日本基準トピックス 第483号
主旨
- 2023年11月20日、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が、第212回国会(臨時会)において可決され、2024年4月から四半期報告書制度を廃止することが決定されています。具体的には、上場企業等の第1・第3四半期報告書が廃止され、第2四半期報告書が半期報告書に変更されます。
- これを受けて、2024年3月22日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「中間財務諸表に関する会計基準」および「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、まとめて「本中間会計基準等」という)を公表しました。
- 本中間会計基準等は、改正後の金融商品取引法の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用されます。
- 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。寄せられた主なコメントの概要とそれらに対する対応については、こちらをご覧ください。
本中間会計基準等の概要
本中間会計基準等は、上場企業の第2四半期報告書が半期報告書として提出され、半期報告書において中間財務諸表が開示されることになるため、当該中間財務諸表に係る会計処理及び開示に関する取扱いを定めています。
1.本中間会計基準等の会計処理を適用する会社
本中間会計基準等は、以下の会社が半期報告制度に基づき作成する中間財務諸表(第一種中間財務諸表)に適用されます。
・上場会社等(特定事業会社を除く)(注1)
・有価証券報告書および半期報告書の提出義務があり、従前の四半期財務諸表に相当する中間財務諸表(第一種中間財務諸表)を作成する非上場会社(特定事業会社を除く)(注2)
なお、中間連結財務諸表を開示する場合は、中間個別財務諸表の開示は不要とされています。
また、上記以外の会社(主に特定事業会社)が半期報告制度に基づき作成する中間財務諸表(第二種中間財務諸表)については、本中間会計基準等の対象外です。
(注1)金融商品取引法第24条の5第1項の表の第1号に掲げる会社であり、上場会社等のうち、特定事業会社(銀行、保険会社および信用金庫等)を除く会社。この会社は、内容が従前の四半期財務諸表に相当する中間財務諸表(第一種中間財務諸表)を作成する。
(注2)金融商品取引法第24条の5第1項の表の第3号に掲げる非上場会社のうち、特定事業会社を除く会社。この会社は、原則として内容が従前の中間財務諸表に相当する中間財務諸表(第二種中間財務諸表)を作成するが、従前の四半期財務諸表に相当する中間財務諸表(第一種中間財務諸表)を作成することもでき、後者の場合が本中間会計基準等の対象となる。
2.本中間会計基準等の内容
本中間会計基準等は、中間財務諸表の記載内容が従前の第2四半期報告書と同程度の記載内容となるように、基本的に「四半期財務諸表に関する会計基準」および「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、まとめて「四半期会計基準等」という)の会計処理及び開示を引き継いでいます。
ただし、期首から6カ月間を1つの会計期間(中間会計期間)とした場合と、四半期会計基準等に従い第1四半期決算を前提に第2四半期の会計処理を行った場合とで差異が生じる可能性がある以下の項目については、改正後の金融商品取引法の成立日から施行日までの期間が短期間であることから、会計処理の見直しにより企業の実務負担が生じないよう、従来の四半期での実務が継続して適用可能となる取扱いまたは経過措置を定めています。
(1) 原価差異の繰延処理
(2) 子会社を取得または売却した場合等のみなし取得日またはみなし売却日
(3) 有価証券の減損処理に係る中間切放し法
(4) 棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法
(5) 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理
(6) 未実現損益の消去における簡便的な会計処理
3.公開草案からの主な変更点
本中間会計基準等の適用初年度において、開示対象期間の中間財務諸表等(前年度の末日の要約貸借対照表、前中間会計期間の中間損益計算書及び中間包括利益計算書)について本中間会計基準等を遡及適用することを明確化する規定が追加されています。
また、本中間会計基準等の適用初年度において、本中間会計基準等を適用する旨の注記(会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の注記)は不要である旨が、寄せられた主なコメントの概要とそれらに対する対応において示されています。
4.適用時期
本中間会計基準等は、改正後の金融商品取引法の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用されます。なお、決算期(3月決算、12月決算、2月決算など)に応じた、改正後の金融商品取引法の規定による半期報告書の提出時期や、関連する財務諸表等規則等の改正については、以下の日本基準トピックスも参照ください。
今後の基準開発の方向性
本中間会計基準等は、改正後の金融商品取引法の成立日から施行日までの準備期間が非常に短い中で、短期的な対応として、改正後の金融商品取引法に従って新たに中間財務諸表を作成する場合の会計処理及び開示について定めています。
しかし、上場会社の観点からは四半期決算短信と中間財務諸表は連続したものとして作成することから、同じ会計基準等に基づいて中間決算と四半期決算を行うべきであるとの意見が聞かれていることを踏まえ、本中間会計基準等の公開草案の公表時には、本中間会計基準等が会計基準等として確定した後に、中間会計基準等と四半期会計基準等を統合した期中財務諸表に関する会計基準等を開発し、取扱いを統一することが考えられるとして、今後の基準開発の方向性に対するコメントを募集していました。
寄せられたコメントでは、企業の報告の頻度(年次、半期、または四半期)によって、年次の経営成績の測定が左右されてはならないとする原則を採用する提案に賛成する意見と、提案に反対し中間財務諸表にも現行の四半期会計基準等をそのまま適用できるように改正するという代替案を提案する意見が聞かれるなど、いずれの意見も統合には反対していないものの、統一の方法に関しては様々な意見が存在しました。ASBJでは、これらの意見を踏まえて、今後検討を行う予定とされています。
なお、金融商品取引法上は四半期報告制度が廃止されますが、上場会社においては引き続き取引所規則に基づき第1・第3四半期決算短信の報告が行われるため、今後、期中財務諸表に関する会計基準等の開発が行われるまでの間、四半期会計基準等は適用を終了しないことが予定されています。