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日本基準トピックス 第485号
主旨
  • 2024年3月22日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」とする)は、実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下、「本実務対応報告」とする)等を公表しました。
  • 令和5年度税制改正において、グローバル・ミニマム課税に対応する法人税に係る規定(以下、「グローバル・ミニマム課税制度」とする)が創設され、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用することとされています。本実務対応報告では、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)について必要と考えられる会計処理および開示に関する取扱いが定められています。
  • 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。
  • なお、ASBJが同日に公表した、改正実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」については、以下で解説しています。
    「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(ASBJ)(日本基準トピックス第484号)
経緯
2021年10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20か国・地域(G20)の「BEPS包摂的枠組み」において、当該枠組みの各参加国によりグローバル・ミニマム課税について合意が行われたことを受けて、わが国においてもグローバル・ミニマム課税制度を導入するための法人税法の改正が数年にわたって行われる予定です。
グローバル・ミニマム課税は、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させることを目的としており、当該課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と納税義務が生じる企業が相違する新たな税制とされています。このため、現行の会計基準等ではグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)および当該法人税等に関する税効果会計についてどのように取り扱うかが明らかでないとの意見が聞かれました。
このうち、税効果会計の取扱いについては、2023年3月に実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」が公表され、改正法人税法の成立日以後に終了する連結会計年度および事業年度の決算(四半期(連結)決算を含む)における税効果会計の適用にあたっては、当面の間、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないとされました。
その後、ASBJは検討を重ね、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)について必要と考えられる会計処理および開示に関する取扱いを定める本実務対応報告を公表しました。
主な内容
本実務対応報告の主な内容は、以下のとおりです。
1、会計処理
項目
内容
連結財務諸表および個別財務諸表における取扱い
  • グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、対象会計年度となる連結会計年度(事業年度)において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積り、損益に計上する。
  • 財務諸表の作成時点において一部の情報の入手が困難な場合の見積りに関して、以下の考え方を結論の背景に示す。
    • 特にグローバル・ミニマム課税制度の適用初年度については、従来情報を入手していない各構成会社等からの情報や国別報告事項等の必要な情報を適時かつ適切に入手する体制の構築等が困難な場合があると想定される。対象会計年度となる連結会計年度(事業年度)において適時に情報を入手することが困難な場合は、財務諸表の作成時点で入手可能な対象会計年度に関する情報に基づきグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を見積る。
    • 適用初年度の翌年度以降は、入手可能となる情報が増加し、より精緻な見積りが可能となると考えられる。
    • 企業が当事業年度の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき見積った金額と翌事業年度の見積金額または確定額との間に差額が生じる場合があるが、各事業年度において財務諸表作成時に入手可能な情報に基づきグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の合理的な金額を見積っている限り、当該差額は誤謬にはあたらず、当期の損益として処理することになると考えられる。また、会計上の見積りの変更にあたって、当該差額に重要性がある場合には、「会計上の見積りの変更に関する注記」を記載すると考えられる。
四半期財務諸表および中間財務諸表における取扱い
  • 当面の間、当四半期連結会計期間(当四半期会計期間)および当中間連結会計期間(当中間会計期間)を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができる。
2、開示
項目
内容
貸借対照表における表示
グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するものは、連結貸借対照表および個別貸借対照表の固定負債の区分に長期未払法人税等などその内容を示す科目をもって表示する。
損益計算書における表示および注記
(連結損益計算書)
グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)を示す科目に表示する。
また、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が重要な場合、当該金額を注記する。重要であるか否かは、企業のキャッシュ・フローの金額、時期および不確実性を財務諸表利用者が理解するために有用であるかどうかを踏まえて判断することになると考えられる。
(個別損益計算書)
グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)を表示した科目の次にその内容を示す科目をもって区分して表示するか、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)に含めて表示し当該金額を注記する。
ただし、金額の重要性が乏しい場合、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)に含めて表示することができる。この場合は当該金額の注記を要しない。
四半期財務諸表および中間財務諸表における注記
上記1、会計処理の「四半期財務諸表および中間財務諸表における取扱い」を適用するときは、その旨を注記する。
適用時期等
本実務対応報告は2024年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用するとされています。
ただし、四半期財務諸表および中間財務諸表における注記の定めについては、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用するとされています。
(注)2023年11月20日、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が国会で成立し、2024年4月1日以降は第1・第3四半期報告書を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化することが決定している。第2四半期報告書は半期報告書に変更され、従前の四半期財務諸表に相当する内容の中間財務諸表(第一種中間財務諸表)が開示される。このため、本実務対応報告における「四半期財務諸表」は、「中間財務諸表」(第一種中間財務諸表)と読み替えることになる(中間財務諸表に関する会計基準39項)。
補足文書
本実務対応報告を適用する場合の実務に資するための情報を提供することを目的として、「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等に関する見積りについて」(以下「補足文書」とする)が本実務対応報告とあわせて公表されています。
補足文書は、企業会計基準、企業会計基準適用指針および実務対応報告(以下「企業会計基準等」とする)を追加または変更するものではなく、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書であるとされ、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を算定するための情報の入手が困難な場合の会計上の見積りの例が示されています。
補足文書における主な内容は、以下のとおりです。
  • グローバル・ミニマム課税制度の適用初年度については、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づく当該制度に係る法人税等の合理的な金額の見積りが次のように限定的な情報に基づく場合があり得ると考えられる。
    • 対象範囲の判定において、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手していない国別報告事項に関する情報や恒久的施設等および特殊な会社等からの情報を適時に入手することができない場合には、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手している子会社等の情報のみに基づき国別実効税率を算定する等の方法により対象範囲の判定を行う。
    • 子会社等におけるグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の算定に際して、個別計算所得等の金額、調整後対象租税額ならびに給与適用除外額および有形資産適用除外額の算定において必要な情報について、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手しておらず対象会計年度となる連結会計年度および事業年度の決算時において適時に入手することができない場合には、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手している子会社等の会計数値に基づき当該金額を見積る。
  • 上記の見積りの例は、適用初年度において従来の財務諸表の作成にあたって入手している以上の情報を入手できない場合に考えられる見積りの一例であり、グローバル・ミニマム課税制度の適用初年度における当該制度に係る法人税等の合理的な見積りの方法は、上記の方法に限られるものではない。
  • 適用初年度の翌年度以降は、適用初年度より入手可能となる情報が増加することがあると考えられるが、対象範囲の判定や個別計算所得等の金額等の算定にあたって必要な情報を適時かつ適切に入手することが困難である場合には、適用初年度の翌年度以降においても、上記の見積りの例を参考とすることが考えられる。
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