要点
2023年10月7日、カリフォルニア州ギャビン・ニューサム知事が、米国における気候報告の状況を変える3つの画期的な気候開示法案に署名しました。10,000社超の米国企業(公開企業および非公開企業ならびに米国以外に本社を有する企業の子会社を含む)は、まもなく気候開示要求事項が義務付けられます。
※本資料は、カリフォルニア州知事がSB253およびSB261に署名し成立させたことを反映し、同じく2023年10月に成立したSB54およびAB1305の詳細を追加するため、2023年10月および2023年11月にアップデートされました。
カリフォルニア州は、TCFDに沿った開示の基準を設け、SEC規則案とのギャップを埋め、米国の他の州がSECの規制を受けない企業から開示を導き出すための青写真を示すことにより、企業に気候リスクの開示を義務付ける道を開く準備ができている。
米国カリフォルニア州上院法案 No.261 ファクトシート 2023年5月
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この法案は、(1)温室効果ガスプロトコル(GHGプロトコル)に準拠したGHG排出の報告、(2)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った気候関連の財務リスク報告、および(3)特定の排出に関する主張およびカーボンオフセットの販売と使用に関する情報の開示1を要求しています。GHGプロトコルおよびTCFDの要求事項はともに、米国証券取引委員会(SEC)の気候開示規則案、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)およびIFRS®サステナビリティ開示基準の中で言及されているため、企業にとっては馴染みがあるはずです。しかし、このカリフォルニア州法案の範囲に含まれる企業数は、その要求事項が、カリフォルニア州内で事業活動のある公開企業と非公開企業の双方に適用されるため、SEC気候開示規則案の範囲に含まれる企業数をはるかに上回ります。
法案はそれぞれ数ページの簡潔なもので、要求事項の適用方法と適用時期について明記していません。カリフォルニア大気資源局(CARB)は、2025年1月1日より前の公表が要求される規則について、SB253およびSB261に関するより詳しいガイダンスを提供すると見込まれています。しかし、AB1305に関する追加的なガイダンスを策定する明確な計画はなく、最初の開示要求の期日が迫っています。強制的な気候関連開示の第一歩に備えるため、PwCは、企業が現在分かっていることに基づいて全ての法案に関連する適用可能性および報告要求事項を評価することを推奨します。
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(1)排出に関する主張、(2)カーボンオフセットの使用、および(3)カーボンオフセットの販売
| スコープ1、スコープ2、スコープ3 GHG排出 |
(1)気候関連の財務リスク、および(2)リスクを低減しそれに順応するために企業が採用している指標
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(1)カリフォルニア州内で事業を営み排出に関する主張を行う、(2)カリフォルニア州内でカーボンオフセットの購入または売却を行う企業
| カリフォルニア州で事業を営む、売上高が年間10億米ドル超の企業 |
カリフォルニア州で事業を営む年間売上高が5億米ドル超の企業
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提出先 | 企業のウェブサイトで一般に利用可能 | 一般に利用可能なデジタルプラットフォーム | 企業のウェブサイトで一般に利用可能 |
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なし。ただし、独立の第三者による証明の獲得について開示が要求される
| 限定的保証から開始し、段階的な保証要求事項がある | |
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2024年1月1日、以降は少なくとも年1回の情報の更新
| (前事業年度の情報に関する)スコープ1およびスコープ2の年次報告を2026年から、スコープ3の年次報告を2027年から開始 | |
誰が新しい法律の適用対象になるか
AB1305の適用可能性は企業の活動に依存し、財務的な閾値に基づいて限定されるものではありません。SB253およびSB261の適用範囲の要求事項は類似しており、カリフォルニア州で「事業を営んでいる(doing business)」特定の売上高の閾値を超える企業に適用されます。
我々は、世界経済のリスクに対するエクスポージャーを完全に評価し、ネットゼロの未来への道を進むためには、一貫した、比較可能で高い信頼性のある大規模な排出量データが必要であることを知っています。2
SB253の支持を表明する15社の大企業が米国カリフォルニア州議会下院予算委員会に宛てた書簡 2023年8月14日
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AB1305の適用可能性
この法案には、下記活動に従事する企業に適用可能な3つの異なる一連の開示項目が含まれ、それぞれにスコーピングの要求事項が異なります。
排出の主張
カリフォルニア州において、(1)ネットゼロ排出の達成に関して、または(2)企業、その関連企業もしくは製品が、(a)カーボンニュートラルであるか、そうでない場合にはそれらが温室効果ガス排出を追加しない、または(b)排出量を大幅に削減したと主張する、カリフォルニア州で「活動している(operating)」企業
自主的なカーボンオフセットの使用または購入
カリフォルニア州で「活動している」企業で、(1)排出を主張し、かつ(2)カリフォルニア州で販売された自主的なカーボンオフセットを購入または使用している企業(自主的なカーボンオフセットは、排出を削減または防止する法律上または規制上の義務(例えば、カリフォルニア州のキャップ・アンド・トレード制度)に関連する企業を除く)。
自主的なカーボンオフセットの市場売出または販売
カリフォルニア州で自主的なカーボンオフセットを市場で売り出すまたは販売する企業
カリフォルニア州で「活動している」とは
AB1305は、「カリフォルニア州で活動する(to operate in California)」とは何を意味するかについて説明していません。PwCは、これはカリフォルニア州で「事業を営んでいる(doing business)」企業(「SB253およびSB261の適用可能性」のセクションを参照)が含まれるものの、カリフォルニア州で排出に関する主張を行っている企業にも適用される可能性があると考えています。例えば、カリフォルニア州でアクセス可能なウェブサイト上で主張を開示することも含まれる可能性があります。この法案には追加的なガイダンスが示されていないため、企業は、範囲に含まれるかどうかを決定するために、顧問弁護士に相談する必要があります。
SB253およびSB261の適用可能性
本法案は、SB253が「報告企業(reporting entity)」と呼びSB261が「対象企業(covered entity)」と呼ぶ企業に適用され、適用される売上高の閾値が違うこと以外、定義は同じです。
- SB253-「報告企業」とは、年間総売上高が10億米ドル($1,000,000,000)超でありカリフォルニア州で事業を営む、カリフォルニア州の州法、米国の他の州もしくはコロンビア特別区の法令、または米国連邦議会の法令に基づいて設立されたパートナーシップ、法人、有限責任会社またはその他の企業をいう。3
- SB261-「対象企業」とは、年間総売上高が5億米ドル($500,000,000)超であり、カリフォルニア州で事業を営む、カリフォルニア州の州法、米国の他の州もしくはコロンビア特別区の法令、または米国連邦議会の法令に基づいて設立された法人、パートナーシップ、有限責任会社またはその他の企業をいう。4
これらの定義は、事業会社の最終親会社に基づく例外はありません。すなわち、規準を満たす米国以外の企業の米国子会社が範囲に含まれます。
両定義の下で、企業の前年度の売上高に基づいて、適用可能性が測定されます。また、売上高の閾値は、カリフォルニア州で生成された収益にのみ基づくわけではありません。売上高がどこで生成されたかにかかわらず(米国以外で生成された売上高を含む)、企業は、年間の総売上高を考慮する必要があります。さらに、追加的な明確化がない場合、売上高は、年次財務諸表に計上されているとおり、米国会計基準(US GAAP)(または、適用可能な場合IFRS会計基準)に従って算出しなければならないとPwCは考えます。
カリフォルニア州で「事業を営む」
SB253およびSB261の定める売上高の閾値を超える企業は、次に、カリフォルニア州で「事業を営んでいる」かどうかを評価する必要があります。この言葉は法案の中では定義されていませんが、カリフォルニア州の既存の税法で実際に定義されており、立法会議の資料の中で参照されています5。カリフォルニア州フランチャイズ税務委員会は、次のいずれかを満たす場合、企業は「事業を営んでいる」とみなします。
- カリフォルニア州内で金銭的利得を目的とする取引に関与している。
- カリフォルニア州において組織されている、または商業的に所在している。
- カリフォルニア州において特定金額を超える売上高、不動産または給与があり、毎年調整される6。
企業は、「カリフォルニア州内で金銭的利得を目的とする取引に関与している」かどうかについて、厳密に評価する必要があるかもしれません。なぜなら、PwCは、これは幅広く解釈される可能性があると考えるからです。さらに、特定の売上高、不動産、給与の指標は比較的低く、2022年には売上高は690,000米ドル超、不動産および給与も70,000ドル弱でした7。
さらに、カリフォルニア州歳入税法における売上高の定義の範囲は広くなっています。その定義によると、売上高は以下を表すと部分的に述べています。
事業所得を生み出す取引における不動産の売却または交換、役務の提供、または不動産もしくは資本の使用(賃貸料、ロイヤルティ、利息および配当を含む)において実現した総額で、その所得、利得、または損失が内国歳入法に基づき認識される(または、当該取引が米国で行われた場合に認識される)もの8。
これらの定義にはいくつかのさらに複雑な点があるため、PwCは、この規準を満たしているかどうかを評価する際に、企業は税務顧問や法律顧問に相談することを推奨します。
免除
保険会社(すなわち、保険局の規制対象となる事業会社)は、すでにTCFDの下で報告書を義務付けられているため、SB261の要求事項から完全に免除されます。2022年、カリフォルニア州保険監督官を含む全米保険監督官協会は、TCFDのフレームワークに沿って、保険会社が気候関連のリスクを報告する新たな基準を採用しました。しかし、保険会社はSB253の排出開示要求事項から免除されていない点が重要です。
SB253には、カリフォルニア大学について、同学の理事会が要求を選択する場合を除き特定の免除が定められています。そうでない場合においては、SB253は、定義に従い、所定の閾値を満たす全ての報告企業に適用されます。さらに、SB253は、SB235の下での開示は、2006年地球温暖化解決法 の議会法案32に基づくカリフォルニア州の多くの発電事業者、工業施設、燃料供給事業者、電力輸入事業者に適用される現行の報告要求事項を満たすと明記しています。
カリフォルニア州法は非営利企業にも適用されるか
非営利企業についての特定の免除はありません。同法の適用の対象となるかどうかを決定するのは企業の法的構造であり、非課税ステータスではありません。PwCは、同法は営利組織と非営利組織に幅広く適用することが意図されていると考えています。
開示要求事項の内容
下記は、カリフォルニア州衛生安全法規における新しいセクションとなる、3つの法案の開示要求事項の概要です。
排出の主張およびカーボンオフセットの報告
次のカテゴリーの1つまたは複数の範囲に含まれる企業は、要求される開示事項を、2024年1月1日の法案の発効日時点のウェブサイトに掲載する必要があります。開示は、少なくとも毎年アップデートしなければなりません。
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- 企業が、その主張に間違いはない、または達成されていると、どのように判断したのか、および、以下を含むがそれらに限定されない目標に向けた進捗状況をどのように測定するかに関する「全ての情報」9
- 排出削減手段に向けた企業の科学的根拠に基づく目標の特定
- 企業の科学的根拠に基づく目標および排出削減手段に用いられる関連セクターの手法および第三者による立証
- 温室効果ガス排出の独立した第三者による立証またはその他のデータもしくは主張があるかどうか
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購入または使用した 自主的カーボンオフセットの開示
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- オフセットの販売者およびオフセットレジストリーまたはプログラムの名称
- レジストリーまたはプログラムに登録されているプロジェクトの識別番号および名称(該当する場合)
- 購入したオフセットが炭素除去、排出回避、またはその両方の組み合わせから導かれたものかを含むオフセットプロジェクトの種類、および、その実施場所
- 排出削減または除去の便益の見積りに使用された特定プロトコル
- 掲載されたデ―タおよび主張の独立した第三者による検証を受けているかどうか
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市場に売り出された または販売された 自主的カーボンオフセットの開示
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- 使用されたプロトコル、オフセットプロジェクトの実施場所、プロジェクトは設定基準を満たしているかどうか、プロジェクトの属性の独立した検証または立証を受けているか、および年次ベースでの排出削減もしくは除去炭素を含む、カーボン・オフセット・プロジェクトの詳細
- プロジェクトが完了しない場合、または計画された排出削減もしくは除去の便益を満たさない場合に取られる説明責任措置の詳細
- 排出削減または除去クレジットの数値の再現および立証に必要なデータおよび算出方法
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GHG排出の報告
SB253はGHG排出の報告を目標としており、GHGプロトコルに準拠して、スコープ1、スコープ2およびスコープ3のGHG排出の開示を要求します。スコープ1およびスコープ2の排出は、報告初年度の開示が要求されており、スコープ3の排出は1年延期されています。
上の表に要約されているように、最初の報告は2026年に始まり、前事業年度のスコープ1とスコープ2の排出(スコープ3の排出を1年後に追加)を対象としますが、情報をいつどのように公表するか、また2026年の実際の期日についてはCARBが決定し、2025年1月1日またはそれ以前に採択される法規制に含まれることになります。またこの法案は、スコープ1とスコープ2の情報が一般に開示されて180日後まで、スコープ3の報告は行われないと明記しています。
また、本法案は、企業のGHG排出報告に対する限定的保証(レビュー)から開始し、その後の期間に合理的保証(監査)に移行するという、独立した第三者による保証を要求しています。本法案は、第三者保証提供者の要件を規定しており、これらの要件は、SEC規則案に含まれている要件を反映したものとなっています。
CARBの採用予定の規則によって、本法案の規定の一部がさらに明確化される可能性があります。
カリフォルニア州のコーポレートフランチャイズによりカリフォルニア州の非常に価値ある消費者市場にアクセスしている米国企業は、グローバルのGHG排出を開示する責任も共有している。
SB253 Section 1(f)
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気候関連の財務リスクの報告
SB261は、TCFDフレームワークの勧告に従って作成された気候関連財務リスクの広範な報告を網羅しています。また、開示された気候関連の財務リスクの低減と適応のために企業が採用した措置に関する追加的な開示を要求します。企業は、2026年1月1日までに企業のウェブサイトで報告を一般公開し、それ以降は隔年での公開を企業に要求していますが、この法案では具体的な「現在」の日付を明記していません。
SB261では、報告の規準を満たす子会社は、親会社が連結報告書を作成している場合には、気候関連の財務リスクの報告書を別個に作成することは要求されません。同様の規定は、SB253やAB1305には含まれていません。
TCFDフレームワークは、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標および目標というコアとなる4本の柱の中で提言される11の開示を含んでいます「勧告」と呼ばれていますが、カリフォルニア州法案では、範囲に含まれる企業に対してこれらの開示を義務付けています。10
a)気候関連のリスクおよび機会に対する取締役会の監視について記載する。
b)気候関連のリスクおよび機会の評価と管理における経営者の役割を記載する。
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a)短期、中期および長期にわたって組織が識別した気候関連のリスクおよび機会を記載する。
b)気候関連のリスクおよび機会が組織の事業、戦略、財務計画に与える影響を記載する。
c)気温の2℃低下シナリオを含む異なる気候関連シナリオを考慮した組織の戦略のレジリエンス(回復力)を記載する。
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a)組織の気候関連のリスクの識別と評価プロセスを記載する。
b)組織の気候関連リスクの管理プロセスを記載する。
c)気候関連のリスクの識別、評価および管理プロセスが、組織の全体的なリスク管理にどのように統合されているかを記載する。
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a)組織の戦略およびリスク管理プロセスに沿って、気候関連のリスクおよび機会を評価するために使用した指標を開示する。
b)スコープ1、スコープ2、適切な場合はスコープ3の温室効果ガス(GHG)排出および関連するリスクを開示する。
c)組織が気候関連のリスクおよび機会を管理するために使用した目標、ならに目標に対する実績を記載する。
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SB261に基づくTCFDの開示には、温室効果ガスに関する指標も含まれますが、開示および保証の要求事項の性質がSB253に基づくGHGの開示と異なります。各法案は、スコープ1およびスコープ2の排出を要求しますが、SB261の要件の基礎となるTCFDは、「スコープ3の排出の開示を強く奨励する」が、SB253はそれを義務付けています。さらに、SB261に基づいて報告される温室効果ガスの指標は、保証要件の対象ではありません。
また、本法案は、TCFDの要求事項を完全に満たせない企業に対しては、最善の努力を尽くした開示を完成させ、報告していない部分についての詳細な説明と、完全な開示を作成するためのステップを開示することができると規定しています。しかし、気候関連の財務リスクを低減および適応のための企業の措置を開示する要求事項には、同様の救済はありません。
相互運用可能性
サステナビリティ報告基準の普及に伴い、相互運用可能性の概念(すなわち、あるフレームワークの下で作成した開示を他のフレームワークの要求事項を満たすために利用できること)が注目を集めており、規則案に関する一般のフィードバックでよく見られるテーマとなっています。
この考えのもと、カリフォルニア州の議員たちは、報告が本法案の要求事項を満たしている限りにおいて、他の国内外の報告要求を満たすために作成された開示の利用により、企業がSB253およびSB261の報告要求を満たせるようにすることで報告作成者の負担を軽減したいと考えています。さらに、SB261は、IFRSサステナビリティ開示基準に準拠して作成された報告書など、他の国内外の報告要求に準拠した任意報告を通じてその要件を満たすことができると明記しています。
さらに、SB261に関するカリフォルニア州上院議員の最終投票に至る議論において、本法案の執筆者は、「他の州政府および地方自治体と同様、連邦レベルで行われているその他の気候リスク報告作業を考慮に入れた報告の道筋を作る」ための「クリーンアップ・コンポーネント」の検討を約束しました。これは、追加的な相互運用可能性を認める後続の法案がある可能性を示唆しています。
他のフレームワークの下で作成された開示によってその開示要件を満たすことを認める規定は、AB1305にはありません。
「ビッグ3」フレームワークとの相互関係
相互運用可能性へのコミットメントは効率性の創出を意図したものですが、SB253では、別の報告書の活用は、「報告書が、本セクションの要求事項の全てを満たしている限り」認められることを明記しています11 。しかし、「ビッグ3」フレームワークに従った報告のいずれもGHGプロトコルに完全には準拠していないため、「ビッグ3」フレームワークに従った報告がSB253の要求事項を満たすかどうかは不明です。SB261が準拠を公言しているIFRSサステナビリティ開示基準でさえ、SB253の要求事項の全てを満たしていません(なぜなら、ISSBの基準はスコープ2の排出について所在地ベースと市場ベースの両方の開示を要求していませんが、その両方ともGHGプロトコルによって義務付けられているからです。)CARBが法規をつくる際には、追加的な明確化が行われる可能性があります。そうでない場合には、類似の文言を含むSB253とSB261の両方について、他のどのフレームワークがこの要求事項を満たすかを判定するために、追加的な分析が必要となるでしょう。
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モニタリング
両法案は、要求事項のモニタリングおよび施行の方法が異なります。AB1305は企業の開示のモニタリングを行ったり検出事項について報告したりするための特定の当事者を特定していませんが、不遵守に対するペナルティは「管轄裁判所」によって評価されることになっています12。これらのペナルティは、行政処分であり、1日当たり2,500米ドルを上限とすることができます。上限は50万米ドルであり、カリフォルニア州の住民の名において提起される民事訴訟で評価されます。SB253およびSB261は、以下を行うことにより、CARBに対し、企業の開示をモニタリングする第三者を識別するよう指図しています。
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2027年7月1日までに、「カリフォルニア大学、カリフォルニア州立大学、国立研究所、またはその他の同等の学術機関」と協力し、州の温室効果ガス排出削減目標および気候目標の文脈における開示を評価ならびに一般に報告する13。
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米国で活動しており、カリフォルニアで事業を営む企業による気候関連の財務リスク開示について経験を有する気候報告の非営利組織と契約する14 。そのような企業は、業界ごとのTCFDの開示のサンプルをレビューし、不適切または不十分な報告書の識別を含め、特定要素について2年ごとに公開する報告書を作成する。
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また、SB253およびSB261が次のような異なる閾値を有しているものの、この法案は、CARBに対し、不提出、提出の遅延またはその他の不遵守に対する行政処分の制定を認めています。
- SB253:ペナルティは、どの年度においても$500,000を超えない。
- SB261:ペナルティは、どの年度においても$50,000を超えない。
いずれの場合も、ペナルティの金額は、企業の過去の法令遵守の実績や、遵守のために「誠実な」努力を行ったかどうかを考慮します。さらに、最終法案は、スコープ3の開示が「合理的な根拠に基づいて行われ誠実に開示されている」場合の免責条項を提供し、2030年まで、ペナルティはスコープ3の不提出のみを評価することになります15。
ベンチャーキャピタルの多様性に関する開示
10月に署名によりカリフォルニア州法として成立した開示義務一括法案には、第4の法案であるSB54が含まれています。これは次のようなベンチャーキャピタル企業に適用されます。
a) スタートアップ企業、初期段階、新興成長企業に投資もしくは資金調達している、または第三者の投資家のために資産を管理しているベンチャーキャピタル企業
b) カリフォルニア州に本社を有する、カリフォルニア州に重大な事業所または営業所を有する、カリフォルニア州に所在するビジネスまたは重大な事業所を有するビジネスに投資している、あるいはカリフォルニア州の住民からの投資を勧誘または受けているベンチャーキャピタル企業16。
範囲に含まれる企業は、ベンチャーキャピタルの投資先を調査し、投資先の創業者に関する多様な情報(例えば、性差、人種、民族性)を入手することが要求されます。調査結果を踏まえ、また2025年3月1日以降、毎年1回、対象となる企業は、投資に関する情報を公民権局に報告する必要があります。公民権局は、その情報をウェブサイト上に公開します。
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次のステップ
これらの法案は、2023年9月14日までの立法議会の最後の数日間で立て続けにカリフォルニア州議会および上院で承認され、2023年10月7日にギャビン・ニューソム知事により署名されて成立しました。同州知事によるSB253およびSB261の承認には、適用期限を含む一定の懸念事項に対処するため、来年度においてカリフォルニア州議会と協力する予定であることを示すメッセージが付されました17 。しかし、議会が延期を考慮するかどうかは不明であるため、PwCは、企業が今から準備を開始することを推奨します。
AB1305に関連する開示の最初の提出期日まで2カ月もないため、これらのカリフォルニア州法案は、範囲に含まれる企業の大部分ではないにしても多くの企業にとって、最初のサステナビリティ報告要求事項の適用となる可能性があります。SB253およびSB261の要求事項でさえCSRDの最初の期日より先になる可能性があります18。カリフォルニア州の法案の範囲に含まれる可能性のある企業は、今、報告義務の準備に着手すべきです。とるべき賢明な措置として、範囲の評価、要求事項の理解および遵守方法の評価が含まれます。明確でない点があること考慮すると、これらを評価するためには判断が要求される可能性があるため、企業は法律顧問を早期に関与させる必要性を評価すべきです。
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