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要点

新しい減損ガイダンスは、特定の種類の金融商品の信用損失の見積りに関して、現行の「発生損失」モデルを、将来予測的な「予想損失」モデルに置き換えるものです。

最新の動向


米国財務会計基準審議会(FASB)は、2016年6月16日、会計基準アップデート(ASU)2016-13「金融商品-信用損失(Financial Instruments – Credit Losses)(Topic 326)」(以下、「本ASU」という)を公表しました。本ASUは、その適用範囲に含まれる金融商品に係る信用損失の会計処理に関する新しいガイダンスを導入するものです。本ASUは幅広い金融商品に適用され、金融機関等および事業会社の両方に影響を及ぼします。

主な規定


新しいガイダンスは、特定の種類の金融商品に係る信用損失を見積もるための、予想損失を基礎とするアプローチを導入します。また、売却可能(AFS)負債性証券のための減損モデルを修正し、さらに、組成後に信用悪化が生じた状態で取得した金融資産に関する簡素化された会計モデルを提供しています。

現在予想信用損失


「現在予想信用損失(current expected credit losses; CECL)」モデルと呼ばれる新モデルは、(1)信用損失が生じる可能性のある、償却原価で測定される金融資産、および(2)貸借対照表に計上されない(オフバランスの)信用エクスポージャーの一部に適用されます。これには、貸付金、満期保有の負債性証券、ローン・コミットメント、金融保証、および正味リース投資、ならびに再保険および営業債権が含まれます。CECLモデルでは、企業は、エクスポージャーの当初認識時において、エクスポージャー(またはエクスポージャーのプール)の存続期間にわたって予想される信用損失の見積りが要求されます。予想信用損失(ECL)の見積りにおいては、過去の情報、現在の情報、および合理的で裏付け可能な予測(期限前償還の見積りを含む)を考慮しなければなりません。類似のリスク特性を有する金融商品は、見積りにあたりグループ化する必要があります。本ASUはこの見積りについての具体的な手法を規定していないため、適用には重要な判断が要求されます。

一般的に、ECLの当初見積りおよび見積りの事後的な変更は当期の純損益に計上されます。また、ECLは、財政状態計算書では貸付金およびリース債権に対する損失引当金(allowance for loan and lease losses; ALLL)を通じて計上されます。以下では、取得した金融資産に適用される可能性のあるその他の会計処理について説明しています。

売却可能負債性証券


本ASUは、AFS有価証券のうち負債性証券に関する、現行の「一時的でない減損(other-than-temporary impairment; OTTI)」モデルを修正しました。新モデルは、公正価値が資産の償却原価を下回る場合にのみ、ECLの見積りを要求します。AFS負債性証券の公正価値が償却原価を下回っている期間の長さは、今後は信用損失が存在するかどうかの判定に影響しません。いわば、「一時的でない」場合のモデルではなくなりました。さらに、AFS負債性証券に係る信用損失の金額は、今後は当該有価証券の償却原価と公正価値の差額の範囲内に限定されます。また、このAFS負債性証券モデルでは、予想信用損失(およびその後の回復)を計上するために引当金の使用が要求されます。これは現行モデルからの大幅な変更となります。

信用悪化が生じた状態で取得した金融資産


「信用悪化が生じた状態で取得した金融資産(purchased financial assets with credit deterioration; PCD)」モデルは、組成後に重要ではないとはいえない信用悪化の生じた状態で取得した金融資産で、償却原価で測定する区分またはAFSに分類されるものに適用されます。その範囲は、現行モデルにおける、取得した信用減損資産(purchased credit-impaired asset)とは異なります。PCD以外の組成または取得した資産の会計処理とは異なり、PCDに該当する資産の予想信用損失の当初の見積りはALLLを通じて認識され、関連する金融資産の取得原価と相殺される(すなわち、当初認識時に純損益に影響しない)ことになります。その後は、適用されるCECLモデルまたはAFS負債証券の減損モデルに従って会計処理し、ALLLのすべての調整額は純損益を通じて認識します。満期保有またはAFSに分類される受益者持分は、PCDの定義を満たす場合または当初認識時の契約上のキャッシュ・フローと期待キャッシュ・フローとの間に重要な差異が存在する場合には、PCDモデルを適用しなければなりません。

開示


ASU 2016-13は、企業の仮定、使用したモデル、ALLLの見積手法に関して開示要求も拡大しています。さらに、公開企業(public business entities; PBE)は、各種類の金融資産の信用度指標別の償却原価残高について、組成年度別(すなわち、ヴィンテージイヤー別)の内訳を開示する必要があります。その他の報告企業についてはこの開示は要求されません。

なぜ重要か


本ASUは、金融機関等に大きな影響を与えます。しかし、営業債権やリース債権を含んだ適用範囲の広さを考慮すると、すべての企業は本ASUの影響を評価する必要があるでしょう。本ASUのECLを見積もる要求事項により、現在「発生損失」アプローチを適用している企業において貸倒引当金が増加する可能性が高くなります。また、新しいガイダンスの適用のためにシステム、プロセス、コントロールの変更が要求となる可能性が高く、準備にはかなりの時間を要する可能性があります。

次のステップ


本ASUは、SEC登録企業であるPBEについては2019年12月15日より後に開始する事業年度および当該事業年度に含まれる期中報告期間より適用されます。その他のPBEについては、さらに1年の猶予があり、2020年12月15日より後に開始する事業年度および当該事業年度に含まれる期中報告期間より適用されます。また、非公開企業では、2020年12月15日より後に開始する事業年度、および2021年12月15日より後に開始する事業年度に含まれる期中報告期間より適用されます。早期適用は、すべての企業について、2018年12月15日より後に開始する事業年度および当該事業年度に含まれる期中報告期間より認められます。

2016年7月25日午後1時00分(米国東部夏時間)より開催のウェブキャストにおいて、この新しい減損基準について検討します。こちらをクリックしてぜひご登録ください:PwC減損ウェブキャスト(英語)
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