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背景
国際財務報告基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」は、医薬・ライフサイエンス(PLS)業界に属する多くの企業の会計処理に著しい影響を与えます。本In briefは、IFRS第15号の下でのライセンス契約における特定の形態の固定対価の会計処理に関する主要な影響を取り上げています。
追加的な情報は、PwCのGlobal Revenue Guide(英語のみ)および業種別の収益ガイド(医薬・ライフサイエンス業界の収益ガイド)(英語のみ)をご参照ください。
論点
知的財産を使用する権利を提供するライセンス
PLS企業(ライセンサー)が提供するライセンスは、通常、顧客(ライセンシー)に対して、ライセンサーの知的財産(以下、IP)を所有する権利ではなく使用する権利を与えます。PLS業界における一般的な事例として、未だ規制当局の認可を受けていない医薬品に関連して、企業が開発したIPを顧客に「アウトライセンス」することがあります。多くの場合、ライセンスの契約条件の下で、ライセンシーはIPをさらに開発して、その結果生じた市販用製品を製造および(または)販売することができます。ライセンサーは、通常、前払報酬、特定の臨床試験やその他の開発の結果に応じたマイルストーンの支払、ならびに売上高ベースのロイヤルティを、ライセンスの対価として受け取ります。通常、単一の履行義務(すなわち、「使用する権利」を提供するライセンスの移転)が存在する契約は、収益を一時点で認識します。本In briefは、「使用する権利」を提供するライセンスの移転が唯一の履行義務である契約に焦点を当てています。そのため、本In briefで説明する会計上の取扱いは、複数の履行義務が含まれる契約または複数の財およびサービスが単一の履行義務に結合されている契約とは異なる可能性があります。
年賦払いの報酬
特定のアウトライセンス取引では、ライセンサーは、所定のライセンス期間の末日まで、毎年当初契約の開始日と同じ日に、ライセンシーが支払う報酬を受け取ります。このような報酬は、顧客に移転される追加的な別個の財またはサービスに対して支払われることもあれば、特許の維持や保護に対する資金提供のためにライセンサーに支払われることもあります。通常、既存の特許を維持または保護する約束は、別個の財またはサービスに該当しないため、別個の履行義務は生じません。
「使用する権利」を提供するライセンスが契約における唯一の履行義務である場合、このような年賦払いの報酬は、支配がライセンシーに移転してライセンス期間が開始した時点で認識しなければなりません。これは、約束した財またはサービスと交換に支払われる偶発事象に基づかない固定報酬(年賦払いの報酬など)は、将来の事象の発生または不発生を条件とする変動対価ではないためです。その結果、このような支払いに係る現行の会計処理に比べると、収益の認識が加速する(早まる)可能性が高くなります。
最小限の金額を保証するロイヤルティ
PLS業界におけるアウトライセンス契約には、最小限のロイヤルティ保証が含まれる可能性があります。最小限の保証金額が顧客の履行やIP開発を成功に導く能力に係る不確実性があるため交渉により決定する場合もあれば、ライセンサーが契約に基づくキャッシュ・フローの予測可能な時期を知るためのキャッシュ・フロー管理ツールとして最小限の保証が設定されている場合もあります。最小限の金額は、ライセンス期間の開始時点で支払われるか、または、売上高ベースや使用量ベースのロイヤルティが保証金額を下回る場合に定期的もしくはライセンス期間の末日時点のいずれかに決済される可能性があります。
最小限のロイヤルティ保証に拘束力があり、将来の事象(規制当局の認可など)の発生または不発生に左右されないと仮定すると、最小限の金額は固定対価に該当し、企業がライセンシーに支配を移転し、ライセンス期間が開始した時点で認識しなければなりません。このことは、最小限の保証が前払いであるか、一定の期間にわたって支払われるか、またはライセンス期間の末日時点で支払われるかには関係ありません。ただし、最小限の保証を上回るロイヤルティの金額は、その後の販売や使用が発生した時点で認識しなければなりません。
最小限の保証に対する前払金額を認識することは、このタイプの契約に係る現行の会計処理に比べると、収益の認識が加速する可能性が高くなります。
関連する主要な判断
以下は、支払遅延している固定対価を会計処理する場合に、企業が実施する必要のある主要な判断です。
回収可能性
企業は、契約の開始時に、企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いかどうかを判定する必要があります。この評価には、期限が到来している金額を支払う顧客の能力および意図の両方を考慮しなければならず、支払遅延している固定対価を含む、取引価格のすべての要素を評価することになります。重要なのは、企業が対価を回収する可能性が高くないと結論づけた場合、特定の要件を満たすまで、契約に関連する収益の認識は認められないことです。具体的には、受け取った対価が返金不能である場合や、契約が終了しているか企業が追加の財またはサービスを移転する義務を有していない場合を除き、収益は認識できません。回収可能性が高くないと結論づけている企業は、契約の全期間にわたり、この結論を継続して再評価する必要があります。
契約期間の決定
企業にとって、契約の両当事者が契約の下で強制可能な権利と義務を有している期間を決定するために、契約期間を評価することは重要です。これは、取引価格の決定および収益の認識に影響を与える可能性があります。すなわち、この契約期間の決定により、IFRS第15号の下で現行実務に比べて加速して認識する年賦払いの報酬や最小限の保証のロイヤルティの金額が決まります。
企業は、この決定を行う際に契約が取消可能かどうか、もし取消可能である場合には契約取消しの際に実質的な解約のペナルティが存在するかどうかを評価することが要求されます。解約ペナルティは、現金払い、または、ライセンス供与されたIPの価値のある権利に対する支払金額の返金なしでの解約時の当該権利の失効など、多様な形態をとることが考えられます。IPに対する権利の失効がその契約に照らして実質的かどうかの評価には、重要な判断が伴う可能性があります。
実質的な解約ペナルティなしで解約できる契約のみ、解約不能の期間に強制可能な権利や義務を有しています。したがって、取引価格には、顧客が契約を解約することによって支払いを回避する可能性のある報酬(例えば、特定の遅延した固定支払)を除外します。また企業は、この状況において、契約に将来の購入オプションに関連する重要な権利が含まれているかどうかを評価する必要があります。
重大な金融要素
PLS業界の企業は、契約の長期的な性質、および遅延ベースで支払われる固定対価の存在を考えた場合、重大な金融要素が存在するかどうかを判定するために、ライセンス供与されたIPに対する支配の移転について、支払いのタイミングを評価する必要があります。履行から長年遅れて現金を受け取ることが頻繁にある場合は、重大な金融要素が存在する可能性があります。その場合には、ライセンスに対する支配が移転した時に認識した収益の当初の金額について、貨幣の時間価値を割り引き、受け取った(または受け取ることのできる)対価の一部を(収益ではなく)金利収益として認識しなければなりません。
適用による影響
企業は、選択した適用方法(すなわち、完全遡及アプローチまたは修正遡及アプローチ)が、IFRS第15号の適用前に締結した契約および充足した履行義務について、損益計算書上に収益として加速して認識した金額を表示する企業の能力に影響を与えることに注意しなければなりません。
設例
設例1
2017年に、A社は、500百万ドルの返金不能な前払報酬および2018年から2022年まで5年均等年賦で支払う追加の200百万ドル(年40百万ドル)と交換に、IPの使用権のライセンスを移転する6年契約を締結しました。この契約にはその他の履行義務はなく、企業は、(1)対価の回収の可能性が高い、および(2)顧客が契約を解約する場合には実質的な解約ペナルティがある、と結論づけています。国際会計基準(IAS)第18号「収益」の下では、A社は、500百万ドルの返金不能な前払報酬を、2017年度に収益として認識していました。
A社は、IFRS第15号の適用による影響を評価する際に、早期解約には実質的な解約ペナルティがあるため、契約期間は、契約上所定とされている6年間に等しいと判定しています。また企業は、重大な金融要素が存在していると結論づけています。具体的には、IFRS第15号の適用日において、ライセンシーの借入金利5%の40百万ドルの5年年賦の現在価値は、173百万ドルと同額になります。
A社は、修正遡及アプローチを用いて、2018年1月1日にIFRS第15号を適用しています。ただし、A社は、完了した契約の修正再表示を行わないことを企業に認める移行に係る実務上の便法を適用していません。A社は、基礎となる履行義務(すなわち、「使用する権利」を提供するライセンスの移転)は、IFRS第15号の適用前に完全に充足されているため、年賦で支払う173百万ドルの認識を加速することが要求されます。しかし、A社が修正遡及アプローチを用いて適用したと仮定して、調整額全体(すなわち、173百万ドル)について、IFRS第15号の適用当初の累積的影響を、2018年1月1日時点の利益剰余金(または資本の適切なその他の構成要素)の期首残高に対する調整として反映させることになります。また、A社は、契約の残りの期間にわたり、27百万ドルの金利収益を認識します。
設例2
B社は、2016年に、商業販売を行う予定の薬剤化合物のライセンスを移転する10年契約を締結しました。この契約にはその他の履行義務は含まれていません。50百万ドルの前払報酬に加えて、B社は10年間のライセンス期間中に医薬品の商業売上の5%に相当するロイヤルティを受け取る権利を有しています。この契約には、ライセンス期間にわたるロイヤルティの最小限の保証の合計100百万ドルが含まれており、10年の契約期間の末日時点で、最小限の金額を保証されたロイヤルティの一部または全部の範囲で決済または支払が行われます。B社は、この対価の回収の可能性は高いと結論づけています。
B社は、早期解約には実質的な解約ペナルティが存在していることから、契約期間は、所定の10年間であると判定しています。また、B社は、重大な金融要素は存在しないと結論づけています。これは、最小限の保証である100百万ドルを支払うタイミングが医薬品のライセンシーの売上高によって変わるためです。
B社は、2018年1月1日に、完全遡及アプローチを用いてIFRS第15号を適用しています。また、B社は、完了した契約の修正再表示を行わないことを企業に認める移行に係る実務上の便法を適用していません。B社は、基礎となる履行義務(すなわち、「使用する権利」を提供するライセンスの移転)は、IFRS第15号の適用前に完全に充足されているため、100百万ドルの最小限の金額を保証したロイヤルティの認識を加速することが要求されます。B社が完全遡及アプローチを用いたと仮定して、調整額全体(すなわち、100百万ドル)は、2016年の損益計算書上に収益として表示されます。B社が修正遡及アプローチを用いてIFRS第15号を適用していれば、調整額全体は2018年1月1日時点の利益剰余金(または資本の適切なその他の構成要素)の期首残高に対する調整として認識されていたでしょう。
最小限の金額の保証を超えて稼得したロイヤルティの金額は、IFRS第15号のロイヤルティの例外(すなわち、その後の販売または使用が生じる時)に従って認識されます。
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