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日本基準トピックス 第473号
主旨
  • 2023年11月17日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」とする)は、実務対応報告第45号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(以下、「本実務対応報告」とする)等を公表しました。
  • 本実務対応報告は、「資金決済に関する法律」が規定する電子決済手段のうち特定の電子決済手段の会計処理および開示に関する当面の取扱いとして、必要最小限の項目について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的としています。
  • 本実務対応報告は公表日以後適用されます。
  • 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。
経緯
2022年6月に成立した「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」により「資金決済に関する法律」(以下、「改正資金決済法」とする)が改正されました。
改正資金決済法は、いわゆるステーブルコインのうち、法定通貨の価値と連動した価格で発行され券面額と同額で払戻しを約するものおよびこれに準ずる性質を有するものを新たに「電子決済手段」と定義し、また、これを取り扱う電子決済手段等取引業者について登録制を導入するなど、必要な規定の整備を行っています。当該規定の整備を背景に、ASBJは、2023年5月31日に公開草案を公表し、広くコメント募集を行ったのち、ASBJに寄せられたコメントを検討し、このたび本実務対応報告を公表しました。
概要
本実務対応報告における主な定めおよび関連して修正された連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の概要は、以下のとおりです。
1. 範囲
  • 本実務対応報告は、改正資金決済法第2条第5項に規定される電子決済手段のうち、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段および第3号電子決済手段を対象とする。
  • ただし、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段または第3号電子決済手段のうち外国電子決済手段1については、電子決済手段の利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限る。
  • 上記にかかわらず、第3号電子決済手段の発行者側に係る会計処理および開示に関しては、実務対応報告第23号「信託の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下、「実務対応報告第23号」とする)を適用する。
2. 会計処理
本実務対応報告は、対象となる電子決済手段(以下、「特定の電子決済手段」とする)について、主に以下の特徴を有するとしています。
  • 送金・決済手段として使用される(第2号電子決済手段を除く。)。
  • 電子決済手段の利用者の請求により、電子決済手段の券面額に基づく価額と同額の金銭による払戻しを受けることができるものであり、価値の安定した電子的な決済手段である。
  • 流通性がある。
このような特徴を踏まえ、本実務対応報告では、特定の電子決済手段は、会計上、現金または預金そのものではないが現金に類似する性格と要求払預金に類似する性格を有する資産であるとして、以下の会計処理および開示を定めています。
(1)電子決済手段の保有に係る会計処理
取得時
  • 特定の電子決済手段の受渡日に当該電子決済手段の券面額に基づく価格をもって資産として計上する。
  • 当該電子決済手段の取得価額と当該券面額に基づく価格との間に差額がある場合、当該差額を損益として処理する。
移転時または払戻時
  • 特定の電子決済手段を第三者に移転するとき、または発行者から金銭による払戻しを受けるときは、その受渡日に当該電子決済手段を取り崩す。
  • 特定の電子決済手段を第三者へ移転するときに金銭を受け取り、当該電子決済手段の帳簿価額と受け取った金銭の額に差額がある場合、当該差額を損益として処理する。
期末時*
特定の電子決済手段の券面額に基づく価格をもって貸借対照表価額とする。
(2)電子決済手段の発行に係る会計処理
発行時
  • 特定の電子決済手段の受渡日に当該電子決済手段に係る払戻義務を債務額をもって負債に計上する。
  • 当該電子決済手段の発行価額の総額と当該債務額との間に差額がある場合、当該差額を損益として処理する。
払戻時
特定の電子決済手段の受渡日に払戻しに対応する債務額を取り崩す。
期末時
特定の電子決済手段に係る払戻義務は、債務額をもって貸借対照表価額とする。
(3)外貨建電子決済手段2に係る会計処理
外貨建電子決済手段(資産)
期末において、本実務対応報告の対象となる外貨建電子決済手段(以下、「対象外貨建電子決済手段」とする)の円換算は、外貨建取引等会計処理基準 一 2 (1) ①の定めに準じ、決算時の為替相場による円換算額を付する
払戻義務(負債)
期末において、対象外貨建電子決済手段に係る払戻義務の円換算は、外貨建取引等会計処理基準 一 2 (1) ②の定めに従って、決算時の為替相場による円換算額を付する。
(4)預託電子決済手段に係る取扱い
  • 電子決済手段等取引業者等* は、預託電子決済手段** を資産として計上しない。
  • 当該電子決済手段の利用者に対する返還義務を負債として計上しない。
* 電子決済手段等取引業者またはその発行する電子決済手段について電子決済手段等取引業を行う電子決済手段の発行者をいう。
** 電子決済手段の利用者との合意に基づいて当該利用者から預かった特定の電子決済手段をいう。
3. 開示
(1)貸借対照表における表示
本実務対応報告において、保有する電子決済手段にかかる貸借対照表の表示科目について言及はありません。この点について、本実務対応報告案に対する意見募集では、「電子決済手段が貸借対照表上の表示において「現金及び預金」に含まれるか否かを明確化すべきである。」とのコメントが寄せられました。
これに対し、ASBJは、意見募集の結果(「主なコメントの概要とそれらに対する対応」)において、「我が国の会計基準では貸借対照表上の現金の定義を定めて」いないことに言及し、「その検討は電子決済手段以外の取扱いにも影響を及ぼす可能性があり、本実務対応報告の範囲を超える」としたうえで、「開示規則等により現金及び預金に含まれない場合には、重要性も踏まえてその性質を示す適切な科目で表示することになる」との考えを示しています。
(2)キャッシュ・フロー計算書における表示
ASBJは、本実務対応報告の公開にあわせて企業会計基準第32号「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正」(以下「改正連結CF基準」とする)を公表しています。改正連結CF基準においてはキャッシュ・フロー計算書における現金の定義に、本実務対応報告の範囲となる電子決済手段である「特定の電子決済手段」が追加されています。このため、キャッシュ・フロー計算書においては、電子決済手段は明確に「現金及び現金同等物」に含まれることになります。
(3)注記事項
特定の電子決済手段および特定の電子決済手段に係る払戻義務に関する注記については、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第40-2項に定める事項を注記することとされています。
4. 適用時期
本実務対応報告は、公表日以後適用されます。また、本実務対応報告の適用は会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、特段の経過措置は定めずに、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することとされています。
(参考)
本実務対応報告等は、日本公認会計士協会(JICPA)の実務指針にも影響するため、同協会より、「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」の改正が公表されています。当該改正では、上記3.(2)で取り上げた連結CF基準と同様の修正が行われています。
_______________________________________________________________
1  「外国電子決済手段」とは、外国において発行される資金決済法、資金決済法A第2条第31項に規定される銀行法等、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律または信託業法に相当する外国の法令に基づく電子決済手段をいう(電子決済手段等取引業者に関する内閣府令第30条第1項第5号)。
2 「外貨建電子決済手段」とは、外国通貨で表示される電子決済手段をいう。
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