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論点
2022年10月公表の国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」(WEO)では、インフレの現在の水準および予測される水準に関する更新されたデータが提供されています。2022年4月および10月に提供されたアップデートからの最も大きな変化は、以下に関連するものです。
  • エチオピア(2022年に超インフレ経済となる)
  • スリランカ(2022年は超インフレ経済ではないものの、引き続き動向を注視する必要がある)
誰にどのような影響があるか
超インフレ経済の国
IMFの「世界経済見通し」によれば、機能通貨が以下のいずれかの国の通貨である企業は、2022年12月31日時点においてIAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」を適用する必要があることが示されています。
  • アルゼンチン
  • エチオピア(2022年、新規)
  • イラン・イスラム共和国
  • レバノン1
  • 南スーダン共和国
  • スーダン
  • スリナム
  • トルコ(2022年、新規)
  • ベネズエラ
  • イエメン
  • ジンバブエ
2021年に超インフレ経済であったすべての国は、2022年も引き続き超インフレ経済でした。南スーダン共和国を例外として、これらの経済の3年間の予想累積インフレ率は、2023年中も100%を超えると見込まれています。
さらに、トルコは2022年6月30日から、エチオピアは2022年12月31日から、超インフレ経済であるとみなされました。
南スーダン共和国
2022年10月公表のIMFの「世界経済見通し」では、3年間の累積インフレ率は引き続き、2022年12月31日時点において100%を超えると見込まれていますが、2023年には100%を大幅に下回ると見込まれています。南スーダン共和国は、2022年も引き続き超インフレ経済のままです。しかし、機能通貨が南スーダン共和国の通貨である企業は、2023年に超インフレ経済が続くかどうかを確認するため、2023年のインフレの動向を注視する必要があります。
トルコ
IMFの「世界経済見通し」およびトルコ統計局(TURKSTAT)によれば、3年間の予想累積インフレ率が2022年6月30日時点で100%を超え、2023年には200%超まで上昇する見込みであることが確認されています。機能通貨がトルコの通貨である企業は2022年6月30日以後に終了する期間に、経済が常に超インフレ経済であったかのようにIAS第29号を適用する必要があります。
エチオピア
IMFの「世界経済見通し」では、3年間の累積インフレ率が2022年12月31日までに100%となり、2023年末までに126%にまで上昇する見込みであることが確認されています。現地の実績データ(中央統計局2が公表)によると、2022年9月30日時点で3年間の累積インフレ率は109%となっています。2022年中の高水準のインフレおよび3年間の累積インフレ率が2022年に100%を超えていることを考慮すると、機能通貨がエチオピアの通貨である企業は、2022年12月31日以後に終了する期間にIAS第29号を適用する必要があります。
2023年において動向を注視すべき国
以下の経済は超インフレ経済ではありませんが、2023年において動向を注視する必要があります。
  • アンゴラ
  • ガーナ(2022年、新規)
  • ハイチ
  • モルドバ(2022年、新規)
  • シエラレオネ(2022年、新規)
  • スリランカ(2022年、新規)
IMFのデータでは、スリランカを除くすべての国について、これらの経済の3年間の累積インフレ率は当期において49%から86%の間であることが示されています。この予測では、これらの経済のいずれについても、3年間の累積インフレ率は2023年に90%を超えないことが示されています。
スリランカ
IMFのデータでは、3年間の累積インフレ率が2022年は100%を下回る見込みであることが示されています。スリランカ中央銀行が公表した現地のデータでは、コロンボの消費者物価指数(CPI)に関する3年間の累積インフレ率は85.68%、全国消費者物価指数に関する3年間の累積インフレ率は94.77%(いずれも2022年10月31日現在)であり、2022年末までに100%を超えないことが示されています。また、この現地のデータでは、2022年7月以降、インフレ率は下落傾向にあり、2022年10月にはコロンボ消費者物価指数がマイナスとなっていることも示されています。
これらの予測および傾向、ならびにIAS第29号の定性的要素の検討に基づくと、スリランカは2022年は超インフレ経済であるとみなされません。インフレ率が依然として高いことを考慮すると、機能通貨がスリランカの通貨である企業は、2023年におけるインフレの動向を注視する必要があります。
超インフレ経済になる可能性のあるその他の国(信頼性のある情報の欠如)
以下の国については一貫した信頼性のあるインフレのデータが入手できない状況となっています。
  • アフガニスタン
  • シリア・アラブ共和国
  • ウクライナ
アフガニスタン
2021年8月以降、アフガニスタンは深刻な経済危機に陥っています。2022年10月公表のIMFの「世界経済見通し」では、2021年以降の予測が示されていません。アフガニスタンに関する一貫した信頼性のあるインフレのデータは2022年12月31日時点で入手することはできません。機能通貨がアフガニスタンの通貨である企業は、2022年12月31日時点で入手可能な情報を検討し、そして、IAS第29号を適用すべきかどうかを検討しなければなりません。
シリア・アラブ共和国
シリア・アラブ共和国に関する一貫した信頼性のあるインフレデータを入手することはできません。しかし、欧州連合(EU)および国際連合(UN)の貿易制裁は依然として続いています。一部の現地データを含む入手可能な情報によると、シリアは2022年において超インフレ経済である可能性があることが示されています。機能通貨がシリア・アラブ共和国の通貨である企業は、IAS第29号を適用すべきかどうかを検討するために、2022年12月31日時点で入手可能な情報を検討しなければなりません。
ウクライナ
2022年10月公表のIMFの「世界経済見通し」では、不確実性の水準が異常に高いことを理由に、2023年から2027年までのインフレ水準の予測が省略されています。現地データはウクライナ国立銀行3 が公表しています。機能通貨がウクライナの通貨である企業は、IAS第29号を適用すべきかどうかを検討するために、報告日現在で入手可能な情報を検討しなければなりません。
適用日
IAS第29号第4項(和訳はこちら)は、同一の超インフレ経済国の通貨で報告するすべての企業が、同一の日付からIAS第29号を適用することが望ましいと述べています。また、経済が常に超インフレ経済であったかのようにIAS第29号を適用する必要があります。
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1 現在IMFはインフレ予測を公表していませんが、2022年8月における最新の現地の実績データ(レバノン中央統計局が公表、www.cas.gov.lb)によると、2022年12月31日時点の3年間の累積インフレ率は100%を大きく上回ったままとなることが見込まれています。
2 中央統計局、www.statsethiopia.gov.et
3 ウクライナ国立銀行、https://bank.gov.ua/
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