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Q. 会計方針を変更した場合、過年度遡及修正を行うのですか。また、誤謬を発見した場合には遡及修正を行うのですか。
A
国際財務報告基準(IFRS)では、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」において、会計方針を変更した場合や会計上の見積りの変更を行った場合、および過年度の財務諸表に誤謬を発見した場合の取り扱いが定められています。
なお、日本基準には企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」があり、IFRSとの重要な差異はありません。
以下では、IAS第8号の概要を日本基準と比較しつつ説明します。
1. 会計方針の変更
IFRSでは、会計方針を、「企業が財務諸表を作成表示するにあたって採用する特定の原則、基礎、慣行、ルール及び実務」と定義しており(IAS第8号第5項)、企業の財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローについて、適切な期間比較を行うことができるよう、毎期継続して首尾一貫して適用することとされています(IAS第8号第13項)。しかし、会計基準や解釈指針の新たな適用または改正が行われた場合、もしくは、会計方針を変更することによって、企業の財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローの情報が、信頼性があってより目的適合性の高い情報を提供すると判断される場合のみ、会計方針を変更しなくてはなりません(IAS第8号第14項)。
会計方針の変更が、新たな会計基準(または改正後の会計基準)の適用により生じた場合は、当該会計基準に特定の経過措置があればその経過措置に従うことになります。具体的な経過措置がない場合や、より信頼できる情報を提供するために任意に変更する場合には、原則として、その変更を過年度に遡及して適用することとされています(IAS第8号第19項)。つまり、新たに採用した会計方針が従来から適用されていたと仮定して、開示される最も古い期間の期首剰余金残高を修正するとともに、各過年度の財務諸表数値についても修正を行います(IAS第8号第22、23項)。その上で、当期の財務諸表を作成し、過年度の財務諸表とあわせて比較開示します。
このように、任意に会計方針の変更を行った場合等は、その新たな会計方針を遡及的に適用することが原則ですが、過年度の影響を測定することが実務上不可能であるときは、可能な限り最も古い期の期首、もしくは最も古い日付から、新たな会計方針を適用することが認められており、実務への配慮が示されています(IAS第8号第24、25項)。
日本基準では、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」により、IAS第8号と同様に、会計基準等に特定の経過措置の定めがない限り、過去の期間のすべてに遡及して会計方針の変更を適用します。また、過年度の影響を測定することが困難な場合の取り扱いについてもIAS第8号と同様の規定があります。また、減価償却方法は会計方針に該当するとしているものの、その変更については会計上の見積りの変更と同様の取り扱いとする旨が規定されています(同第20項)。この場合、後述するとおり遡及適用は行いませんが、変更の内容、正当な理由および当期財務諸表への影響額または将来の影響額、その影響額を合理的に見積りができない場合はその旨を注記する必要があります。
2. 会計上の見積りの変更
会計上の見積りの変更とは、「資産または負債の現状、及び資産または負債に関連して予測される将来の便益及び義務の評価により生じる、資産もしくは負債の帳簿価額または資産の定期的な費消額の調整」をいい、新しい情報や展開から生じるもので誤謬の訂正ではないとされています(IAS第8号第5項)。
会計上の見積りの変更が、たとえば不良債権の金額の見積りの変更のように、当期の資産および負債、または資本項目に影響を与える場合には、変更した期間において関係する資産および負債、または資本項目の帳簿価額を修正して当該変更を認識します(IAS第8号第37項)。また、このような事象に該当しない、たとえば償却資産の耐用年数の変更のように、当期および将来の期間に影響を与える場合には、変更した期間と将来の期間の損益に含め、将来に向けて認識することとされています(IAS第8号第36項)。つまり、会計上の見積りの変更は、その変更した期間以降の期間で、その影響を将来に向かって損益に反映させます。
なお、IFRSでは、償却資産に包含される経済的便益の費消の予想パターンは、会計上の見積りであると考えられています。そのため、償却資産の経済的便益の費消の予想パターンを表す減価償却方法の変更は、見積りの変更として、変更した期間およびその資産の残存耐用年数にわたる将来の各期間の減価償却費に反映させて処理することになります(IAS第8号第38項)。
日本基準でも、会計上の見積りの変更については過去に遡り修正することはせず、原則として、その変更した期間以降の期間で、その影響を損益に反映させます。
3. 誤謬
過年度の誤謬とは、「信頼性の高い情報の不使用又は誤用により生じた、過去の1つ又は複数の期間に係る企業の財務諸表における脱漏又は誤表示」であり、計算上の誤り、会計方針の適用の誤り、事実の見落しや解釈の誤りおよび不正行為の影響も含みます(IAS第8号第5項)。
重要な誤謬を含む財務諸表や、重要性は乏しいが企業の財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローに係る特定の表示を達成するために意図的に生じさせた誤謬を含む財務諸表はIFRSに準拠していないこととなるため、企業はこの財務諸表を訂正しなければなりません(IAS第8号第41項)。具体的には、誤謬が発生した過年度の財務諸表を遡及的に修正再表示するものとされ、開示されている最も古い期間以前に誤謬が発生している場合は、当該開示されている最も古い期間の資産、負債および資本の期首残高を修正再表示します(IAS第8号第42項)。当期の財務諸表は、比較情報として表示されるこれら各過年度の財務諸表数値の遡及的修正再表示が行なわれたことを前提に、期首の剰余金残高を修正した上で作成することとなります。また、過年度の影響を測定することが実務上不可能であるときの取り扱いは、会計方針を変更する場合と同様です(IAS第8号第44、45項)。
「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」では、IAS第8号と同様に修正再表示が必要となる旨が規定されています。
4.まとめ
IFRSにおける会計方針の変更、会計上の見積りの変更、誤謬が発見された場合の取り扱いをまとめると次のようになります。
会計方針の変更
会計上の見積りの変更
誤謬
具体例
  • 新たな会計基準の適用
  • 投資不動産の評価方法について原価モデルから再評価モデルへの変更
  • 不良債権の金額の見積りの変更
  • 棚卸資産の陳腐化の見積りの変更
  • 償却資産の耐用年数の見積りの変更
  • 償却資産の減価償却方法の変更(※)
  • 過年度売上の計上処理誤り
  • 過年度の引当金の計算誤り
IFRSの取扱い
新たな会計方針を従来から適用していたとして、過年度の財務諸表を修正する。(遡及適用)
会計上の見積りの変更を行なった期間以降、影響を与える期間において将来にわたってその影響を認識する。
誤謬が生じていた過年度の財務諸表を遡及して修正する。(遡及的修正再表示)
日本基準での取扱い
IFRSと同様に遡及適用を行う。
IFRSと同様に会計上の見積りの変更を行った期間以降、その影響を将来にわたって認識する。
IFRSと同様に遡及的に修正再表示する。
(※)日本基準の「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」では会計方針の変更とされているが、会計処理は会計上の見積りの変更と同様に行われる。
5.今後の動向
国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2017年9月12日に公開草案「会計方針及び会計上の見積り」(IAS第8号の修正案)を公表しました。IAS第8号については、実務において会計方針と会計上の見積りの区別における企業の解釈、判断が分かれるケースが多く見受けられました。本公開草案は、当該状況を改善するために、会計方針と会計上の見積りに関する基準を明確化することを目的としています。2019年12月末現在、IASBは、公開草案を最終化するための投票手続を実施中であり、最終化された場合は上記の記載内容が修正される可能性があることにご留意ください。
*このQ&Aは、『週刊 経営財務』2875号(2008年06月30日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2019年12月31日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、PwCあらた有限責任監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。
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