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本資料は、In brief INT2018-09「ベネズエラ企業の会計処理上の検討事項(2018年4月現在の最新情報)」を置き換えるものです。
背景
ここ数年のあいだ、ベネズエラ政府は厳しい通貨管理体制を維持してきました。多国籍企業は、ベネズエラの子会社から利益を送金する際に著しい困難に直面し続けています。為替レート、所定の為替レートでの送金可能額、および送金のタイミングについて重大な不確実性が存在します。ベネズエラ経済は高インフレを示し続けています。また、経営者の意思決定におけるパワーを制限する可能性のある政府による規制(すなわち、価格規制および労働法)も、引き続き高いレベルにあります。
2017年度に、2つの為替制度(すなわち、DIPROメカニズムおよびDICOMメカニズム)が導入されました。
2018年1月末にベネズエラ政府は、一元管理制度の確立を目指して、次のことを行いました。
  1. DICOMメカニズムの再編(2018年1月26日からすべての外国為替取引に適用)。
  2. DIPROメカニズムの廃止(当該メカニズムは、重要であるまたは優先順位が高いと識別される財やサービスの輸入にこれまで使用されていた)。
2018年8月、ベネズエラ政府は新通貨であるソブリン・ボリバル(ボリバル・ソベラノとも呼ばれる)(VES)を創設し、通貨の再切り替えを発表しました。VESは、2018年8月20日から段階的に、従来の通貨ボリバル・フォルテ(VEF)を置き換えます。交換レートは、10万VEF=1VESです。企業は、自社のシステムとプロセスを新通貨に対応させる必要があります。
さらに2018年9月、ベネズエラ政府は、為替制度に対する特定の変更を導入しました。現行の実務では、ベネズエラ中央銀行(VCB)が、規制された単一レートで外貨交換取引を行っています。新為替制度は、(VCBではない)金融機関が外貨交換取引を行う可能性を導入するものです。しかし、関連する規制当局は、新為替制度の実施を可能にする規則や法律をまだ発令していません。そのため、引き続きDICOMが運用されています。
ベネズエラの為替レート
DICOM為替制度は、VCBが公表する単一の公定為替レートです。
DICOMメカニズムに基づき2018年(本In briefの公表日まで)に開催されたオークション(外貨の売出し)では、為替レートは1米ドル当たりVEF25,000(1米ドル当たりVES0.25に相当)(2018年2月5日)と1米ドル当たりVES77.21(2018年11月22日)の間で変動しました。また、これらの取引の出来高は年間を通じて極めて低水準にありましたが、通貨の大幅な切り下げによってここ数カ月は増加に転じています。
外貨建て資産および外貨建て負債の測定
国際会計基準(IAS)第21号は決算日レートの使用を要求しています。レートが決算日レートかどうかの決定において、企業は、通貨が公定為替レートで入手可能か、また公定為替レートは即時の受渡しに利用可能かを検討しなければなりません。実務において、資金を入手する際の標準的な管理運営上の遅延は認められるでしょう。
2つの通貨の交換可能性が、取引日時点またはその後の貸借対照表日時点で一時的に欠如している場合、IAS第21号第26項は、「その後最初に交換し得た時点のレート」を使用することを企業に要求しています。
VCBが公表するDICOMの為替レートは、直物レートとみなすことができ、貨幣性資産および貨幣性負債の換算に使用できる可能性があります。しかし、企業はそれぞれ固有の状況を考慮して、公定為替レートが決算日レートの定義を満たしているかどうかを決定する必要があります(2018年9月に公表されたIFRS解釈指針委員会(IFRS IC)のアジェンダ決定の詳細については、以下をご参照ください)。
企業は、使用した為替レートおよび財務諸表で報告した金額に与える影響を開示しなければなりません。重要な会計方針および為替レートを決定する際に行った判断は、IAS第1号「財務諸表の表示」の第117号から第124項までの要求事項に従って開示しなければなりません。また経営者は、(IAS第1号の第125項から第133項で要求されている)見積りの不確実性の発生要因の一部として、IAS第1号第129項に従って、異なる為替レートを用いることによる感応度の開示を検討しなければなりません。
ベネズエラの子会社の純資産
親会社は、通常、在外営業活動体の純資産を換算するために配当金送金の為替レートを使用します。これは一般的に、報告日時点に在外営業活動体からの資金を親会社に送金する場合に適用されるであろう為替レートであるためです。
経営者は、特定の状況(目的適合性がある場合には、関連する規制当局の見解を含む)を考慮しなければならず、配当の支払に利用できる為替レートについて法律上の助言を受けることも検討しなければならない可能性があります。また、経営者は2018年9月に公表されたIFRS ICのアジェンダ決定も検討する必要があります。このアジェンダ決定は、現在ベネズエラに存在している極限的な状況における為替レートの決定を取り扱っています。アジェンダ決定の中で検討の前提として記載されているのは、通貨の交換可能性が為替メカニズムによって管理されており、当局が為替レートを設定している、そして、通貨が交換可能性の長期的な欠如に晒されており、その結果、企業は所定の為替制度を用いて外国通貨にアクセスすることができない、という状況です。
IFRS ICは、アジェンダ決定で記載されている状況において、企業は、公定為替レートが決算日レート(すなわち、報告期間末の直物為替レート)の定義を満たしているかどうかを決定する必要がある、と結論付けました。
IFRS ICは、ベネズエラでは経済状況が頻繁に変化するため、企業は各期末にそのような状況における関連する変化を再評価する必要があるという所見を述べています。
企業は、使用した為替レートおよび財務諸表で報告した金額に与える影響を開示しなければなりません。重要な会計方針および為替レートを決定する際に行った判断は、IAS第1号「財務諸表の表示」の第117項から第124項の要求事項に従って開示しなければなりません。また経営者は、(IAS第1号の第125項から第133項で要求されている)見積りの不確実性の発生要因の一部として、IAS第1号第129項に従って、異なる為替レートを用いることによる感応度の開示を検討しなければなりません。IFRS ICのアジェンダ決定では、これらの開示要求に言及しており、また、ベネズエラの事業における資産へのアクセスまたは利用および負債の決済能力に対する重要な制限は、IFRS第12号第20項および第22項に従って開示しなければならないと述べています。
ベネズエラ子会社の連結
一部では、送金の不確実性や困難な状況が続いていることにより、多国籍企業は国際財務報告基準(IFRS)に基づきベネズエラ子会社の連結範囲からの除外を検討すべきかどうか、疑問が生じています。
多国籍企業は、IFRS第10号「連結財務諸表」に基づく支配の3要件をもはや満たさなくなった場合にのみ、ベネズエラ子会社を連結範囲から除外しなければなりません。利益送金の不確実性や為替の制限だけでは、IFRS第10号に基づく支配の喪失に該当する可能性は低いといえます。ただし、個々の状況は個別の実態に照らして対処する必要があります。
投資者は、投資者が次の各要素をすべて有している場合にのみ、投資先を支配しています[IFRS第10号第7項(a)から(c)]。
(a) 投資先に対するパワー
(b) 投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャーまたは権利
(c) 投資者のリターンの額に影響を及ぼすように投資先に対するパワーを用いる能力
1つまたは複数の支配の要素に変化があった場合、投資者は投資先を支配しているかどうかを再判定しなければなりません。
投資者が関連性のある活動を指図するパワーをもはや有しておらず、したがってリターンを変動させる能力を失う場合には、投資者は子会社の支配を喪失することになります。支配の喪失の判断はハードルが高いものです。企業がパワーを有する場合で、(支配を(もはや)有していないと判断するためには)変動リターンに対するエクスポージャーを有していないことを証明しなければなりません。利益送金の困難性や為替レートの不確実性は、支配の喪失と同じものではありません。
これは、IFRS第10号B83項の「投資先に対してパワーを有している投資者は、投資者がリターンを受け取る権利を失うか、または義務にさらされなくなる場合には、投資先に対する支配を喪失することがある」という規定に基づくものです。
親会社がベネズエラの投資先における関連性のある活動を引き続き指図する場合、当該親会社はパワーの要件を満たしており、また、変動リターンに対するエクスポージャーを引き続き有している可能性も高いといえます。そのような変動リターンは、正の値と負の値のどちらにもなる可能性があり、またその性質は財務的なものに限りません[IFRS第10号B56項およびB57項参照]。
多国籍企業である親会社においては、企業ごとに状況が異なる可能性があり、各事例を慎重に検討する必要があります。しかし、現在の状況では、多国籍企業である親会社のほとんどは、保有するベネズエラ子会社を引き続き連結するものと考えられます。
親会社は、支配の存在について重要な疑義があるかどうかを検討する必要があります。また企業は、支配の判定の際に行った重大な判断および仮定を説明するために何を開示すべきかを検討しなければなりません[IFRS第12号第7項]。さらに、企業は、企業集団の資産ヘのアクセスまたは利用、および負債の決済を行う能力に関する重大な制限を開示することが要求されます[IFRS第12号第13項]。
超インフレ、一般物価指数の見積り、減損についての検討事項
ベネズエラは、超インフレ経済下にあります。そのため、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」が適用されなければなりません。2017年12月31日時点における超インフレ経済の国別リストについては、In brief INT2018-01「2017年12月31日現在の超インフレ経済」(和訳はこちら)をご参照ください。
IAS第29号の適用では、「購買力の変動を反映する一般物価指数」の利用を要求しています。ベネズエラにおけるインフレ率の公表を担う公的機関はVCBです。しかし、2015年12月以降、VCBによる正式な指標は公表されていません。
IAS第29号は、一般物価指数が入手できない状況を考慮し、インフレ率は比較的安定した外国通貨に対する超インフレ経済国の通貨の切り下げに基づいて見積ることができると示唆しています。しかし、ベネズエラにおける厳格な通貨規制のため、通貨の切り下げはインフレ率を描写しておらず、したがって、インフレ率を見積るための代替的指標として使用されていません。
このような状況では、一般物価指数の見積りに判断が要求されます。例えば、外部の専門家を使ってインフレ率を見積ることが考えられます。あるいは、企業が社内でインフレ率を見積り、専門家により見積られたインフレ・レンジやその他の公表されている情報(財務報告もしくは公的機関から提供される他の経済情報)を参照し、その見積りを検証することも考えられます。
使用する物価指数の水準とその影響は、IAS第29号第39項に従って開示しなければなりません。重要な会計方針およびインフレ率を決定する際に行った判断も、IAS第1号第117項から第124項までの要求事項に従って開示しなければなりません。さらに経営者は、(IAS第1号第125項から第133項で要求される)見積りの不確実性の発生要因に関する開示の一部として、IAS第1号第129項に従い異なるインフレ率を用いた感応度の開示を検討しなければなりません。
最後に、企業は、ベネズエラに存在する著しく高水準のインフレを考慮し、IAS第29号のガイダンスに従って修正再表示されている非貨幣性資産は、依然として、関連するガイダンスに従って減損の評価の対象となっていることに留意する必要があります。資産の回収可能価額が修正再表示額を下回っている場合は、たとえ取得原価に基づく財務諸表では当該資産の減損が要求されていなくとしても、当該資産は減額されます。減損損失は、純損益で認識されます。
現金残高
経営者は、現金残高を企業グループが一般目的に利用できるかどうかに関し、ベネズエラにおける為替管理の影響を
IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」
に基づき開示することも検討しなければなりません。
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