PwCの見解では、会計方針の選択が存在し、企業は当期税金の割引を選択することができますが、それを要求されてはいません。

IAS第12号に関するIFRICリジェクションの要旨
トピック
結論の要旨
資産の再評価
(2002年2月)
資産の公正価値の変動により将来加算一時差異と繰延税金負債が生じるかどうかに関し、IAS第12号は十分なガイダンスを提供しているとして、この論点はアジェンダに追加されなかった。
実効税率
(2002年2月)
収益の一部が免税であることなどにより実効税率が低くなっている企業が使用すべき実効税率に関し、IAS第12号は十分なガイダンスを提供しているとして、この論点はアジェンダに追加されなかった。
非減価償却資産 /減価償却資産
(2002年8月)
ファイナンス・リースに基づいて保有されている投資不動産2に係る繰延税金資産または繰延税金負債の計算に用いられる税率に関し、SIC第21号1、IAS第16号「有形固定資産」、およびIAS第12号が適切なガイダンスを提供しているとして、この論点はアジェンダに追加されなかった。
利益分配に係る繰延税金3
(2003年2月)
ICは、企業が資本性金融商品の認識時に繰延税金資産を認識すべきか否か、法人所得税に関する税務上の便益は収益あるいは資本のどちらで認識すべきかについて検討した。2003年4月、IASBは、配当による税務上の帰結は配当の支払負債が認識される時点で認識されることを再確認した。
連結納税制度の会計処理3
(2003年4月)
この論点は、100%保有の子会社が連結納税グループを離脱する際の税金資産および税金負債の認識および測定に関するものである。ICは、この論点は個別財務諸表のみに関連し、税法が各法域において異なることを考慮すると首尾一貫して適用することが可能なガイダンスの提供は困難となることに留意し、この論点をアジェンダに追加しなかった。
未払当期税金の割引
(2004年6月)
この論点はアジェンダに追加されなかったが、ICは、割引の効果が重要である場合には、未払当期税金を割引かなければならないことに留意した。したがって、上記において述べられた理由により、会計方針の選択が存在する。
利息および課徴金の分類
(2004年6月)
IAS第12号およびIAS第1号の開示要求事項は、税金債務の未納から発生する利息および課徴金について、十分な透明性を提供している。
税務上の欠損金および 税額控除の繰越し
(2005年6月)
ICは、税務上の欠損金および税額控除の繰越しから生じる繰延税金資産の認識に関し、一般的にその総額の一部に対して発生可能性要件が適用されることに同意した。
ファイナンス・リースに関連する繰延税金
(2005年6月)
この論点は、まさにIASB/FASBのコンバージェンスプロジェクト4の範囲に含まれる内容であったため、アジェンダに追加されなかった。
償却していない無形資産
(2005年8月)
この論点は、IASB/FASBのコンバージェンスプロジェクト4の範囲に含まれる内容であるため、アジェンダに追加されなかった。また、ICは、SIC第21号1の範囲は限定されており、この特定の論点に対応していないことに留意した。
単一資産法人
(2005年11月)
この論点は、IASB/FASBのコンバージェンスプロジェクト4で取り上げられている内容であったため、アジェンダに追加されなかった。
法人所得税の範囲
(2005年12月および2006年3月)
税金がIAS第12号の範囲に含まれるために、会計上の利益そのものの値を基礎とする必要はない。「課税所得(taxable profit)」という用語は、総額ではなく純額であるという見解を示すものである。
本国に未送金の国外支店の収益
(2007年7月)
子会社、支店、関連会社および共同支配企業に対する投資に関連する一時差異に係る繰延税金負債の認識は、IASB/FASBのコンバージェンスプロジェクト4で取り上げられている内容であったため、アジェンダに追加されなかった。
輸送会社による従量税の分類
(2009年5月)
法人所得税は、総収入額ではなく、純利益の測定値を基礎とする税金である。従量税は、営業の成果の総測定額を基礎とする税金である。この論点は、ICがIAS第12号はこの点に関して明確であるとの結論を下したため、アジェンダに追加されなかった。
回収方法を決定するための反証可能な推定
(2011年11月)
公正価値で測定される投資不動産の帳簿価額は売却を通じて回収されるという推定は、IAS第12号第51C項に記載の事例以外の場合においても、十分な証拠が入手可能であれば反証可能である。
新しい租税制度によってもたらされた市場価格の上昇の会計処理
(2012年7月)
ICは、税法改正による市場価格の上昇は、関連する資産の「税務基準額」を調整し、将来減算一時差異を発生させることに留意した。繰延税金資産は、IAS第12号第24項の認識要件を満たす範囲において、認識しなければならない。
内部的な再編がのれんに関連する繰延税金の金額に与える影響
(2014年5月)
連結グループ内での会計上ののれんの移転は、当初認識の例外に該当しない。なぜなら、当該資産は連結財務諸表上で以前から存在していたからである。ICは、IFRSの既存の要求事項およびガイダンスは十分であるとの結論を下した。
企業に損失が生じている場合の繰延税金資産の認識および測定
(2014年5月)
将来の税務上の欠損金の発生に関する企業の予測にかかわりなく、適切な期間に既存の将来加算一時差異の解消が見込まれる範囲で(すべての制約を考慮した上で)、未使用の税務上の繰越欠損金について繰延税金資産が認識される。ICは、解釈指針も基準の修正も不要であるとの結論を下した。
不確実な税務ポジションに係る当期法人所得税の認識
(2014年7月)
IAS第37号ではなく、IAS第12号が認識に関して関連性のあるガイダンスを提供している。ICは、既存のガイダンスで十分であることに留意した5
単一資産法人(corporate wrapper)の単一資産に関する繰延税金の認識
(2014年7月)
IAS第12号は、企業に対し、単一資産法人の資産への投資から生じる、「投資先内部に係る一時差異(インサイド・ベーシス差異)」および「投資に係る一時差異(アウトサイド・ベーシス差異)」の両方を認識することを求めている。ICは、内容が広範囲にわたるものであることを理由に、この論点をアジェンダとして取り扱わないと決定したが、IASBに対して法人所得税に関するリサーチ・プロジェクトにおいてこれらの懸念の分析と評価を行うべきであると提言した。
関連会社への投資に関連する繰延税金の測定に用いる税率
(2015年3月)
一時差異の一部は配当として受け取られ、別の部分については売却または清算による回収が見込まれている場合、予想される回収の方法と整合させるため、一時差異の各部分に異なる税率が適用されることになる。

1 2010年におけるIAS第12号の修正によりSIC第21号は廃止され、SIC第21号のガイダンスはIAS第12号に組み込まれた。


2 このIFRICリジェクションの公表日以降、IAS第12号が修正され、公正価値で計上される投資不動産は売却を通じて回収されるという反証可能な推定が記載された。

3 当時のIFRIC Updateには記載されなかったが、「グリーンブック」に記載された。

4 法人所得税に関するIASB/FASBのコンバージェンスプロジェクトについては2009年3月に公開草案が公表された。しかし、2009年10月におけるコメントレターの分析後、IASBはこのプロジェクトを進展させないことを決定した。

5 その後、ICは、法人所得税の不確実性の会計処理に関するより広範囲のプロジェクトを進める決定を下し、このプロジェクトによりIAS第12号が関連する基準であるという結論が確認される見込みである。
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