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日本基準トピックス 第453号
主旨
  • 2022年11月8日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」という)は、第490回企業会計基準委員会(2022年11月7日開催)の議事概要別紙として、「暗号資産の発行者が発行時に自己に割り当てた暗号資産の会計上の取扱いについて」(以下、「本議事概要」という)を公表しました。
  • 本議事概要は、暗号資産の発行者が発行時に自己に割り当てた暗号資産のうち、発行による対価を受領しておらず自己で完結していると考えられるものは、第三者との取引が生じるまでは、会計上、時価では評価されないというASBJの考え方を示しています。
  • 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。
経緯
  • 2018年3月、ASBJは実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」 1を公表し、資金決済法に規定する暗号資産の会計処理及び開示について、実務上の取扱いを明らかにしました。
  • しかしながら、暗号資産の取引では、発行者が暗号資産を生成し、そのうち一部を第三者に販売したうえで、残りを自己に割り当て、発行者自身が保有する場合があります。この場合の発行者が発行時に自己に割り当てた暗号資産(以下「自己割当暗号資産」という)の会計上の取扱いについて、実務対応報告第38号は扱っておらず、明確な定めがない状況にあります。
  • 一方、税務上は、自己割当暗号資産かどうかにかかわらず、内国法人が有する暗号資産で活発な市場が存在するものは期末に時価評価し、評価損益は、課税の対象とされています。
  • こうした税務上の取扱いは、キャッシュフローを伴う実現利益がない(担税力がない)中で課税を求めることになり、国内のブロックチェーン技術を活用した起業や事業開発を阻害する要因であるとされ、金融庁と経済産業省の2023年度税制改正要望において、Web 3推進に向けた環境整備を図る観点から、当該課税の見直しが要望されました。具体的には、法人が発行した暗号資産のうち、当該法人以外の者に割り当てられることなく、当該法人が継続して保有しているものについては期末時価評価課税の対象外とすることを共同で要望しています。
  • 本議事概要は、上記のような自己割当暗号資産に関する会計上の取扱いの考え方についてASBJに質問が寄せられたことを受け、ASBJで現在検討が行われている資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行・保有等に係る会計上の取扱いの検討の一環として審議が行われ、その審議の結果として公表されたものです。
概要
  • 資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行・保有等に係る会計上の取扱いについては、2022年3月に、ASBJから「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」(以下「論点整理」という)が公表されています。
  • 論点整理では、「【論点3】資金決済法上の暗号資産に該当するICO トークンの発行及び保有に関するその他の論点」において自己割当暗号資産の会計上の取扱いを検討しており、今後の方向性として、次のような取扱いが考えられるとしていました(論点整理39項)
  • 発行時に自己に割り当てたICOトークンについては、第三者が介在していない内部取引に該当するとして、会計処理の対象としないことが考えられる。
  • この論点についてコメントした回答者のほとんどが上記の取扱いに同意したとされていますが、一方で、本議事概要では、自己割当暗号資産の会計上の取扱いの検討に当たっては、論点整理における主要な論点である暗号資産の発行の取扱いと併せて検討する必要があり、これには一定の期間を要すると考えられる、とされています。
  • このような中、ASBJは、審議において、自己割当暗号資産のうち、発行による対価を受領しておらず自己で完結していると考えられるものについては、次の2つの考え方があるとしています 2
  • 第三者との取引が生じるまでは資産を認識しない考え方
  • 発行者自身が財産的な価値のある暗号資産を保有しているため、資産を認識するが、第三者との取引が生じるまでは取得原価で評価するという考え方
  • ASBJは、上記の考え方のいずれを採用すべきかについて結論を出していないとしつつ、いずれの場合でも時価では評価されないと考えられるとしており、この考え方が本議事概要で示されています。
(本議事概要で示された会計上の取扱いについての考え方)
  • 自己割当暗号資産のうち、発行による対価を受領しておらず自己で完結していると考えられるものについては、時価では評価されない
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1 2022年7月にASBJが公表した「法令等の改正に伴う企業会計基準等の改正について」により、「仮想通貨」の用語は「暗号資産」に置き換えられています。
2 第490回企業会計基準委員会(2022年11月7日開催)審議事項(1)-1 10項、11項を参照。
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