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Q. IFRSにおける引当金の会計基準はどのようになっていますか。また、日本の基準とは何か違いがありますか。
A
国際財務報告基準(IFRS)では、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」が偶発事象および引当金の会計処理を包括的に取り扱っています。
これに対して、日本基準では、企業会計原則注解18において、将来の特定の費用または損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用または損失として引当金に繰入れられるとされています。また、その具体例として、製品保証引当金、返品調整引当金、賞与引当金、修繕引当金等が挙げられています。しかしながら、注解18以外に直接引当金の会計処理を取り扱う規定は少なく、実務慣行に委ねられた部分が多くあります。
ここでは、IAS第37号で規定されている引当金の主要な会計処理を示し、あわせて日本基準との比較を行っていきます。
1. 引当金の定義および認識
IAS第37号では、引当金は「時期または金額が不確実な負債」と定義されています(IAS第37号第10項)。このため、支払いの時期または金額が確実な買掛債務や、支払いの時期または金額に見積りを要するものの不確実性が少ない未払費用とは区別されます。
次に認識基準、つまり財務諸表に引当金を計上するための要件ですが、IAS第37号は次の3つを示しています(IAS第37号第14項)。
現在の債務
過去の事象の結果として企業が現在の債務(法的又は推定的)を有している。
発生の可能性
当該債務を決済するために経済的便益を持つ資源の流出が必要となる可能性が高い。
見積可能性
債務の金額について信頼性のある見積りができる。
IAS第37号の1番目の認識の要件は、現在の債務であることです。しかし、日本基準では注解18で例示されているように、修繕引当金など、貸借対照表日では必ずしも現在の債務とはいえないものも引当金に計上されます。
2番目の要件について、IAS第37号では資源の流出が起こらない可能性よりも、起こる可能性が高ければ、発生の可能性が高い(probable)とみなされるとしています(IAS第37号第23項)。これは、50%超の発生の可能性があれば引当金が認識されることを意味しています。
上記のことは、他の負債と区別して以下のように図示できます。なお、偶発負債に分類される場合、経済的便益を有する資源の流出の可能性がほとんどない場合を除き、偶発負債の開示が必要ですが、認識はしません(IAS第37号第23,27,86項)。
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日本基準でも発生の可能性が高いことが引当金の認識要件となりますが、IAS第37号のように具体的な指標が明示されておらず実務慣行に委ねられています。
3番目の要件について、IAS第37号では、極めて稀な例外を除き、信頼性のある見積りを行うことができるとしています。信頼性のある見積りができないという極めて稀な場合には、負債は認識できませんが、偶発負債として開示します(IAS第37号第25,26,86項)。日本基準においては、引当金のような見積り項目については、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的に算出するとされていますが、基本的には実務慣行に委ねられています。
2. 引当金の測定
引当金の認識要件が満たされると、その金額の測定が行われます。IAS第37号は、引当金の測定値を現在の債務の決済に要する支出の貸借対照表日における「最善の見積り」としています(IAS第37号第36項)。
IAS第37号は、最善の見積りを行うために将来のキャッシュ・フローの見積りや貨幣の時間的価値の反映を行うことを要求しています。
(1) キャッシュ・フローの見積り
母集団が大きい場合、たとえば製品保証を行っているような場合は、当該債務のすべての起こり得る確率を考慮して、将来キャッシュ・フローの見積りに対してそれぞれに関連する確率により加重平均して計算されます。(統計学上の「期待値」の考え方に基づいた手法です(IAS第37号第39項)。)
一方、単一の債務を見積る場合には、単独の最も発生の可能性の高い結果が最善の見積りとなりますが、このような場合でも他の生じ得る結果を考慮しなければなりません。たとえば、顧客のために建設した工場について工事補償をしているとします。もし、欠陥が生じた場合に当初修理するために要する費用が1,000であり、それで修理が完了することが、単独の最も発生の可能性の高い結果だとしても、追加修理が必要とされる可能性がかなり高い場合には、当該追加修理を考慮して引当金を測定します(IAS第37号第40項)。
上記のとおりIAS第37号には「期待値」の考え方等、測定に関する詳細な記載があります。一方、日本基準では期待値の使用等の測定に関する詳細な記載等はありません。
(2) 貨幣の時間的価値
IFRSでは、貨幣の時間的価値の影響が重要な場合には、引当金の金額は債務の決済に必要と予想される支出の現在価値でなければならないとされています(IAS第37号第45項)。たとえば、債務の決済が期末日から2年後であるような場合、将来の支出額を割引いた現在価値で引当金が計上されます。
一方、日本基準では、引当金について貨幣の時間的価値に関する規定はなく、このような見積りの手法は一般的ではありません。ただし、資産除去債務については、、「資産除去債務に関する会計基準」において、貨幣の時間的価値の考え方が導入されています。
3. リストラクチャリング引当金
IAS第37号では、事業部門の撤退や売却、組織変更などのいわゆるリストラクチャリングを実施した際に発生する費用等について規定を設けています。
IAS第37号は、このようなリストラクチャリング引当金を認識する最低限の要件として、上記の引当金の各要件に追加して以下を挙げています(IAS第37号第72項)。
詳細で正式な計画の存在
企業がリストラクチャリングについての詳細な正式計画を持っている。この計画では、関係する事業(もしくはその一部)、影響を受ける主な事業所、雇用契約終結により補償を受ける従業員の勤務地・職種・概数、支出予定額及び計画実施時期などが明確に識別できるものでなければならない。
計画の周知
計画の実行に着手するか、それによって影響を受ける人々に計画の主要な内容を公表することによって、企業がリストラクチャリングを実行するであろうという妥当な期待を、影響を受ける人々に惹起している。

上記の認識要件は、リストラクチャリング費用が通常多額となる場合が多く、その認識時点は企業にとって重要であるため、引当金の一般的な認識要件を具体化して規定されたものです。日本基準ではリストラクチャリング引当金についての具体的な規定はなく実務に委ねられています。
*このQ&Aは、『週刊 経営財務』 2867号(2008年04月28日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2019年12月31日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、PwCあらた有限責任監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。
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