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要点
欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、12の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の草案を欧州委員会(EC)に提出しました。
  • 本草案は、2023年6月に予定されているECによる採択後に最終基準となります。
  • 公開協議中に公開草案に対して表明された懸念により大幅な変更が行われました。
  • ESRS草案は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づきサステナビリティ報告の新しい要求事項を規定するもので、サステナビリティ事項(環境、社会、ガバナンス)全般を取り扱っています。今後、さらなるESRSが策定される予定です。
  • CSRDの適用範囲に含まれる企業のうち、最も早い企業は2024年度からESRSを適用しなければなりません。
  • 詳細は、以下をご一読ください。

論点
ESRSは、2022年11月10日に欧州議会によって採択されたCSRD案に基づいて、欧州における企業サステナビリティ報告の要求事項の内容を定めるものです。EFRAGは、技術的助言として、ECに提出するESRS草案の作成を委任されていました。2022年夏に13のESRSの公開草案に対する公開協議を行い、750件を超えるコメントレター(PwCのコメントレターはこちら)を受けとった後、EFRAGは、2022年11月22日にESRS草案という形式で技術的助言をECに提出しました。公開協議期間を経て、基準の数を13から12に減らすことを含め、いくつかの変更が行われました。
12のESRS草案は、CSRDの下で策定される報告基準の最初の一組に相当するものであり、以下の内容を含んでいます。
  • 全てのサステナビリティ項目に適用される2つの横断的な基準(全般的な要求事項に関するESRS 1案および全般的な開示に関するESRS 2案)
  • 以下を含むトピック別の基準
    • 環境(気候変動、汚染、水と海洋資源、生物多様性とエコシステム、資源の使用と循環型経済)
    • 社会(自社の従業員、バリューチェーン内の従業員、影響を受けるコミュニティ、消費者と最終消費者)
    • ガバナンス(企業行動)
影響
新しいCSRDおよびESRSの開示要求の目標は、サステナビリティ報告を財務報告と同等にすることです。ESRSの目的は、企業のサステナビリティに関連する影響、リスクおよび機会について、価値ある洞察を多くの利害関係者の利益のために提供することです。ESRSに従った報告の課題は、適切なデータを適時に入手するためのプロセスを導入する企業の能力になります。
公開協議のために公表されたESRS公開草案からの変更点
EFRAGは、公開草案に対するコメントを受けて、当初の提案に対して以下に示したいくつかの広範囲にわたる変更を行いました。
  • 構造の見直しおよび国際的な相互運用性の強化
    • ESRS G1案を削除し、G1案の主要な開示要求事項をESRS 2案の中に組み入れたことにより、基準の数が13から12に減った。
    • 国際的な相互運用性を強化するため、3本の報告の柱(戦略、実施、実績測定)による従前の構造アプローチを、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の構造に類似する4本の柱(ガバナンス、戦略、影響およびリスクおよび機会の管理、指標および目標)のアプローチに置き換える。
    • 新しい構造アプローチに従い、トピック別基準は「指標および目標」の柱の下で目標の開示を要求する。
    • EFRAGは、財務マテリアリティやバリューチェーンなど、横断的な基準および気候基準における主要な概念、定義および開示要求事項は、ISSBの提案と整合していると強調している(ただし、CSRD又は他のEU規制で要求される場合には変更や追加を加えている)。EFRAGは、EFRAGの方針はESRSに準拠する報告書が、ISSB基準のすべての要求事項をも満たすことであると述べてきた。相互運用性のレベルに関する詳細は、最初の一組のESRS草案の付録Vに記載されている。EFRAGは、国際財務報告基準(IFRS)のサステナビリティ基準の最終化を待って、さらに詳細なマッピングに取り組む予定である。
    • 各基準の「適用要求事項」のセクションには現在、説明、事例、算定基礎、方法論、概念の定義の要素のみが含まれている。
  • 重要性(マテリアリティ)アプローチの見直し
    • 企業が推定を反証するために合理的かつ裏付け可能な証拠を有している場合を除き、すべての開示要求には重要性があると推定される「反証可能な推定」が削除されている。
    • 重要性(マテリアリティ)の評価は依然として行う必要はあるが、必須の開示項目の導入により評価の範囲は縮小されている。
    • 重要性(マテリアリティ)評価の結果にかかわらず報告すべき必須の開示項目には、基準全体(ESRS 2案およびESRS E1案)の開示、関連するEU法規(すなわち、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR))から生じる広範囲の開示およびその他の特定の開示が含まれる。
    • 残りの開示要求事項に関して、企業の重要性(マテリアリティ)評価に基づきサステナビリティ事項に重要性がある場合に報告すべき情報を識別するための特定の規定が設けられている。
    • ESRS 1案の付録Fには、以下のように、報告すべき情報を特定するのに必要な評価の説明が記載されている。
  • コンテンツの簡素化
開示要求とそのデータポイントが簡素化された(冗長性の排除、定義の精緻化、公開草案の中での開示要求事項とサブトピックの統合または再編成)。EFRAGによると、開示要求事項の数は約40%、データポイントの数は約50%削減されている。
  • 指標
いくつかの新しい指標(例えば、貨幣価値に換算したGHG総排出量、従業員の離職率、経営陣のジェンダー別分布、従業員の年齢分布)が追加された一方で、その他の指標(例えば、回避された排出量、研修費用、障害者である労働者のジェンダー別内訳、反競争行為)は削除または任意となった。
  • 段階的導入規定
段階的取扱いが、バリューチェーン情報、環境に関連した影響、リスクおよび機会の潜在的な財務上の影響、ならびにESRS S1案の特定の要求事項(非雇用労働者に対する適切な賃金や社会的保護など)に関連するさまざまな開示要求事項およびデータポイントに対して導入される(ESRS 1案の付録Dに一覧表が記載されている)。
適用日
ESRSは、CSRDの適用範囲に含まれる企業に適用されます。CSRD案で定義される初度適用の時期はさまざまですが、最初の適用は2024年度(2025年報告)からとなります。
報告書の記載場所
サステナビリティに関する報告書は、経営者報告書における個別セクションとして記載されます。
監査の必要性
CSRDでは、サステナビリティに関する報告書に保証を提供する義務が導入されています。当初は限定的な保証の提供が義務付けられますが、数年後には合理的な保証への移行が予定されています。
次のステップ
ESRS草案は今後、ECによって評価されることになります。ECは、欧州証券市場局(ESMA)やサステナブルファイナンスに関する加盟国の専門家グループなど、複数のEU当局および専門家グループと協議し、意見を求める予定です。2023年3月または4月に4週間の協議期間を設けた公開協議が実施される可能性もあります。委任法令(Delegated Act)という形式によるESRSの採択は、2023年6月30日までに行われる予定であり、その後、欧州議会および欧州理事会による審議期間が続きます。異議がなければ、ESRSは、CSRDの適用範囲に含まれる全ての企業に直接適用されることになります。
草案の基準は、セクターに関係なく適用される基準であることに留意しなければなりません。次の一組の基準では、40の追加のセクター別(すなわち、業種別)基準が、今後数年間にわたって段階的に公表される予定です。
さらに、CSRDは、以下の一組の基準の策定を想定しています。
  • 中小企業(SME)向けのESRS
  • EU域外企業向けのESRS
上記に加えて、EFRAGサステナビリティ報告審議会(SRB)は、最初の一組の基準で取り上げられたトピックに関して、今後数か月の間にさらに調査が必要な項目を特定しました。
  • インパクトマテリアリティの閾値(OECDガイドライン、国連指導原則報告フレームワークおよびグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)スタンダードで使用されている指標である「最も重大な(most significant)」影響への言及を含む)
  • 金融市場参加者が、将来のESRSセクター別基準の発効日まで下流バリューチェーンを含めることを延期することを可能にする段階的導入規定
  • 従業員の民族性を開示するデータポイントの追加
  • 機会から生じる財務上の影響に関する定量的開示のデータの入手可能性およびデータの質
詳細情報
EUおよび世界のサステナビリティ報告に関する最新の要求事項については、以下で詳細な情報が入手可能です。
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