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要約
LIBORおよびLIBORに類似する金利指標に関する改革(以下、「IBOR改革」)は、すべての業種のほぼすべての企業に影響を及ぼします。この改革は数年間にわたって実施される見込みですが、短期的には財務報告、特にヘッジ会計に影響を及ぼす可能性があります。
国際会計基準審議会(IASB)は、公開草案「金利指標改革:IFRS第9号『金融商品』及びIAS第39号『金融商品:認識及び測定』に対する修正案」を公表しています。本公開草案により、IBOR改革から生じる不確実性のために中止する必要がある一部のヘッジについて、ヘッジ会計の継続が可能になります。本公開草案のコメント期限は2019年6月17日であり、IASBは本公開草案を2019年末までに最終化することを目指しています。
論点
金融危機後、LIBORや他の銀行間取引金利(「IBOR」)のようなベンチマーク金利の置き換えが、世界各国の規制当局にとっての優先事項となりました。多くの不確実性が残されていますが、この置き換えへの道筋が明らかになってきています。IBORに基づく契約は、金融機関と企業の双方に広く存在するため、ベンチマーク金利の変更はIFRSに基づく財務報告に重要な影響を及ぼす可能性があります。
IASBは、IBOR改革の影響に救済を与えるとすればどのような救済が考えられるかを2つのフェーズに分けて検討するプロジェクトを有しています。フェーズ1では、IBOR改革の実施前の期間におけるヘッジ会計の救済措置を検討しており、本In briefで説明する公開草案の公表につながりました。フェーズ2で、IASBは、IBOR改革の実施時点で関連する可能性のある救済措置を検討する予定です。
本公開草案は、IBOR改革から生じる不確実性のため、本来であればヘッジ関係を中止する必要のある特定のヘッジについてヘッジ会計を継続できるよう、IFRS第9号およびIAS第39号を修正することを提案しています。具体的には、本公開草案は以下の提案を行っています。
  • 企業が予定取引の発生可能性を評価する際に、IBOR改革の結果によっても、IBORに基づく契約条件は変更されないと想定できるよう、「可能性が非常に高い」という要求事項を修正する。
  • 企業は、IBOR改革の結果によっても、ヘッジ手段とヘッジ対象から生じるIBORに基づく契約上のキャッシュ・フローは変わらないと想定できるように、将来に向かってのヘッジの有効性評価を修正する。
  • 企業が、ヘッジ関係の開始時に、契約上特定されていないIBORリスク要素は独立に識別可能でなければならないとする要求事項を満たしていた場合、たとえ事後にその要求事項を満たさなくなった場合でも、ヘッジ会計を継続する。
ヘッジ会計の恣意的な中止(「チェリーピッキング(良い所取り)」)に関する懸念に対処するとともに、IFRS第9号におけるヘッジ会計の任意中止の禁止との整合性を図るため、上記の救済措置の強制適用が提案されています。これらの救済措置は、既存のヘッジと新規のヘッジの両方に適用されます。
本公開草案は、結果として生じるキャッシュ・フローの時期と金額に関する不確実性がもはや存在しなくなった時、または、ヘッジ関係が中止された時のいずれか早い時点で、救済措置の適用を中止しなければならないと提案しています。
影響および影響を受ける企業
本公開草案は、IBOR改革を行う必要があると決定した全ての国・地域に影響を及ぼすことになります。また本公開草案は、金利スワップ、金利オプション、金利先渡契約、通貨スワップなどの金融商品を用いた貸付金、債券、借入金に対するヘッジなど、IBORに関連するヘッジにヘッジ会計を適用しているすべての業種の企業に影響を及ぼします。詳細は、以下の通りです。
「可能性が非常に高い」という要求事項
IFRS第9号およびIAS第39号に基づくキャッシュ・フロー・ヘッジ会計は、ヘッジ対象の将来キャッシュ・フローが発生する「可能性が非常に高い」ことを要求しています。これらのキャッシュ・フローがIBORに依存している場合(例えば、発行済負債から生じる将来のLIBORに基づく金利支払が金利スワップでヘッジされている場合)、関連するIBORの公表の中止が予想される日を超えて、キャッシュ・フローが発生する「可能性が非常に高い」とみなすことができるかどうかという問題が生じます。本公開草案では、企業は、IBOR改革の結果によっても、現在のIBORベースのキャッシュ・フローは変わらないと想定することになり、そのため、「可能性が非常に高い」という要求事項を依然として満たすことになります。
「将来に向かっての評価」(経済的関係と非常に有効なヘッジ)
IFRS第9号およびIAS第39号は、ヘッジ会計を適用するために将来予測的な評価を要求しています。IFRS第9号は、ヘッジ対象とヘッジ手段との間に経済的な関係があることを要求していますが、IAS第39号は、ヘッジが非常に有効であると見込まれることを要求しています。IBORがいつ、どのような指標金利に置き換えられるかなど、IBOR改革から生じる不確実性を考慮すると、このような要求事項を実証することは困難になる可能性があります。提案された救済措置の下では、企業は、将来に向かっての評価を行う際に、IBOR改革の結果によっても、ヘッジ手段とヘッジ対象から生じるIBORに基づく契約上のキャッシュ・フローは変わらないと想定することになります。しかし、通常の方法による全ての(IBOR改革から生じる部分を含む)非有効部分の測定および認識、ならびにIAS第39号の下での遡及的な有効性評価における80%から125%の閾値を超えた場合のヘッジの中止のいずれについても、救済措置は提案されていません。
リスク要素
一部のヘッジにおいて、ヘッジ対象またはヘッジされたリスクは、契約上特定されていないIBORリスク要素です。1つの例は、ヘッジ指定されたリスクがIBORの変動に起因する負債の公正価値の変動である場合の固定利付負債に対する公正価値ヘッジです。ヘッジ会計を適用するために、IFRS第9号およびIAS第39号は、指定されたリスク要素が独立に識別可能であることを要求しています。IBOR改革から生じる不確実性を考慮すると、これが当てはまらなくなる可能性があります。この救済措置案では、ヘッジが指定された時点でこのリスク要素が独立に識別可能であったことを条件として、企業はヘッジ会計を継続することになります。しかし、リスク要素がヘッジ関係の開始時において独立に識別可能でない新たなヘッジについては、救済措置は提案されていません。
適用日および次のステップ
IASBは、この救済措置がなければ、一部のヘッジは近い将来、ヘッジ会計に適格ではなくなる可能性があることを認識しています。そのため、IASBは、2019年後半に本公開草案を最終化させることを目指しており、これを円滑に進めるために、本公開草案のコメント期間を通常の公開草案より短い6月17日までの期間としています。提案されている発効日は、2020年1月1日以後開始する会計期間であり、早期適用が認められます。また、修正の遡及適用も提案されています。
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