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論点
医学およびバイオ科学の進歩により、研究開発(R&D)に多額の金額が費やされ、さらに高度化した新薬の開発が進んでいます。科学の複雑性により、研究開発の道筋は、より予測不能でコストが嵩むものとなっています。しかし、投資家は、企業による多額の研究開発に係る支出にはむしろ懐疑的で、これを積極的には評価しない傾向にあります。経営者による資本配分の意思決定が難しくなっていることも、このような傾向を悪化させており、その結果、研究開発の「表出化(externalisation)」が増加しています。開発初期段階の化合物のライセンスインや完全管理から、化合物ポートフォリオの複雑なスワップに至るまで、表出化の範囲は広がっています。
製薬企業が、より小規模企業(単一の化合物を扱う企業である場合が多い)に対してイノベーションを「アウトソーシング」することが増えています。こうした取り決めには、潜在性が示唆された場合に、製薬企業に「オプトイン(選択的参加)」を認める「オプション」条項が含まれる傾向があります。
製薬業界において、オプションは概ね次の3つの方法で使用されています。すなわち、単一の化合物に関するオプション、1つ以上の化合物の開発を行う事業である法的主体の株式に関するオプション、および「NewCo(新設会社)」と金融投資家に関連して使用されるオプションです。
単一の化合物を購入するオプション
単一の化合物に関するオプションによって保有者に与えられる権利は様々であり、その権利の性質によって適切な会計処理が決まります。例えば、将来的に開発に選択的に参加する権利や、将来的に無形資産を取得する権利を所有者に与えるオプションがあります。この将来の時点とは通常、開発における重要なマイルストーンの達成後となります。また、化合物の将来の開発や取得に選択的に参加するための価格を設定するオプションもあります。同様に、当事者に譲渡を強制するオプションや、指名された第三者による価格設定を要求するオプションもあります。
製薬企業は、通常、オプションの保有者となります。会計基準では、非金融項目に係るオプションについて、金融商品会計基準の適用範囲から除外している以外は、具体的なガイダンスが提供されていません。このためオプションの会計処理については、無形資産および固定資産に関連する会計基準を参照して行われます。
保有者に対して、将来的に資産の開発に参加または資産を取得する権利のみを与えるオプションは、基礎となる無形資産に対する支配を保有者に与えるものではありません。オプションの保有者が支配する識別可能な権利または経済的便益がありません。オプションが保有者に与えているのは、ある一定期間にわたって他者を排除する権利となります。この権利は、資産の定義を満たす場合、排他的な期間にわたって費消されることになるため、支払い時に資産化し、オプションの期間にわたって償却しなければなりません。
将来の開発への選択的参加について固定価格を設定するオプションまたは将来の特定時点における化合物の取得について固定価格を設定するオプションは、部分的に、個別に取得した無形資産となる場合や、アウトソースした研究開発支出となる場合があります。あるいは、この2つの要素の組み合わせとなる場合もあります。
以下の設例では、製薬企業の財務諸表においてオプションをどのように会計処理すべきかを説明しています。
設例1-単一の化合物を取得するオプション
Biotech社は、嚢胞性線維症(のうほうせい せんいしょう)の治療薬である新薬の開発を行っています。新薬の化合物は、現在、開発段階のフェーズIです。Pharma A社は、Biotech社がフェーズIIの完了に成功した場合に化合物を取得するオプションを取得するために、Biotech社にCU3百万(「CU」は通貨単位)を支払います。当該オプションの行使価格は、CU20百万です。Biotech社は、オプション行使期間中に化合物を売却することはできず、また最善の努力により新薬開発を継続しなければなりません。Pharma A社は、オプション行使期間中に新薬に関するいかなる意思決定も行わず、また追加の資金提供を要求される可能性もありません。フェーズIの研究コストは、CU5百であると見積られます。残りの資金は銀行ローンおよび創業者による出資を通じて調達されます。
Pharma A社は、前払いのオプション料および事後のオプション行使価格の支払いをどのように会計処理しますか
回答
Pharma A社は、以下の理由により、初日(day1)から化合物の支配を有しています。
  • Biotech社は化合物の開発を継続しなければならない。
  • Biotech社は他社に売却することはできない。
  • Pharma A社は、開発フェーズIIにおいて意思決定を行うことはできないが、開発計画は事前に定義されており、行うべき決定はほとんどない可能性が高い。化合物の基礎となる科学は変えることはできない。
CU3百の前払
CU3百が知的財産(IP)の購入価格の一部であるのか、または前払の研究開発費であるのかを識別するために、前払を評価する必要があります。
  • 無形資産であると評価された場合、すべて資産計上され、当該資産が使用可能になるまで毎年、減損テストを行う。
  • 前払研究開発費であると評価された場合、アウトソースした研究開発サービスを反映するため、当該前払は、オプションの存続期間(研究フェーズII)にわたって、純損益に計上する。
また、支払が前払研究開発費と資産の両方を表している場合には、Pharma A社は、前払の区分処理も検討することとなります。
CU20百万のオプション行使価格
オプション行使価格は、行使日に無形資産として資産計上される可能性が高くなります。
支払の性質を判定するための確実な手法が必要となります。この手法は、支払が検証可能な結果に基づいてのみ行われるものか、または活動の実施に対して行われるものかによって異なります。検証可能な結果としては、フェーズIIIの臨床試験の完了の成功などが考えられます。検証可能な結果に対する支払いは、企業が支配する無形資産の付加価値を示唆します。活動の実施としては、臨床試験のために3,000人の患者を登録することなどが考えられます。なお、当該2つ目の支払いは、開発段階で行われる通常の活動に対するものです。
活動に基づくマイルストーンは、有能な組織によって再現可能である一方、検証可能な結果は、化合物自体の科学的特性(つまり、資産の固有の特性)に依存します。以下の設例では、この意思決定アプローチを用います。
設例2-化合物を取得するオプション
Biotech社は、嚢胞性線維症の治療薬である新薬の開発を行っています。新薬の化合物は、現在、開発段階のフェーズIです。Pharma A社は、Biotech社がフェーズIIの完了に成功した場合に公正価値を支払って化合物を取得するオプションのために、Biotech社にCU2百万を支払います。Biotech社は、オプション行使期間中に化合物を売却することはできず、また最善の努力により新薬開発を継続しなければなりません。Pharma A社は、オプション行使期間中に新薬に対するいかなる意思決定も行わず、また追加の資金提供を要求される可能性もありません。研究費用は、CU5百であると見積られます。
Pharma A社は、前払いのオプション料をどのように会計処理しますか
回答
Pharma A社は、他社に優先して化合物を取得するために公正価値を支払う排他的な権利のみを取得しています。すなわち、Pharma A社は、潜在的な将来の経済的便益を確保していません。前払いのオプション料は、IAS第32号の範囲に含まれない非金融資産に係るオプションとして資産計上すべきであり、オプション価格はオプション期間にわたって事後的に償却しなければなりません。
オプション行使価格は、検証可能な結果(すなわち、フェーズIIの完了の成功)に基づいているため、行使日に無形資産として資産計上される可能性が高くなります。

単一の化合物を開発する法的主体の株式を購入するオプション
法的主体の株式を購入するオプションは潜在的議決権となります。企業は、このような権利によってオプション保有者が単一の化合物を開発する企業を支配することになるかどうかについて検討する必要があります。
投資者は、次の各要素をすべて有している場合にのみ、投資先を支配していることになります。
a. 投資先に対するパワー
b. 投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャーまたは権利
c. 投資者のリターンの額に影響を及ぼすように投資先に対するパワーを用いる能力
[IFRS第10号第7項]
企業は、オプションの行使前であっても、「支配」の定義が満たされているかどうかを検討しなければなりません。オプションは、支配を有するために、「イン・ザ・マネー」の状態である、または現在行使可能である必要はありません。投資者は、オプション契約の締結時より化合物の開発企業を支配している場合があります。
関連性のある活動を指図する現在の能力を有する投資者は、その指図する権利をまだ行使していなくても、パワーを有しています。投資者が関連性のある活動を指図してきたという証拠は、投資者がパワーを有しているかどうかの判定に役立つ可能性がありますが、そうした証拠は、それ自体では、投資者が投資先に対するパワーを有しているかどうかの判定に際して決定的なものではありません。[IFRS第10号第12項]
投資者は、その関与により生じる投資者のリターンが投資先の業績の結果によって変動する可能性がある場合、投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャーまたは権利を有しています。投資者のリターンは、正の値のみ、負の値のみ、または正と負の両方の場合があります。[IFRS第10号第15項]
設例3-化合物を開発するバイオ企業の株式を取得するオプション
Biotech社は、嚢胞性線維症の治療薬である新薬の開発を行っています。化合物は、現在、開発フェーズIです。Biotech社には4人の重要な科学者兼創業者がおり、彼らは唯一の株主です。Biotech社には、現在、さらなる開発が検討されている他の複数の化合物があります。
Pharma A社は、化合物の開発フェーズIIIの着手に成功した場合にBiotech社の株式を100%取得するオプションのために、創業者株主にCU80百万を支払います。このオプションの行使価格はCU500百万です。オプションは、マイルストーン・イベントの発生から90日以内に行使しなければならず、また、5年後に失効します。上記の4人の重要な科学者は、オプション期間中、Pharma A社の同意なしに同様の治療分野のいかなるプロジェクトに従事することができません。嚢胞性線維症の治療のための化合物の他に、何らかの開発プロジェクトを行う場合には、Pharma A社の同意を得ることが必要となります。CU80百万は、Pharma A社の同意がなければ、他の開発プロジェクトに使うことができません。
Biotech社は、オプションの有効期間中、他者に化合物を売却したりライセンスを供与したりすることはできません。Biotech社は、また、オプションの有効期間中、4人の創業者株主以外から、さらなる株式資本、転換社債、同様の参加型商品による資金調達を禁止されています。Biotech社は、開発の進展に応じてPharma A社にデータを提供することが要求されていますが、開発に関する日常的な意思決定はすべてBiotech社が行います。オプション期間中、Biotech社は、Pharma A社の特定の科学者から助言を受けることができます。
Pharma A社は、前払いのオプション料をどのように会計処理しますか
回答
Pharma A社は、IFRS第10号に基づき、このオプションがBiotech社に対する支配を提供するのかどうかを判定する必要があります。支配がない場合、IAS第32号に基づいて当該オプションをデリバティブとして処理することになります。デリバティブは当初においても事後においても公正価値で測定し、変動があれば純損益に計上します。
この事例では、Pharma A社は、オプション契約の締結日から潜在的議決権を通じてBiotech社を支配している可能性が高いと考えられます。
オプションは、マイルストーン・イベントの発生まで行使できません。しかし、Biotech社の最も関連性のある活動は、主要な化合物を売却またはライセンス供与する能力です。こうした決定は、オプション契約を通じて、Pharma A社によってコントロールされています。 Biotech社は、Pharma Aの同意がなければ、別の新薬の開発や株式発行による資本の調達を通じて重要な活動を変更することはできません[IFRS第10号第B22–B24項]。また契約により、重要な社員は会社に留まり、新薬開発に従事しなければなりません。
Pharma A社は、オプション契約締結日よりBiotech社を連結する必要があります。初日(day 1)に支払われたCU80百万は、企業結合の対価となります。将来のオプション行使価格は条件付対価であり、取得日に公正価値で測定しなければなりません。
注:この設例は、本資料の発行日現在のIFRS第3号に基づいています。この設例の回答は、事業の定義に関する修正の影響を受ける可能性があります。
設例4-ベンチャーキャピタル企業による新会社設立を通じた開発フェーズIIIの資金調達
Pharma A社は、フェーズIIの完了に成功している複数の内部開発した化合物を有しています。Pharma A社は、資源的な制約から、これらの化合物のうち選択した一部についてのみ開発を継続できます。あるベンチャーキャピタル企業(VC)は、成功報酬と交換に、フェーズIIIの臨床試験の資金を提供しています。VCは新たにDevCo社を設立し、Pharma A社はDevCo社に対して、フェーズIIIの開発を実行し、規制当局の認可を得るためのライセンスを供与します。ライセンス契約には、DevCo社が開発を継続するために最善の努力を行うことが明記されています。DevCo社は、開発業務受託機関(CRO)にフェーズIIIの臨床試験をアウトソースします。VCは、DevCo社を売却することはできず、DevCo社は第三者に化合物を売却することはできません。
Pharma A社は、DevCo社の全株式を購入するコールオプションを有しています。当該オプションは、フェーズIII完了の成功時に、研究開発支出の3倍の価格で行使可能となります。VCは、プットオプションを有しており、フェーズIII完了の成功時に、このオプションを行使して、研究開発支出の3倍の価格でPharma A社に対してDevCo社を売却することができます(成功報酬)。
どちらの当事者がDevCo社を支配していますか
回答
Pharma A社は、DevCo社を支配しているため、同社を連結します。支配には、関連性のある活動に対するパワー、変動リターンに対するエクスポージャー、およびパワーとリターンとの関連性が求められます。
それぞれの医薬品から得られる最終的なリターンは、元の化合物に由来します。DevCo社が実行する開発の成功または不成功は、化合物の基礎となる科学に左右されます。したがって、化合物の選択こそが、最も関連性のある活動となります。Pharma A社とVCは、共同で化合物の選択に合意しますが、当該選択は、そもそもPharma A社が選定した複数の化合物の中から行われます。また、Pharma A社は化合物に関する知的財産(IP)も保持します。支配の有無を判定する際には、投資先の目的および設計を考慮しなければならず、ここでも化合物の選択が重要であることが示唆されています。なぜなら、それがなければ、DevCo社の目的もあり得ないからです。
Pharma A社は、化合物からゼロまたはプラスのリターンを得ます。化合物の開発が成功しなければリターンを得ることはできませんが、成功した場合は、将来の売上に基づいてリターンを得ることができます。Pharma A社は、当初の化合物の選択および販売努力を通じて、リターンに影響を与える能力も有しています。
関連性のある活動に関する重要な意思決定を行う必要がある時に、投資者がその権利を行使することができるのであれば、当該権利は、現在行使可能である必要はありません。これは、開発に成功した医薬品がPharma A社に戻され、規制当局の認可を得て、市販される時が考えられます。
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