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要点
FASBの新たなガイダンスは、保険会社または再保険会社が発行する長期契約の測定モデルの主要な要素および開示要件の大幅な変更を意味します。
最新の動向
米国財務会計基準審議会(FASB)は、2018年8月15日、会計基準アップデート(ASU)2018-12「長期契約の会計処理に対する特定項目を対象とした改善(Targeted Improvements to the Accounting for Long-Duration Contracts)」を公表しました。新しいガイダンスは、保険会社および再保険会社により発行される多くの長期契約の測定および開示の大幅な変更になります。
なぜ重要か
この修正は、伝統的な無配当型長期保険および有限払込型保険負債の測定モデル、ならびに、大部分の長期契約に関する繰延契約獲得費用の認識および償却モデルの主要な要素を改訂しています。さらに、FASBは、名目的でない資本市場リスクを有するすべての最低保証給付について、公正価値モデルに移行しました。
将来の保険給付に係る負債
伝統的な無配当型保険、有限払込型保険および再保険契約に関する将来の保険給付に係る負債を測定する場合、キャッシュ・フローおよび純保険料率は、保険の仮定(例えば、死亡率、疾病率、解約・失効率など)の変更についての、更新が要求されます。この更新は、毎年、同時期における実施が求められますが、更新の必要性を示す証拠がある場合には、より高い頻度で実施しなければなりません。キャッシュ・フローに関する仮定の更新の影響は、遡及的修正を基礎とした測定を行い、影響額は、更新を行った期間の損益計算書において、継続中の保険給付費用とは区分して表示します。安全余裕率(a provision for adverse deviation) は、もはや要求されません。
現行の保険料不足に関するテストに代わり、純保険料率(すなわち、予想給付および関連費用合計予想保険料合計に対する割合)に係る上限が100%に設定されます。この計算からは、契約獲得費用は、除外されます。今後は、発行年度の異なる契約のグループ化は、許容されず、その結果、契約が損失ポジションにあるかの判定のための集約レベルが、事実上引き下げられる結果になります。
また、将来の保険給付に係る負債の算定において貨幣の時間価値を反映させるために使用される割引率が統一されます。負債のデュレーション特性を反映する、中程度以上の(信用リスクの低い)格付の固定利付社債の利回りが要求されることになり、基本的には、米国における「シングルA格付け」がこれに該当します。この利回りは、期待運用利回りを反映させた割引率を使用することを求める、現行の要求事項と異なります。損益計算書の目的上、各期の純保険料率および負債の利息費用の算定では、ロック・インされた割引率を使用します。貸借対照表の再測定の目的上、割引率は、各報告日時点で更新され、割引率の変動が将来の保険給付に係る負債に与える影響は、その他の包括利益において即時に計上されます。
市場リスクを伴う給付の首尾一貫した測定
新しいガイダンスでは、保険契約者に対して市場リスクを伴う給付(MRB)を提供する契約における特性について、新たな定義を設けています。MRBとは、名目的でない資本市場リスク(すなわち、株式リスク、金利リスク、為替リスクなど)から契約者を保護する一方で、保険会社を名目的でない資本市場リスクに晒す、契約または契約の特性です。市場リスクを伴う給付は、保険会社や再保険会社が引き受ける変動年金保険契約および固定年金保険契約のどちらにも含まれる場合があります。MRBの新しい定義を満たす契約の特性は、公正価値で会計処理されることが要求されます。公正価値の変動のうち、発行済保険契約の商品固有の信用リスクの変動に起因する部分は、その他の包括利益に認識します。
「市場リスクを伴う給付」(MRB)の要件を通常は満たす契約の特性には、最低死亡給付保証(GMDB)や最低年金受取総額保証(GMIB)などの、さまざまな最低保証(GMXB)が含まれ、これらは、現在は、キャッシュ・フローの見積りの変動を契約の存続期間にわたって配分するモデルに従って会計処理されています。また、現在はデリバティブとして会計処理されている最低年金原資保証(GMAB)および最低引出総額保証(GMWB)、ならびに、現在は会計処理にばらつきのある生命保険給付のGMWBも、MRBの範囲に含まれます。MRBは、貸借対照表および損益計算書の両方において区分して表示されることが要求されます。
繰延契約獲得費用償却の簡素化
すべての長期保険契約および大半の投資契約に関連する繰延契約獲得費用は、収益率に関わらず、契約の予想存続期間にわたって定額法で償却されます。繰延契約獲得費用の残高に対する金利は発生せず、また、繰延契約獲得費用は減損テストの対象になりません。予想される契約獲得費用(例えば、予想される更新のコミッションなど)は、今後は、契約開始時の償却費においては考慮されず、発生後にのみ償却されることになります。
この簡素化された償却パターンや金利の不計上は、現在、繰延契約獲得費用の償却と整合する基礎に基づいて償却することが要求されているその他の残高についても、同様に要求されます。「販売勧誘」費用やユニバーサル・ライフ型契約の一時払い手数料がこれに含まれます。保険会社が繰延契約獲得費用と整合する基礎に基づいて償却することを選択できるが要求されない、その他の残高に関連する償却ガイダンスについて、FASBは、具体的な変更を行っていません。このようなその他の残高の例には、企業結合で取得した無形の契約資産および無形の契約負債、ならびに再保険の純費用が含まれます。取得した無形の契約資産は、減損テストの対象となります。
開示の拡充
将来の保険給付に係る負債、保険契約者勘定残高、市場リスクを伴う給付、繰延契約獲得費用および販売勧誘コストの細分化された調整表を含む、重要な追加的開示が要求されます。さらに、期待キャッシュ・フロー、見積りおよび仮定について、定性的および定量的な情報の開示が要求されます。
経過措置
伝統的な保険契約および有限払込型保険契約負債に関する新しい測定ガイダンスおよび繰延契約獲得費用の償却に関する新しいガイダンスは、移行時に存在する残高を「起点」とした修正遡及移行アプローチに基づいて適用することが要求されます。特定の要件を満たせば、完全遡及による経過措置を選択する選択肢もあります。繰延契約獲得費用に関する移行アプローチは、将来の保険給付に係る負債に適用される経過措置と整合していることが要求されます。
修正遡及アプローチの下では、移行日時点で有効な契約について、企業は、純保険料率の計算に、中程度以上の格付けの固定利付社債の利回りではなく、既存のロック・インされた運用利回りの仮定を引続き使用することになります。しかし、貸借対照表の再測定の目的上は、当該時点の中程度以上の格付けの固定利付社債の利回りを使用し、その差額を、移行時においては(累積的その他の包括利益を通じて)および事後的には(その他の包括利益を通じて)認識します。
MRBについては、遡及適用が要求されますが、公正価値測定に関しては前の期の仮定が観察不能または入手不能である場合に限り、事後判断を用いることができます。
次のステップ
新しいガイダンスは、12月決算の公開企業(public business entities)については、2021年1月1日に適用されます。その他の企業にはさらに1年の猶予があります。早期適用は、許容されています。
新ガイダンスの適用は、システム、プロセス、統制に重要な変更を要求し、おそらく、過去に把握していなかったデータや、測定に必要なフォーマットおよびグルーピングの保険数理モデルに含まれていなかったデータの蓄積を要求します。
要求されている修正遡及適用により、保険会社は、早ければ2019年1月には、この追加データの把握および収集を開始する必要があります。
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