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IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)(以下、「IC」)は、定期会議において、場合によっては20件にものぼる様々な論点を定期的に検討しています。議論された論点のうち、解釈指針が作成されるのは、ごく一部に限られます。多くの論点は却下されますが、改善や狭い範囲の修正となるものもあります。アジェンダに取り上げられなかった論点は「IFRICリジェクション(ICに却下された論点)」となり、これらは会計業界においては「非IFRIC(not an IFRIC)」もしくはNIFRICsとして知られています。NIFRICsは(2002年以降)成文化されており、国際会計基準審議会(IASB)の発行する基準書の「グリーンブック」に掲載されていますが、厳密には、権威のある会計基準書等に該当しません。このシリーズ記事では、ICによって「却下された」論点について知っておくべきことを取り上げます。
今回はIAS第32号「金融商品 表示」を扱います。
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トピック | 結論の要旨 |
非償還優先株式の分類 (2004年5月) | この論点は「基本的な」非償還株式は資本に分類すべきか負債に分類すべきかに関するものであった。ICは十分なガイダンスがあると結論づけた。 |
企業自身の資本性金融商品で決済される外貨建て契約の分類 (2005年6月/9月) | ICは、企業が固定額の外貨と交換に固定数の自らの資本性金融商品を引き渡すことにより決済される契約は、金融負債なのか資本性金融商品なのかについて議論した。ICは、そのような契約は金融負債であると結論づけた。 |
発行者の親会社の資本性金融商品に交換可能な外貨建て金融商品 (2006年11月) | 上記の決定後、子会社が金融商品を発行しており、その金融商品は、固定額の親会社の機能通貨と固定数の親会社の資本性金融商品を交換することにより決済される状況について、ガイダンスを求める要望が提起された。質問は、連結財務諸表上で資本への分類が可能かどうかについてであった。ICは、i)子会社の機能通貨、または、ii)親会社の機能通貨のどちらに基づき評価を行うべきかを検討した。ICは、グループ企業が同一の機能通貨を有していないことに留意した。ICは、質問の範囲は相当狭く、実務上、広い範囲に関連するとは見込まれないと考えた。したがって、この論点はアジェンダに追加されなかった。 |
金融負債への分類変更をもたらす既存の資本性金融商品の契約条件の変更 (2006年11月) | ICは、資本性金融商品の契約条件に対する修正が金融負債への分類をもたらす状況について検討した。ICは、金融負債は、契約条件の変更時点で認識されなければならないことに留意した。IAS第39号第43項に従い、金融負債は当初認識時に公正価値で測定される。 |
金融商品の負債または資本への分類 (2006年11月) | ICは、契約上の義務は明示的または間接的に設定される可能性があるが、金融商品の契約条件のみを通じて設定されなければならないことを確認した。経済的な強制は、それ自体では、IAS第32号に従った金融商品の負債への分類をもたらさない。 |
非支配持分が保有するプット・オプションおよび先渡契約 (2006年11月) | ICは、子会社に対する非支配持分が保有する株式を、親会社が取得する先渡契約/プット・オプション契約を締結している場合の会計処理の明確化を求める要望を受けた。ICは、親会社が非支配持分の保有する株式を購入するために、将来、現金を支払う義務を有している場合には、たとえその現金の支払がオプションの保有者による行使を条件にしている場合であっても、親会社は金融負債を認識しなければならない、と結論づけた。
ICは当該トピックについて複数回議論しており、2012年5月に解釈指針案が公表された。しかし、最終化はなされず、この論点はFICEプロジェクトの一環として対応されることとなった。
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プッタブル金融商品および永久金融商品の分類 (2009年3月) | ICは、資本性金融商品への分類に関して、「金融商品は他のすべてのクラスの金融商品に劣後する金融商品のクラスに属しており、同一の特徴を有していなければならない」とするIAS第32号第16A項の要求事項について適用ガイダンスを求める要望を検討した。ICは、ガイダンスを開発するほどの実務上の著しい多様性は見込まれないとして、アジェンダにこの論点を追加しなかった。 |
「固定対固定」要件の適用 (2010年1月) | 固定額の現金またはその他の金融資産と交換で企業自身の固定数の資本性金融商品を受け取るかまたは引き渡すことにより決済される契約は、資本性金融商品であるとみなされる(「固定対固定要件」)。ICは固定対固定要件の適用に関する追加のガイダンスの提供を求める要望を受けた。ICはこの論点をFICEプロジェクトに委ねた。 |
株主の自由裁量権 (2010年3月) | ICは、優先株式の形式の金融資産が現金を引き渡す契約上の義務を含んでおり、支払いが発行者の株主の最終的な自由裁量で行われる場合、金融負債なのか資本なのかに関してガイダンスを求める要望を受けた。ICは、IASBがFICEプロジェクトの一環としてこの論点に対応するよう推奨した。 |
発行者に決済の形態を選択する契約上の権利を与えている金融商品の分類 (2013年9月) | ICは、IAS第32号に従って発行者が3つの金融商品をどのように分類することになるのかを明確化するよう要望を受けた。どの金融商品にも満期日はなかったが、各金融商品はいつでも償還できる契約上の権利を保有者に与えていた。保有者の償還請求権は、3つの金融商品のそれぞれについて違っていた。しかし、保有者が償還請求権を行使した場合には、それぞれのケースにおいて、発行者が、当該金融商品の決済を現金または固定数の自身の資本性金融商品で行うことを選択する契約上の権利を有していた。発行者は、3つの金融商品に関して配当の支払を要求されないが、自らの裁量でその選択が可能であった。
ICは、現行のIFRSの要求事項の分析に照らして、解釈指針は必要ないと考え、この論点をアジェンダに追加しないことを決定した。
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偶発的な「存続不能」事象の発生時に可変数の株式に強制転換される金融商品の分類 (2014年1月) | ICは、特定の強制転換可能な金融商品を発行者がIAS第32号に従ってどのように分類するかを議論した。この金融商品には明記された満期日がなかったが、発行者がTier 1の自己資本比率に違反した場合(すなわち、「偶発的な存続不能事象」として記述)には、発行者自身の可変数の資本性金融商品に強制的に転換されるものであった。利息は、発行者の裁量による。
ICは、この論点をアジェンダに追加しないことを決定した。ICは、要望書で提起された論点は範囲が広すぎ、ICが効率的な方法で対処することはできないと考えた。
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可変数の株式(キャップおよびフロアが付いている)に強制転換される金融商品で、発行者に最大(固定)数の株式の引渡しによって決済するオプションを与えているもの (2014年1月) | 金融商品に含まれている特定の早期決済オプションの実質の評価を、どのように行うことになるのかについての質問がICに提起された。
ICは、発行者が固定数の自己の資本性金融商品の引渡しによって金融商品を決済する契約上の権利を有しているという理由だけでは、発行者は金融商品(またはその構成部分)が資本性金融商品の定義を満たすと仮定することはできないことに留意した。ICは発行者の早期決済のオプションが実質的かどうか(したがって金融商品を分類する方法を決定する際に考慮すべきであるかどうか)の判定には、判断が必要となることに留意した。早期決済オプションが実質的でない場合には、金融商品の分類を決定する際にその条件を考慮しないことになる。
ICは、早期決済オプションが実質的かどうかを判定するためには、発行者は、発行者がオプションを行使するであろうという実際の経済的理由または他の事業上の理由があるかどうかを理解する必要があることに留意した。
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可変数の株式(キャップおよびフロアーが付いている)に強制転換される金融商品の会計処理 (2014年5月) | ICは、可変数の自己の資本性金融商品(キャップおよびフロアーが付いている)に強制転換される特定の金融商品の会計処理を、発行者がIAS第32号およびIAS第39号または国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」に従ってどのように行うことになるのかを議論した。
ICは、キャップとフロアーは、発行者の持分株式の価格に対応して価値が変動する組込デリバティブ要素であることに留意した。ICは解釈指針が必要ではないと結論付けた。
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可変数の親会社株式によって決済される非支配持分に係る売建プット・オプションの会計処理 (2016年5月) | ICは、企業が連結財務諸表において非支配持分に係る売建プット・オプション(NCIプット)をどのように会計処理をするかに関する要望を受けた。NCIプットには行使価格があり、それは可変数の親会社自身の資本性金融商品との交換により決済されるかまたは決済される可能性がある。ICは、現金で決済されるNCIプットに関する論点を過去に議論していたことに着目した。それらの論点はIASBに委ねられ、FICEプロジェクトの一部として検討されている。 |
PricewaterhouseCoopers LLP
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