Expand
⇒原文(英語)はこちら

要点
国際会計基準審議会(IASB)は、IFRS第9号「金融商品」およびIFRS第7号「金融商品:開示」に対する狭い範囲の修正を提案する公開草案を公表しました。これは、再生可能電力契約の締結による影響を財務諸表により良く反映させるためのものです。

論点
風力や太陽光などの再生可能エネルギー源による電力契約は、多くの企業のサステナビリティに関するコミットメントにおいて重要な役割を果たしています。
これらの契約は、しばしば長期的な「電力購入契約」(「PPA」)として組成されます。あるタイプのPPAでは、再生可能エネルギー源によって発電された電力の一定割合を、単位当たりの固定価格で買手に供給します(「フィジカルPPA」)。別のタイプのPPAには、再生可能エネルギーに係る発電量の割合に関連する、固定価格のキャッシュ・フローと変動価格のキャッシュ・フローとの差額を純額決済するスワップが含まれています(「バーチャルPPA」または「VPPA」)。これらの契約では、多くの場合、企業はグリーン電力証書(「REC」)も購入することになります。
従来のエネルギー源と異なり、再生可能エネルギーによる発電は、自然に依存するものであるため、発電の時期と量が予測不可能です。これは、上記の契約の場合、売手の発電と発電時における買手のニーズとの間に、直接的な関連性がないことを意味します。このことは、実務上、これらの契約の会計処理について、特に、フィジカルPPAに関するIFRS第9号の「自己使用」の例外およびヘッジ会計に関する要件に関する実務上の課題を生じさせます。
どのような影響があるか
このような契約が普及していることを踏まえ、IASBは、IFRS第9号の自己使用の要求事項とヘッジ会計の要求事項、およびIFRS第7号の新たな開示要求事項について、狭い範囲の修正を提案しています。本修正は、発電源が自然に依存するものであるため特定の時期または特定の数量での供給を保証できない再生可能エネルギーによる電力契約で、「pay-as-produced(生産量買取)」ベースで行われるものにのみ適用されます。
自己使用の要求事項
IASBは、再生可能電力契約が自己使用の例外の要件を満たすかどうかを評価する際に、買手が以下について考慮することを明確化する要求事項を提案しています。
  • 契約の目的、設計および構造(これには残存契約期間において引渡しが見込まれる電力量を含む)。
  • 未使用電力の過去および将来予想される売却の理由、また、そのような売却が企業の予想される購入または使用の必要性に従っているかどうか。
本修正案を適用するならば、以下に該当する未使用電力の売却は自己使用の例外に違反しないことになります。
  • 引き渡された電力と引渡時点の買手の需要の間に不一致が生じたことにより企業が晒される量的リスクを理由として売却が行われる。
  • 電力が売却される市場の設計と運営により、企業は売却の時期または価格を決定する実際の能力を有さない。
  • 企業は、売却後の合理的な期間内(例えば、1カ月以内)に、少なくとも同量の電力購入を予定している。
ヘッジ会計の要求事項
IFRS第9号はキャッシュ・フロー・ヘッジにおけるヘッジ対象に「発生する可能性が非常に高い」ことを要求しているため、企業は、再生可能電力契約にヘッジ会計を適用することが困難となっています。
IASBは、電力の予定売却または予定購入にかかるキャッシュ・フロー・ヘッジにおいて、再生可能電力契約をヘッジ手段に指定する場合の要求事項を提案しています。本提案を適用するならば、以下の場合かつ以下の場合に限り、企業は、変動名目量をヘッジ対象に指定することが認められます。
a.ヘッジ対象が、ヘッジ手段に関連する変動電力量として特定される。
b.a.に基づき指定された予測電力取引の変動量は、発生する可能性が非常に高い将来の電力取引の量を超えない。
しかし、企業が上記 a.に従って再生可能エネルギー電力の売却をヘッジ対象に指定する場合、再生可能電力に係る契約で参照される、ヘッジ手段が発電設備で生産される再生可能エネルギーの将来の売却総量の一定割合に関連している場合には、このような予定売却が発生する可能性が非常に高いことは要求されません。
企業は、量に関する仮定については、ヘッジ手段の測定に使用した仮定と同じ仮定を用いてヘッジ対象を測定することが要求されます。ヘッジ対象の測定に使用される他の全ての仮定およびインプットは、ヘッジ対象のみを反映していなければなりません。
開示の要求事項
IASBは、再生可能電力契約について、契約条件および特定の定量的情報の開示を企業に要求することを提案しています。定量的情報には、当該期間の損益計算書において認識された金額に関連する情報が含まれます。また、純損益を通じて公正価値で測定されない契約について、契約の公正価値、または、契約の残存期間にわたり(買手にとっては)予定購入量または(売手にとっては)予定売却量の開示が要求されます。
経過措置
IASBは、以下を提案しています。
  • 「自己使用」の修正は遡及適用されるが、比較情報の修正再表示は要求されない。
  • ヘッジ会計の修正は、新たなヘッジ会計には将来に向けて適用され、既存のヘッジ関係には特定の移行に関する要求事項がある。
次のステップ
本公開草案に対するコメントの提出期限は、2024年8月7日です。IASBは、2024年末までに本修正を最終化する見込みです。発効日は最終化の時点で設定され、早期適用が選択可能となる予定です(エンドースメント・プロセスを経ることが条件とされています)。
Expand Expand
Resize
Tools
Rcl

Welcome to Viewpoint, the new platform that replaces Inform. Once you have viewed this piece of content, to ensure you can access the content most relevant to you, please confirm your territory.

signin option menu option suggested option contentmouse option displaycontent option contentpage option relatedlink option prevandafter option trending option searchicon option search option feedback option end slide