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要点
  • 2023年1月、国際会計基準審議会(IASB)は、国際会計基準(IAS)第12号「法人所得税」の修正を提案する公開草案を公表しました。本修正案は、第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金の会計処理に一時的な救済措置を提供することを目的としています。 
  • IAS第12号は2023年第2四半期に修正される可能性が高いでしょう。承認プロセスの対象となる法域は、本修正を承認する必要があります。
  • IAS第12号の修正の承認前に第2の柱の要求事項を考慮する必要がある企業は、依然として繰延税金の認識を回避できる可能性があります。

これまでの経緯
2021年10月、130カ国以上(世界のGDPの90%超を示す)が多国籍企業に対するグローバル・ミニマム課税制度「第2の柱」の実施に合意しました。2021年12月、経済協力開発機構(OECD)は、第2の柱モデルルール(グローバル税源浸食防止ルール、いわゆる「GloBE」)を公表しました。
第2の柱モデルルールおよび開示に及ぼす影響の概要については、In brief INT2022-10「第2の柱の世界的な実施および開示への影響」(和訳はこちら)をご参照ください。
2022年11月、IASBは、第2の柱のモデルルールの適用が間近に迫っていることに対応して基準設定を決定しました。IASBの基準設定の開始決定に関する詳細については、In brief INT2022-17「第2の柱の世界的な実施:IAS第12号の修正案」(和訳はこちら)をご参照ください。
2023年1月、IASBは、IAS第12号の修正を提案する公開草案「国際的な税制改革―第2の柱モデルルール」(和訳はこちら)を公表しました。本修正案は、第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金の会計処理に一時的な救済措置を提供することを目的としています。IAS第12号の修正案の詳細については、In brief INT2023-01「第2の柱の世界的な実施:IAS第12号の修正案」(和訳はこちら)をご参照ください。
最新情報
公開草案に対するコメント期間は2023年3月10日に終了し、IASBのワークプランによると、プロジェクトの次のマイルストーンは、2023年4月の公開草案に対するフィードバックとなります。したがって、IAS第12号は、2023年第2四半期に修正される可能性が高いといえます。
公開草案の第98M項によれば、基準書の要求事項に対する例外を規定するIAS第12号の修正は、その公表後に直ちに適用され(現地の承認プロセスに従う)、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って遡及適用されます。
論点
一部の企業は、本修正がその法域において発効される前に第2の柱の要求事項を検討する必要があります。例えば、第2の柱モデルルールの適用範囲に含まれる多国籍企業の期末が下記の2つの時点の間にある場合です。
  • 企業の法域において、第2の柱の法律が制定(または、実質的に制定)された日、および
  • 繰延税金の会計処理の例外を規定するIAS第12号の修正が発効された日または承認された日(企業の法域において、現地の承認プロセスが存在する場合)
この場合、企業は、IAS第12号の修正が適用されない1報告期間についてのみ第2の柱の法律から生じる繰延税金の残高を認識して、IAS第12号の修正の発効時に繰延税金の戻入れを行う必要があるのか、という疑問が生じます。この疑問に対してPwCは、以下の点が関連性があると考えています。
  • 公開草案の「結論の根拠」(BC10項)では、例外が提案されなかった場合、繰延税金に影響があったのかどうかをIASBは結論付けていないことが示されています。実際、「結論の根拠」の当該規定では、コメント提出者にはIAS第12号の適用の要否と方法が不明確であることを明示して、既存の要求事項が不明確であることを確認しています。
現段階では、IAS第12号に基づく既存の要求事項が不明確であるため、企業は、IAS第8号第10項に従って会計方針を策定する必要がある可能性があります。会計方針の策定にあたり、企業は、第2の柱の法律は、既存の繰延税金の残高に対する調整または追加を求めていないと結論付けるかもしれません。また、会計方針の策定にあたり、企業は次のことを考慮する可能性があります。
  • 企業が繰延税金の残高を更新しようとした場合に提供される情報の価値(関連性、信頼性、忠実な表示)。多くの利害関係者は、第2の柱に関連した繰延税金の認識は非常に複雑になる可能性があり、そのためのコストが便益を上回る可能性があると指摘しています(公開草案BC11項)。
  • IFRSと同様の枠組みを適用するFASBの最近の解釈(In brief US2023-01「FASBスタッフがOECD第2の柱の会計処理について見解を述べる」(和訳はこちら)を参照)。そこでは、第2の柱の結果として追加の繰延税金を認識すべきではないと結論付けています。
  • 第2の柱の結果として繰延税金を認識することを認めないことを明確にするIAS第12号の今後の修正。その後に戻し入れるだけのために1期間のみ繰延税金を見積るのは、有用な情報の提供とは思われません。
上場企業は、会計方針を策定する際に、現地の規制当局の見解を考慮に入れる必要があります。
誰がいつ影響を受けるか
第2の柱モデルルールの適用範囲に含まれ、第2の柱の法律が制定または実質的に制定されている法域で事業を行う多国籍企業は、影響を受ける可能性があります。2023年3月、4月または5月もしくはそれ以降が期末となる企業にとって、IAS第12号の修正がその日までに当該法域で承認されない場合、問題となる可能性があります。
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