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要点

米国証券取引委員会(SEC)は、開示強化とさらなる投資家保護のため、特別買収目的会社(SPAC)による新規株式公開(IPO)および合併(de-SPAC)取引に関連する新規則および修正規則を提案しました。本規則案は、これらの取引と伝統的なIPOを整合させることを目的としています。

最新の動向
2022年3月30日、SECは特別買収目的会社(SPAC)の新規株式公開(IPO)、および、IPO後のSPACと非公開事業会社の合併(de-SPAC)取引に影響を与える新規則および修正規則案を提案しました
本規則案の採決に際して、SEC議長のゲンスラー氏は「SPACによるターゲット企業のIPO(de-SPAC取引)は、機能上、IPOを実施するための代替手段として利用されている」と指摘しました。本規則案は、SPACの投資家に対し、伝統的IPOと同水準の保護を提供し、「情報の非対称性、誤解を招く情報、利益相反」に関する懸念への対処を目指しています。
SPACによる新規株式公開
新規則案では、SPACのIPOについて以下を含む追加的な開示の要求が提案されていますが、これらに限定されるものではありません。
  • SPACスポンサー(支配者)およびその関係会社、ならびにSPACプロモーターの識別
  • SPACスポンサーおよびその関係会社の関係性を示す組織図およびロックアップ期間の一覧表
  • SPACスポンサー、その関係会社およびSPACプロモーターが、de-SPAC取引の完了時およびSPACに提供するあらゆるサービスに対して付与されるまたは付与が予定される報酬の性質および金額
  • SPACスポンサーまたはその経営幹部ないし取締役もしくはプロモーターと、IPOにおける買手との間で生じる可能性のある利益相反(de-SPAC取引を進めるか否かを決定する際に生じる可能性のある利益相反を含む)
  • 目論見書の表紙や要約情報における追加的な情報(de-SPAC取の完了までのスケジュール、追加の資金調達に関する計画、償還金額の範囲(最大償還額の25%、50%、75%、最大償還額)別の潜在的な希薄化要因の一覧表を含む)
本規則案は、一定の条件を満たす場合、1940年投資会社法に基づく特定の定義条件からの免責を提供しています。当該条件は、SPACがその資産を用いて行うことができる投資の種類、検討中の取引の種類、およびde-SPAC取引を完了するまでの期間について言及しています。
De-SPAC取引
本規則案では、SPACによるIPOの要求事項と同様に、de-SPAC取引に関しても、Form S-4またはForm F-4またはSchedule 14Aといった提出書類により、SPACスポンサーに関する追加情報、潜在的な希薄化の各要因に対する感応度の一覧表示、利益相反といった開示を要求することになります。また、SPACに対し、SPACとの関連のない有価証券保有者にとってde-SPAC取引および関連するあらゆる資金調達取引の内容が公正または不公正であると合理的に考えているか、また、取引の公平性に関して外部者が報告書を作成したかどうかについての声明を要求することになります。さらに、本規則案は、株主に提供すべき情報について、最低限の周知期間(通常は20日間)を規定しています。
本規則案では以下についても提案されています。
  • 予測の全体的な信頼性への懸念に対応するために、予測の使用に関するガイダンスを提供する(詳細については下記を参照)。
  • 非公開事業会社をForm S-4およびForm F-4における「共同登録企業」とみなすことにより、非公開事業会社および署名者(主要な執行役員、主要な財務担当役員、経理部長または最高会計責任者および大半の取締役)に証券法第11条に基づく責任を負担させる。
  • SPACのIPOの引受会社がde-SPAC取引の促進を行っている場合には、当該IPOの引受会社をde-SPAC取引の引受会社とみなす。
  • de-SPAC取引を、証券法の目的上、SPACの株主に対する証券の売却とみなす。
  • 非公開事業会社に対する財務諸表の要求事項を明確にし、変更する(詳細については下記を参照)。
予測の使用
本規則案では、de-SPAC取引における予測の作成に関し、予測の作成者、予測作成の基礎、すべての重要な仮定などの追加的な開示を要求しています。また、「ブランク・チェック・カンパニー(blank check company)」の定義を修正し、伝統的IPOと同様にSPAC(de-SPAC取引における非公開事業会社の予測を含む)も、1995年私的証券訴訟改革法(the Private Securities Litigation Reform Act of 1995)に基づく将来予測的な情報に関する免責条項を適用できないようにします。
さらに、予測財務情報に関するRegulation S-K Item10(b)も以下のように修正されることになります。
  • 過去の財務数値や事業の実績に基づかない予測(例えば、事業を営んでいない非公開事業会社)は、過去の財務数値や事業の実績に基づく予測と明確に区別する必要がある。
  • 過去の情報に基づく予測は、一般的に、その文書内において過去の情報が同等かそれ以上に目立つように表示されていない場合には誤解を招くものとなる。
  • 予測に記載される非GAAP指標には、当該非GAAP指標の明確な定義または説明、当該非GAAP指標と最も密接に関連するGAAP指標の説明、GAAP指標の代わりに非GAAP指標を使用した理由の説明などを含める。
財務諸表への影響
非公開事業会社の財務諸表についての要求事項は、伝統的なIPOに必要とされる要求事項により近い内容となります。現行実務からの変更点として、本規則案では、SPACが最初のForm 10-Kを提出したかどうかにかかわらず、非公開事業会社が新興成長企業(emerging growth company、EGC)として適格であり、かつ、SPACがEGCとして適格である場合には、非公開事業会社に対して2年分の監査済年次財務諸表のみを要求することになります。また、非公開事業会社が小規模報告企業(smaller reporting companies、SRC)として適格である場合の財務諸表の日付(age)、およびde-SPAC取引より前の期間またはde-SPAC取引が予定されている期間における非公開事業会社による事業買収に関連する財務諸表の要求事項を取り上げています。さらに、本規則案では、一定の条件を満たせば、de-SPAC取引の成立後の提出書類からSPACの財務諸表を除外できるようになります。
また、本規則案は、de-SPAC取引における非公開事業会社の財務諸表はPCAOB基準に準拠して監査する必要があるとの既存のSECスタッフガイダンスも成文化しています。
SRCの判定
de-SPAC取引の成立後、新規則案により、結合後企業のSRCのステータスの再判定日が前倒しされ、その結果として、de-SPAC取引の成立後の最初の定期報告書(Form 10-KまたはForm 10-Q)における、SRCのための段階的な開示要求やその他の便宜的取扱いの利用可能性に影響が及ぶことになります。
なぜ重要か
本規則案は、SPAC取引への参加に関する利害関係者の意思決定、および、投資家の意思決定のためにより多くの情報を提供しながら公開市場にアクセスする方法についての非公開事業会社の検討に影響を与える可能性があります。本規則案は350頁を超えるものであり、特定の規則に関して175超の質問事項があります。SECのコミッショナーは本規則案に対するフィードバックとコメントを奨励しています。また、注目すべき点として、この提案では移行日や適用期日が明示的に記載されていないことが挙げられます。
次のステップ
コメント募集期限は、本規則案の連邦官報掲載から30日後または2022年5月31日のいずれか遅い方です。SECは、寄せられたフィードバックを検討し、2022年末までに最終規則を公表する可能性があります。最終化される前であっても、近年、予測や潜在的な利益相反に関する開示はSECスタッフによるコメントの多い領域であることから、SPACによるIPOまたはde-SPAC取引に関与する企業は本規則案で取り上げられている追加的な開示の検討を行うことが望まれます。
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