Expand
⇒原文(英語)はこちら

要点
欧州委員会は、フィードバックを求めて「最終間近(near final)」の12の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を公表しました。
  • 「最終間近」の12のESRS草案は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づくサステナビリティ報告の新たな要求事項を定めるもので、サステナビリティ事項(環境、社会、ガバナンス)全般を取り扱っています。
  • 改訂された草案には、EFRAGが作成した2022年11月版と比較して、重大な変更が含まれています。
  • 4週間のフィードバック期間があり、期限は2023年7月7日です。関係者は回答を提出することが奨励されます。
  • 最終基準は2023年7月末、遅くとも2023年8月末までの法制化を目指しています。
  • CSRDの範囲に含まれる企業のうち最初にESRSを適用する企業は、2024年1月1日以後開始する期間からESRSを適用しなければなりません。
  • 詳細は、以下をご一読ください。

論点
EUにおけるサステナビリティ報告の新時代を告げる企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に従い、企業は、間もなく、環境、社会、ガバナンスに関する幅広い事項の報告が求められることになります。ESRSは、CSRDに基づき、サステナビリティ報告の詳細な要求事項を定めるものです。
現在、フィードバックのために公表されている包括法案には、以下が含まれます。
  1. 委任法の草案(これを通じてESRSはEUで法制化される)
  2. 付録I ESRS草案の改訂
  3. 付録II 略語のリストおよび用語集
12のESRS草案には、以下が含まれます。
  • すべてのサステナビリティ事項に適用される2つの横断的な基準
  • 環境、社会、ガバナンス全般を取り扱う10のトピック別の基準
上記は、2022年11月に欧州財務報告アドバイザリーグループ(EFRAG)が提出した12のESRS草案の更新版です。
回答期限は2023年7月7日です。今回がフィードバックのために基準が利用可能となる最後の機会であることから、関係者は最終基準の形成に向けて回答を提出することが奨励されます。
どのような影響があるか
CSRDおよびESRSの開示要求は、一定の期間をかけてサステナビリティ報告を財務報告と同等のものとすることを目的としています。ESRSの目的は、企業のサステナビリティに関連する影響(impacts)、リスクおよび機会について、目的適合性、比較可能性および信頼性の高い情報を多くの関係者に提供することです。最初の企業は2024年度からESRSを適用して報告を行わなければならず、ESRS適用までの時間的な猶予がないため、企業は、新たな報告上の要求事項の遵守に必要な新しいシステムの開発、データ収集プロセスや統制の構築に着手する必要があります。
EFRAGによる2022年11月の提出以降、ESRS草案はどのように変更されたか
欧州委員会は、EFRAGによって提出されたESRS草案が、CSRDに準拠し、欧州グリーンディールの文脈でEUの政策目標を実現するかどうかを評価してきました。その結果、ガバナンス、戦略、影響・リスク・機会の管理、指標と目標といった報告構造や、環境、社会、ガバナンスのトピックを幅広く扱う適用範囲など、全体的な構成についての変更は行われませんでした。
しかし、欧州委員会は、報告の負担を軽減し、基準の初度適用を容易にすることを目的として、いくつかの変更を行いました。
  • 重要性(マテリアリティ)の評価
    ESRS 2「全般的な開示」を除き、すべての基準は重要性(マテリアリティ)の評価対象となります。企業は、重要性(マテリアリティ)の評価に基づいて、どの情報(基準、開示要求、データポイント)に重要性があるかを決定しなければなりません。これまでのEFRAG草案では、ESRS E1における気候関連のすべての開示のように、重要性(マテリアリティ)の評価とは関係なく開示が義務付けられているものがありました。今後は重要性がなければこれらの開示は要求されません。ESRS 2の「全般的な開示」のみが強制されます。
  • 段階的な規定の追加
    欧州委員会は、EFRAGが提案する規定の他に追加の段階的な規定を導入し、さらに予想される財務上の影響に関する報告の段階的な規定を簡素化しました。
    • 最初の報告年度は、すべての気候およびその他の環境関連の影響、リスク、機会から予想される財務上の影響に関する報告を省略することが認められます。
    • 最初の3年間の報告では、予想される財務上の影響に関する開示を定性的な開示に限定することができます(ただし、限定的な例外があり、また、気候関連の財務上の影響については、定量的な開示の作成が実務上不可能な場合に限られます)。
    • 最初の報告年度は、ESRS S1「自社の従業員」に含まれる、社会的保護、障害のある従業員、安全衛生およびワーク・ライフ・バランスに関する選定された開示要求やデータポイントを省略できます。
    • 従業員が750人未満の企業およびグループには、特別な救済措置が導入されています。
      • 最初の報告年度は、ESRS S1「自社の従業員」の開示要求とスコープ3のGHG排出(ESRS E1「気候変動」のデータポイント)のすべてを省略できます。
      • 最初の2年間は、生物多様性と生態系(ESRS E4)、バリューチェーンにおける労働者(ESRS S2)、影響を受けるコミュニティ(ESRS S3)、消費者と最終利用者(ESRS S4)に関する報告を省略できます。
ただし、上記のESRSでカバーされているサステナビリティ事項は、依然として重要性(マテリアリティ)の評価に含める必要があります。さらに、期限付きの目標、方針、行動の簡単な説明と、関連する指標の開示も要求されます。
  • 任意開示
    一部の開示は任意となりました。例えば、生物多様性と生態系(ESRS E4)の移行計画やESRS S1における非雇用労働者に関する情報(例えば、適切な賃金、社会的保護、衛生安全に関するものなど)は任意開示です。特定のサステナビリティのトピックに重要性がないと分類した場合の理由の説明も任意開示となりました。
  • 特定の開示における柔軟性
    一例として、環境関連の影響、リスク、機会から生じる「潜在的な財務上の影響」という文言が「予想される財務上の影響」に変更されたことが挙げられます。さらに、ESRS S1では、従業員の主要な特性の開示に関して、国別の開示の閾値を「従業員50人以上の国」から「全従業員の少なくとも10%を占める50人以上の国」に修正し、柔軟性を持たせています。汚職・収賄、内部告発者の保護に関する情報の開示要求(ESRS G1)は、自己負罪に対する保護との矛盾を避けるために文言を調整しています。
グローバルな基準設定の取組みとの相互運用可能性に関して、欧州委員会は、ESRSとの高度な相互運用可能性を確保するために、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)やグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)と緊密に連携していると述べており、その点を踏まえてESRS草案をさらに修正したとしています。ISSBによる最終基準の公表(2023年6月26日となる可能性が高い)の後、相互運用可能性の詳細な分析を行い、報告の重複がどの程度回避されるかを確認する必要があります。
適用日
ESRSは、CSRDの範囲に含まれるすべての企業に適用されます。CSRDの範囲に含まれる最初の企業は、2024年度から、すなわち、2024年1月1日以後開始する期間(2025年の報告)にESRSを適用しなければなりません。
情報の記載場所と監査の必要性
ESRSに従って作成されるサステナビリティ報告は、マネジメントレポートにおける個別のセクションに記載されます。CSRDは、報告情報の信頼性を高めるため、ESRSへの準拠を含むサステナビリティ情報の保証義務が導入されています。当初は限定的な保証が要求されますが、数年後には合理的な保証への移行が予定されています。
次のステップ
「最終間近」のESRSのフィードバック期間は2023年7月7日に終了します。欧州委員会のウェブサイトからフィードバック用テンプレートを使用して回答を送付できます(フリー登録が必要)。
最終ESRSは、欧州委員会による委任法の採択を通じてEU法として可決され、その後、ESRSは、CSRDの適用範囲に含まれるすべての企業に直接適用されます。これは、2023年7月末か8月初旬になると予想されます。CSRDに従い、ESRSを2024年1月1日以後開始する事業年度に適用するためには、委任法の採択が2023年8月末までに行われる必要があります。採択後、欧州議会およびEU理事会による2カ月間(4カ月まで延長可能)の審議期間が続きます。異議がなければ、ESRSは、2024年1月1日から適用されます。異議が提起された場合、基準の変更はできませんが、ESRSの第1セットで行ったプロセスを最初から開始する必要があります。
提供される基準は、セクターに関係なく適用される基準です。追加のセクター別(すなわち、業種に焦点を当てた)基準、中小企業(SME)向けのESRS、およびEU域外企業に特化したESRSが、今後数年間にわたって段階的に公表される予定です。並行して、EFRAGは、セクターに関係しない基準の適用を支援するガイダンスの開発にも取り組んでいます。このガイダンスは、重要性(マテリアリティ)の評価とバリューチェーン情報の記載を扱うことが見込まれます。EFRAGは、暫定的な計画として2023年夏にガイダンスを公表する予定であると述べています。さらに、欧州委員会は、基準の公式の解釈を提供するための解釈の仕組みを整備すると発表しています。
詳細情報
EUにおけるサステナビリティ報告の最新の取組みに関するより詳細な情報については、以下をご参照ください。
Expand Expand
Resize
Tools
Rcl

Welcome to Viewpoint, the new platform that replaces Inform. Once you have viewed this piece of content, to ensure you can access the content most relevant to you, please confirm your territory.

signin option menu option suggested option contentmouse option displaycontent option contentpage option relatedlink option prevandafter option trending option searchicon option search option feedback option end slide