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要点
FASBは、税制改正のいくつかの側面について米国会計基準をどのように適用するのかという質問について議論しました。最終的なガイダンスは、近い将来に公表される見込みです。
米国会計基準審議会(FASB)は、2018年1月10日のFASB会議において、米国税制改正に係る法人所得税の会計処理に関連して、いくつかのトピックを議論しました。この会議での結論および今後の対応は、それぞれのトピックによって異なります。
その他の包括利益累計額(AOCI)に残される一部の税効果の振替
米国会計基準(US GAAP)の下では、税法の変更による影響は、改正法が制定された年度において、継続事業に関連する法人所得税引当の構成要素として個別に計上されます。再測定された繰延税金が継続事業以外の財務諸表の構成要素(例えば、その他の包括利益(OCI)または取得会計)による場合であっても、これは同様です。継続事業を通じてOCIに当初認識されていた損益項目から生じる一時差異に係る繰延税金の調整は、AOCIに累積する税効果と不均衡となる可能性があります。
FASBは、本税制改正の結果として、AOCIに「残される(stranded)」可能性のある税効果に関連する会計処理に対応するため、狭い範囲のプロジェクトをアジェンダに追加することを決定しました。またFASBは、新たに制定された法人所得税率の引下げに関連して、残される税効果をAOCIから利益剰余金へ振り替えることを要求する公開草案を公表する予定です。この提案は、過去または将来の税法の変更による影響には適用されないと考えられます。この振替は、本改正法の制定日時点で決定することになりますが、米国証券取引委員会(SEC)職員会計公報第118号(SAB118)「減税及び雇用法が法人所得税の会計処理に与える影響(Income Tax Accounting Implications of the Tax Cuts and Jobs Act)」に従って暫定額を計上している企業は、複数の会計期間で報告する可能性があります。
公開草案には、すべての企業を対象に2018年12月15日より後に開始する事業年度および当該事業年度に含まれる期中報告期間より適用を要求するという、発効日の提案が含まれることになります。また、この公開草案では、まだ公表されていない財務諸表について早期適用を認めることも提案される見込みです。
1986年以後における未分配の海外留保利益のみなし配当に係る税金負債は、8年間にわたる納税が可能となります。この税金負債について、貨幣の時間価値を割り引くべきかという質問が提起されました。FASBスタッフは、みなし配当に係る税金負債は割り引くべきではないと述べました。FASBメンバーはこれに同意しました。
還付可能な代替ミニマム税(AMT)クレジットに係る繰越の分類および割引
本改正法の下では、過年度からのAMTクレジットの繰越額は、最初に通常税額を減額するのに使用されることになります。しかし、この処理で使用されない金額がある場合は、その後、数年間にわたり還付されます。AMTクレジットの繰越額を、繰延税金資産または未収法人税のどちらに分類すべきか、また未収法人税である場合には割り引くべきかという質問が提起されました。FASBスタッフは、分類に関する質問には対応しませんでしたが、未収法人税に分類されるAMTクレジットの繰越額については割り引くべきではないと述べました。FASBメンバーはこれに同意しました。
PwCは、この分類について、企業はAMTクレジットの繰越額を繰延税金または未収法人税に分類することができ、さらに見込みに基づいてAMTクレジットの繰越額を繰延税額と未収法人税額に区分処理することができると考えます。企業は選択したアプローチを会計期間にわたって首尾一貫して適用しなければならないと考えます。
企業は、今後数年間、BEATの課税対象となる可能性があります。BEATの課税対象になることが想定される企業は、繰延税金の測定においてBEATを考慮すべきか、または、BEATの影響を期間費用として扱うべきかという質問が提起されました。FASBスタッフは、企業はBEATを期間費用として会計処理すべきであり、繰延税金資産や繰延税金負債については、BEATを考慮せずに通常の法定税率で計上しなければならないと述べました。FASBメンバーはこれに同意しました。
グローバル無形資産低課税所得(GILTI)に課せられる税金の会計処理
企業は、今後数年間、GILTIに課せられる税金の課税対象となる可能性があります。GILTIは、外国法人の有形資産に係るみなし収益を超過する海外所得に課せられる税金です。通常、この所得は、税率10.5%で課税されることになります。企業は、GILTIとして戻入が見込まれるアウトサイド・ベイシス(outside basis)の差異を含む一時差異について、繰延税金を認識すべきか、または、そのような影響が発生した場合および発生した時に期間費用として会計処理すべきか、という質問が提起されました。
FASBスタッフは、GILTIとして戻入が見込まれる税務基準額の差異について、繰延税金を認識するか、または、発生した場合および発生した時にGILTIを期間費用として会計処理するかについて、企業は会計方針を選択し、それを開示しなければならないと述べました。FASBメンバーはこれに同意しました。
FASBスタッフは、繰延税金の認識を含むアプローチに関連して、解釈に係る追加の質問が寄せられていると述べました。FASBスタッフおよびFASBメンバーのいずれも、これらの追加の質問には対処しませんでした。
非公開企業および非営利事業体によるSAB118の適用
SAB118は、SEC登録企業が一部の法人所得税制改正による影響の会計処理を完了するために、合理的に詳細なレベルでの必要情報の入手、準備または分析(計算を含む)を実施できない状況における、US GAAPの適用に対応しています。FASBスタッフは、非公開企業および非営利事業体もSAB118を適用する選択肢があると述べました。FASBメンバーはこれに同意しました。
上記の適用上の質問に対するFASBスタッフの追加的な解釈ガイダンスによって、明確化がなされ、概ね首尾一貫したUS GAAPの適用が図られることになります。また、AOCIに残される税効果に係るFASBの狭い範囲のプロジェクトは、AOCIに累積する税効果の金額において認識されている歪みについて、一部の利害関係者の懸念に対処することになります。さらに、FASBが非公開企業および非営利事業体に対してSAB118の適用の選択を認めたことは、すべての企業に首尾一貫した適用ガイダンスに提供することになります。
FASBスタッフは、AOCIに残される一部の税効果の会計処理に関連する会計基準アップデートの公開草案を作成する予定です。この公開草案は、近い将来に公表され、15日間のコメント期間が設けられる予定です。また公開草案には、FASBが「バックワード・トレーシング」という基本的な概念に関する、より広い範囲のプロジェクトを追加すべきかどうかに関する質問も含まれることになります。バックワード・トレーシングとは、当期の繰延税金額に係るすべての変動の影響を、過年度に最初に繰延税金額を認識したのと同じ表示項目(例えば、その他の包括利益、非継続事業からの利益)で計上することです。
FASBは、残りのトピックについて、FASBウェブサイトの本税制改正法の適用に関するページ1に、FASB職員Q&A解釈シリーズを公表する予定です。FASBスタッフは、現在、SAB118を適用する非公開企業および非営利事業体に関連するQ&Aの文言を最終化しています。このQ&Aは、近くFASBウェブサイトに掲載されると見込まれます2。
その他のトピックに関するQ&Aは、FASBメンバーによるレビューに向けてドラフトが作成される予定です。その後、Q&Aのドラフトは、発生問題専門委員会(EITF)メンバーに配布されて意見が求められ、2018年1月18日のEITF会議で議論されると見込まれます。Q&Aの最終版は、FASBの本税制改正法の適用に関するページに掲載される予定です。
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