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論点

IFRS解釈指針委員会(IC)は、2016年4月、企業が国際会計基準(IAS)第32号に従って残高を相殺できる場合およびその可否に関するアジェンダ決定を公表しました。これは、金融機関および事業会社の双方に広範な影響を与える可能性があります。ICは、企業グループが、子会社の期末の口座残高を純額ベースで決済することを見込んでいない限り、報告日時点の期末の口座残高全体を純額で決済する意図があると主張することは適切でないことに留意しました。したがって、このような残高はIAS第32号の下では相殺することはできません。

影響

どのような企業が影響を受けるか


金融機関および事業会社が、期末日時点で決済または整理されていないキャッシュ・プーリング契約を有しており、その残高の変動が生じる場合には、このアジェンダ決定の影響を受ける可能性があります。

ICは例として、グループに、子会社の別個の銀行口座を含むキャッシュ・プーリング契約が存在し、IAS第32号42項(a)における、これらの口座残高を相殺する法的に強制可能な権利いる場合について検討しました。このグループは、各口座残高(これらはプラスの現金残高あるいは当座借越の場合がある)を1つのネッティング口座に定期的に振替えていますが、期末日には振替えを行っていません。このグループは、子会社が例えば、さらに現金を預金に入金する、当座借越残高を返済する、または他の債務を決済するために現金を引き出すことにより、次回の決済日前に銀行口座を使用すると見込んでいます。

この種のキャッシュ・プーリング契約を有する企業はこれまで、定期的に相殺している預金と当座借越の残高であれば、相殺する法的に強制可能な権利および純額で決済する意図の両方を有しているものとして、財務諸表で純額表示していた可能性があります。

どのような影響を受けるか


企業が期末残高を純額で決済することを意図しない限り、プラスの現金残高と当座借越を相殺することはできません。

ただし、次回の決済日前の現金の変動が、プラス残高の口座への入金および(または)当座借越残高の口座からの引き出しのみであると企業が見込んでいる場合には、依然として相殺が適切である可能性があります。さらに、次回の決済日前に残高が変動する可能性の低い「コア」残高を企業が維持している場合には、たとえ「コア」残高を上回る残高の相殺が認められない場合であっても、この「コア」の残高の相殺が認められる可能性があります。

このアジェンダ決定はいつ適用されるか


このアジェンダ決定は、ICが常に従うべきであったと考える会計処理を明確化したものであるため、即時に適用されます。しかしながら、このアジェンダ決定は2016年4月に公表されたばかりであるため、企業は当該契約に係る2016年3月期末までの表示を修正することは要求されません。

このアジェンダ決定による表示の修正は、会計方針の変更として会計処理しなければなりません。このため、遡及的に会計処理する必要があります。アジェンダ決定の記載に基づき以前の報告期間に残高が相殺要件を満たしていなかった場合には、比較数値を修正再表示しなければなりません。

企業グループは何をすべきか


直ちにすべきこと

この影響を受ける企業は、3月期末にICのアジェンダ決定を反映させるか次回の報告日まで延期するかを検討し、潜在的影響が重要な場合にはガバナンス責任者がそれを認識するようにしなければなりません。

例えば、銀行口座の残高を純額表示できなくなり、貸借対照表をグロスアップする必要がある場合、企業は、このことが主要業績評価指標(KPI)あるいは銀行の財務制限条項に影響を与えるかどうかを確認し、必要に応じた措置をとらなければなりません。

貸借対照表のグロスアップは、金融機関における規制上の自己資本報告、課税額、仮想的なプーリング商品の提供コストにも影響を与える可能性があります。

将来に向けてすべきこと

例えば、銀行から、報告日時点で(単一のネッティング口座への振替による)決済を要求する等、キャッシュ・プーリング契約の変更が提案されることも考えられます。すべての当事者は、提案されている契約の変更が与える影響を検討し、新たな契約を行う場合にはキャッシュ・マネジメント戦略に従うようにしなければなりません。契約の変更が会計に及ぼす影響は、変更時点から将来に向かって反映させなければなりません。

企業グループは、キャッシュ・プーリング契約の契約条件に変更がない場合であっても、次回の決済日前に残高が変動する可能性の低い「コア」残高を維持すること、あるいは期末や期末に近い時点でより頻繁に残高を決済することなどにより、純額決済の意図が明確に示されるよう純額決済の実務を改善したいと考える可能性があります。

より詳細な情報


アジェンダ決定の全文については、IFRIC update(2016年3月号)をご覧ください。
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