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Q. IFRSにおける連結範囲の決定方法とはどのようなものですか。
A
国際財務報告基準(IFRS)では、連結財務諸表の作成に関する事項については、特別目的事業体(SPE)を含めたすべての企業について、IFRS第10号「連結財務諸表」で取り扱われています。
1. 連結範囲
(1) 支配の考え方
IFRS第10号「連結財務諸表」では自社が支配している投資先をすべて連結することが定められており、投資者が、以下のすべての要素を有している場合のみ、投資先を支配していると定めています。
(a) 投資先に対するパワー
(b) 投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャー又は権利
(c) 投資者のリターンの額に影響を及ぼすように投資先に対するパワーを用いる能力
(2) パワーの考え方
上記の支配の要件のうち、「パワー」については、投資者が、「関連性のある活動」(投資先のリターンに重要な影響を及ぼす活動)を指図する現在の能力を与える既存の権利を有している場合に有しているとしており、IFRS第10号では、関連性のある活動の例として以下があげられています。
(a) 財又はサービスの販売及び購入
(b) 金融資産の存続期間中における管理(債務不履行時を含む)
(c) 資産の選択、取得又は処分
(d) 新しい製品又は工程の研究及び開発
(e) 資金調達構造の決定又は資金の調達
また、投資者に投資先に対するパワーを与える可能性のある権利の例としては、(a)投資先の議決権、(b)投資先の経営幹部のメンバーの選任、職務変更又は解任権、(c)関連性のある活動を指図する別の企業を指名又は解任する権利、(d)投資者の便益のために、取引を行うことを投資先に指図するか、又は取引の変更を拒否する権利、(e)その他の権利で、関連性のある活動を指図する能力を保有者に与えるものがあげられています。
投資先の議決権の過半数を有する場合には、関連性のある活動を議決によって指図することができる(パワーを有する)ことが多いとされていますが、議決権の過半数を有していてもパワーを有していない場合(例えば、関連性のある活動が、政府又は規制当局の指図に左右される場合等)には、支配の要件を満たさないことになります。一方で、投資先の議決権の過半数を有していなくても、他の議決権保有者との間の契約上の取決め、他の契約上の取決めから生じる権利、投資者の議決権、潜在的議決権、およびこれらの組み合わせによって、パワーを有していると考えられる場合があります。
たとえば、新株予約権や株式コール・オプション、普通株式への転換が可能な各種証券等、行使、転換によって、保有者の議決権比率を増加させる(他の株主の議決権比率を減少させる)効果、すなわち潜在的議決権を与える金融商品を企業が保有する場合には、こうした潜在的議決権が実質的なものかどうかを判断しなければなりません。そのうえで、実質的な権利と判断される場合には、支配の有無の判定において、その影響を考慮する必要があります。 なお、権利が実質的であるためには、保有者はその権利を行使する実質上の能力を有していなければならない、とされています。たとえば、株式コール・オプションを保有していても、ディープ・アウト・オブ・ザ・マネー(権利行使により大きな損失が出る)の状況である場合、実質的なものとはみなされないと判断することが考えられます。
日本基準においても、「連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)」(以下、「連結会計基準」という)において自社が意思決定機関を支配している他の会社(子会社)をすべて連結の範囲に含めなければならない旨が定められており、支配力基準が適用されている点ではほぼ同様と考えることができますが、IFRSと異なり、議決権割合の40%以上を所有するか否かによって取扱いを変える数値基準を設けています。また、潜在的議決権の取り扱いについては、日本基準において明確な定めが存在しておらず、IFRS第10号の実務適用にあたって検討の必要な項目の1つです。
なお、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」では、ベンチャー・キャピタルなどの投資企業が他の会社を有している場合、一定の条件を満たせば当該会社を子会社に該当しないとして連結から除外することが認められています。一方、IFRS第10号では、一定の条件を満たす場合を除き、投資企業については、投資先を連結することは認められず、IFRS第9号「金融商品」に従って、公正価値測定することが定められています。
(3) リターンの考え方
IFRS第10号では、投資者が投資先の支配を有しているかどうかの判定に際しては、投資先への関与により生じる変動リターンに晒されているか又は権利を有しているかを判断する必要があるとされています。
ここでいう変動リターンは、固定されたリターンではなく、投資先の業績の結果として変動する可能性のあるリターンであり、プラス方向だけでなくマイナス方向も含まれます。リターンの例としては、配当、投資先からのその他の経済的便益の分配、投資先の資産又は負債のサービス業務の報酬などがあります。
2. 一時的な支配
IFRS第5号では、一時的な支配で保有している子会社について、売却目的保有分類の要件を満たす場合、その子会社のすべての資産および負債を売却目的保有に分類しなければならないとされています。その場合、当該子会社を連結した上で、資産および負債の当初認識時の測定を売却目的保有として分類しなかった場合の帳簿価額と、売却コスト控除後の公正価値のいずれか低い金額で評価されます。
包括利益計算書上は非継続事業として、(a)非継続事業の税引後損益 および (b非継続事業を構成する資産又は処分グループを、売却コスト控除後の公正価値で測定したこと又は処分したことにより認識した税引後の利得又は損失を、単一の金額で表示します。また、財政状態計算書では、売却目的保有に分類された非流動資産として他の資産と区分して表示されます。同様に、売却目的保有に分類された処分グループに含まれる負債も、他の負債と区分して表示されます。なお、これらの資産、負債は相殺せず、それぞれ単一の金額として表示されます。
一方、日本基準では、連結会計基準において、支配が一時的であると認められる子会社については、連結の範囲に含めないこととされています。
3. 特定目的会社(投資事業組合を含む)の取扱い
IFRSにおいては、特別目的会社(投資事業組合を含む)についても基本的に、一般の事業会社に適用する支配の原則と同様の原則に基づき、連結の要否を決定します。目的と設計を考慮し、関連性のある活動を特定した上で、それに関する意思決定がどのように行われているかを検討する必要があります。また、代理人関係にも注意が必要です。代理人とは、他の当事者(本人)に代わってその便益のために行動することを主とする当事者をいい、委任された意思決定権を行使しますが、投資先を支配していないことになります。
一方、日本基準では、連結会計基準において、「適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業から独立しているものと認め、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定する」と定められており、資産の流動化に関する法律第2条3項に規定する特別目的会社を連結の範囲から除外することが認められています。投資事業組合についても、連結会計基準等に従って、支配の有無を判断しますが、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」により、投資事業組合に対する支配力基準の適用について、実務上の取扱いが明確にされています。
*このQ&Aは、『週刊 経営財務』2886号(2008年09月22日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2019年12月31日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、PwCあらた有限責任監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。
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