日本基準トピックス 第476号
主旨
2023年11月20日、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が、第212回国会(臨時会)において可決され、四半期報告書制度の廃止が決定されています。具体的には、上場企業等の第1・第3四半期報告書が廃止され、第2四半期報告書が半期報告書に変更されます。これにより、第1・第3四半期は四半期決算短信に「一本化」されることとなりました。
当該四半期決算短信への「一本化」に関して、東京証券取引所は、2023年6月に投資家、上場会社、学識経験者その他の市場関係者で構成される「四半期開示の見直しに関する実務検討会」を設置して検討を開始し、11月22日には「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(以下、「実務の方針」という)を公表しました。
さらに、東京証券取引所は、当該実務の方針等を踏まえて所要の上場制度の整備を行うとして、2023年12月18日に「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について」を公表しました。また、参考資料として、「四半期財務諸表等の作成基準(暫定版)」や「決算短信・四半期決算短信作成要領等(暫定版)」も同時に公表しています(以下、これらをあわせて「本見直し等」という)。本見直し等は、2024年1月17日までパブリックコメントを募集しています。
実務の方針および本見直し等の概要
実務の方針および本見直し等は、第1・第3四半期決算短信の開示事項や、公認会計士または監査法人によるレビューの取扱いを整備しています。なお、第2四半期決算短信については、現在の取扱いを維持するとされています(ただし、財務諸表の名称は中間に変更)。
1.サマリー情報
サマリー情報については、基本的に現在の取扱いを維持して、所要の整備が行われています。
ただし、3で後述する通り、第1・第3四半期決算短信においては、四半期連結財務諸表に対する公認会計士または監査法人によるレビューの有無を記載することになります。
2.四半期連結財務諸表
第1・第3四半期決算短信に添付される、四半期累計期間に係る四半期連結財務諸表(作成していない場合には四半期財務諸表、以下同様)では、少なくとも次の表の事項を開示します。四半期報告書が廃止されることに伴い最低限の開示を担保する観点から、「セグメント情報等の注記」および「キャッシュ・フローに関する注記」の開示が新たに義務付けられています。
なお、四半期連結キャッシュ・フロー計算書を任意で作成することもでき、この場合は「キャッシュ・フローに関する注記」は不要となります。
(図表1) 四半期決算短信に添付される四半期連結財務諸表の内容(日本基準の場合(注1))
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中間連結貸借対照表 中間連結損益計算書および中間連結包括利益計算書
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(注1) IFRSおよび米国基準については別途定めがおかれている。
(注2) 期首からの累計期間に係る有形固定資産およびのれんを除く無形固定資産の減価償却費およびのれんの償却額(負ののれんの償却額を含む)。
(注3) 特定事業会社(銀行、保険会社および信用金庫等)においては、中間連結株主資本等変動計算書を作成する。他方で、株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記は不要。
また、決算短信においては、財務諸表やその他の情報として開示が義務付けられる事項以外についても、原則として、上場会社が投資者ニーズを適切に把握し、投資判断に有用な情報を積極的に開示することが推奨されています。
3.公認会計士または監査法人によるレビュー
第1・第3四半期決算短信において、四半期連結財務諸表に対する公認会計士または監査法人によるレビューを受けることは原則任意とされています。
ただし、直近の有価証券報告書、半期報告書または四半期決算短信において、無限定適正意見(無限定の結論)以外の監査意見(レビューの結論)が付された場合や、直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合等、一定の要件に該当する場合はレビューを受けることが義務とされます。
これらに伴い、第1・第3四半期決算短信のサマリー情報においては、四半期連結財務諸表に対する公認会計士または監査法人によるレビューの有無(義務のレビューと任意のレビューを区別)を記載することになります。
なお、第2四半期については、半期報告書に含まれる中間連結財務諸表がレビュー対象となるため、決算短信はレビューの対象外です。
4.第1・第3四半期決算短信の開示タイミング
第1・第3四半期決算短信は、決算の内容(開示が義務付けられる事項および投資判断に有用な情報として開示する事項)が定まったときに開示を行います。ただし、各四半期終了後45日を超える場合は直ちにその理由等の開示が必要となります。
四半期財務諸表のレビューを任意で受ける場合、「決算の内容が定まったとき」として短信を開示する時期は、各上場会社において判断することとされています。すなわち、レビューの完了前に決算の内容が定まったと判断する場合は短信を開示し、レビュー報告書は後日開示するのに対し、短信に一本化されることを踏まえて、レビューが完了した時点を決算の内容が定まったときと判断して短信を開示することでも差し支えないとされています。
レビューを義務で受ける場合については、信頼性の観点からレビューを義務付けている趣旨に鑑み、レビューが完了次第、短信を開示することが原則とされています。
なお、第2四半期決算短信については従来通り、決算の内容が定まったときに、また遅くとも半期報告書の提出までには開示を行います。
5.適用時期
本見直し等のうち、四半期開示の見直しに関する事項は、改正金融商品取引法の施行日(2024年4月1日)以後に開始する第1・第3四半期会計期間に係る決算短信から適用されます。
なお、四半期報告書制度の廃止に関する動向については、以下の日本基準トピックスも参照ください。