Expand
⇒原文(英語)はこちら

要点
  • 2022年12月期末にIAS第36号に基づく減損テストを準備または検討している場合、WACCを用いた割引率算定のためのインプットを慎重に検討することは特に重要になります。
  • 世界経済の不確実性という現在の状況において、WACC算定のためのいくつかの主要なインプットが変化している可能性があります。
  • 短期であることを根拠に現在の経済動向をWACCの算定から容易に無視すべきではありません。

論点
加重平均資本コスト(WACC)は、多くの場合において、IAS第36号に従った資金生成単位(CGU)内の資産への減損テストに使用する割引率を決定する際に、重要な評価の基準点として使用されています。多くの企業のWACCは公開されており入手することができますが、それらが特にエクイティ・マーケット・リスク・プレミアムといった判断を伴う特定の仮定に依存していることは注目に値します。企業のWACCは、リスク・フリー・レートなどの公開されているいくつかのインプットに依存することになります。WACCは通常、名目上の(すなわち、インフレーションの影響を含む)数値です。
WACCは、例えば長期のインフレ率やリスク・フリー・レートなど、将来の長期的な仮定に関する市場の現在の予想に依存しています。WACCにおけるこのような長期的な仮定は、多くの異なる経済要因の影響を受け、その影響と程度は、国ごとでも、産業間でも、異なるものとなるでしょう。
多くの国がインフレ率や金利の上昇を経験している世界経済の不確実性という現在の状況において、この上昇が将来の長期的な仮定に関する市場の現在の予想の変化を表すのか、それとも、市場の短期的なボラティリティから生じる変則性を表すのかという疑問が生じます。
IAS第36号第16項は、「短期の利子率の上昇は、長期の残存耐用年数を有する資産に用いられる割引率に重要性がある影響は与えないであろう。」と述べています。したがって、観察可能な短期の利子率の上昇が短期間に限られたものか、それとも、長期の利子率(負債コスト)およびリスク・フリー・レートに関する市場の現在の予想も同時に変化しているのかを理解する必要があります。
何がWACC算定のための観察可能なインプットの上昇を牽引しているか
多くの国で、長期リスク・フリー・レートに関する市場の現在の予想が顕著に上昇していることが観察されています。WACCの算定において、リスク・フリー・レートは、変化した、あるいは変化している唯一の変数とは言えませんが、多くの場合において、過去1年間で最大の相対的変化を示している変数と言えるでしょう。
以下の表は、20年国債(多くの場合、長期リスク・フリー・レートを表すと仮定される)のイールドの抜粋です。
国名
国債
2020年11月30日
2021年11月29日
2022年11月28日
オーストラリア
20年
1.67%
2.19%
3.97%
カナダ
20年
1.00%
1.77%
3.09%
ドイツ
20年
-0.33%
-0.29%
1.93%
英国
20年
0.86%
0.98%
3.46%
米国
20年
1.48%
1.82%
3.97%
上記の数値は、これらの国々で長期リスク・フリー・レートに関する市場の現在の予想に変化が生じていることを示しています。この長期リスク・フリー・レートの上昇は、WACCを上昇させますが、その変化は必ずしも1対1ではありません。つまり、リスク・フリー・レートが1%上昇したからといって、WACCが必ずしも1%変化するとは限りません。
その他の国で同様の傾向が見られる場合も、同様にWACCの上昇をもたらす可能性が高いと言えます。
WACCには、他にも、負債比率の目標水準やエクイティ・リスク・プレミアムなど、現在の経済状況の影響を受けている可能性のある構成要素があります。したがって、WACCのすべての構成要素を検討することが重要です。
どのような影響を受けるか
本資料で概略されている市場動向を考慮すると、2022年12月期末にIAS第36号の減損テストを準備または検討している場合、WACCを用いた割引率算定のためのインプットを注意深く検討することは特に重要です。短期であることを根拠に現在の経済動向をWACCの算定から容易に無視すべきではありません。
注意事項
本資料は、2022年12月期末決算に適用できる観察可能な市場動向のハイレベルのサマリーを提供しています。必要な場合には、企業に固有の事実について専門家に助言を求めることを否定するものではありません。
割引率とキャッシュ・フロー予測との整合性は、IAS第36号の減損の算定における基礎です。この概念およびその他の関連する概念については、PwCのPwC IFRSマニュアルの24章(和訳はこちら)およびIn depth INT2022-12「物価および金利の上昇期におけるIFRSの適用の手引き」(和訳はこちら)において、さらに詳しく解説しています。
_______________________________________________________________
* WACCは、株主資本コスト、負債コストおよび負債比率に関する仮定で構成されます。リスク・フリー・レートは、株主資本コストを決定するためによく用いられる資本資産評価モデル(CAPM)の構成要素です。またリスク・フリー・レートは、負債コストの基礎にもなります。
Expand Expand
Resize
Tools
Rcl

Welcome to Viewpoint, the new platform that replaces Inform. Once you have viewed this piece of content, to ensure you can access the content most relevant to you, please confirm your territory.

signin option menu option suggested option contentmouse option displaycontent option contentpage option relatedlink option prevandafter option trending option searchicon option search option feedback option end slide