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論点
国際会計基準(IAS)第29号「超インフレ経済下における財務報告」第4項は、超インフレ経済の存在を認識した期間の期首から当該基準を適用することを要求しています。以下では、当該基準のガイダンスの影響および(国際通貨基金(IMF)のデータに基づき)2016年12月31日時点で超インフレ経済下にある国について説明します。
影響
以下のいずれかの国の通貨を機能通貨とする企業は、2016年度の報告でIAS第29号を適用しなければなりません。
  • 南スーダン共和国
  • スリナム
  • シリア・アラブ共和国
  • ベネズエラ
以下の国は2016年度に超インフレ経済ではなくなりました。
  • スーダン
以下の国は2016年度において超インフレ経済ではありませんでしたが、2017年度も動向を注視する必要があります。
  • アンゴラ
  • アルゼンチン
  • ウクライナ
考察
超インフレ経済の国
南スーダン共和国
IMFのデータによると、南スーダン共和国は2016年12月31日までの3年間の累積インフレ率が100%を超え、以後の年度においてさらなるインフレ率の上昇が見込まれることから、2016年度に超インフレ経済となりました。機能通貨が南スーダン共和国の通貨である企業は、2016年度においてIAS第29号を適用することが要求されます。
スリナム
IMFのデータによると、スリナムでは、2016年12月31日までの3年間の累積インフレ率100%を大きく超え、以後の年度においてもインフレ率の上昇が見込まれています。当該国のインフレデータもIMFのデータと整合しています。こうしたことから、スリナムは2016年度に超インフレ経済となりました。機能通貨がスリナムの通貨である企業は、2016年度においてIAS第29号を適用することが要求されます。
シリア・アラブ共和国
シリアは依然として困難な状況にあります。欧州連合(EU)と国際連合(UN)は貿易制裁を課しています。シリアにおける現在のインフレ率の情報を得ることは困難ですが、入手可能な情報によると、シリアは2016年においてもなお超インフレ経済下であることが示されています。機能通貨がシリア・アラブ共和国の通貨である企業は、2016年度においても引き続きIAS第29号を適用することが要求されます。
ベネズエラ
ベネズエラは2009年に超インフレ経済になりました。IMFのデータによると、2016年12月31日までの3年間の累積インフレ率は100%を大きく超えています。2016年においてもベネズエラは引き続き超インフレ経済となっています。機能通貨がベネズエラの通貨である企業は、2016年度も引き続きIAS第29号を適用することが要求されます。
IAS第29号第4項およびIFRIC第7号第3項は、企業が超インフレ経済の存在を認識した報告期間において財務諸表を修正再表示することを要求しています。IAS第29号は、その経済が常に超インフレであったものと仮定して適用しなければなりません。2016年における取引および当該年度末における非貨幣性残高は、2016年度の貸借対照表日時点の物価指数を反映するよう修正再表示しなければなりません。比較財務諸表および表示する最も古い期間の期首時点での開始財政状態計算書についてもまた、2016年度の貸借対照表日時点の物価指数を反映するよう修正再表示しなければなりません。
IAS第21号「外国為替レート変動の影響」第43項は、機能通貨が超インフレ経済の通貨である子会社の財務諸表を連結財務諸表に含める前にIAS第29号に従い修正再表示することを要求しています。安定した通貨において過去に表示された比較金額は修正再表示されません。
2016年度に超インフレ経済ではなくなった国
スーダン
スーダンは2013年に超インフレ経済となりました。2013年に約42%であった年間インフレ率は、2013年、2014年、2015年にそれぞれ約26%、13%、16%と減少しています。2016年までの3年間の累積インフレ率は、100%を大きく下回りました。機能通貨がスーダンの通貨である企業は、2016年度12月31日に終了する事業年度にIAS第29号を適用することは要求されません。
企業は、超インフレ経済でなくなった期間の直前の報告期間の末日現在でIAS第29号の適用を中止しなければなりません。超インフレ経済でなくなった期間の直前の報告期間(期中報告期間を含む)の末日現在の財務諸表の金額は、その後の財務諸表の帳簿価額として扱わなければなりません。
2017年に動向を注視すべき国
アンゴラ
IMFのデータによれば、2016年までの3年間の累積インフレは高く、2017年には100%を大きく超えることが見込まれています。機能通貨がアンゴラの通貨である企業は、2017年度もインフレを注視しなければなりません。
アルゼンチン
アルゼンチンにおけるインフレは、数年にわたり、高い水準となっています。IMFのデータによると、3年間の累積インフレ率は2016年12月31日時点でわずかに100%を超えることが見込まれています。
アルゼンチンにおいてインフレデータは継続して報告されてきておらず、過去3年間を通じて単一の一般物価指数は存在していません。現地のさまざまな指標から、2016年12月31日時点の累積インフレ率はほぼ100%、あるいはそれを超過することが示唆されています。
インフレ率は、為替レートの切り下げおよび公共料金規制の緩和の後、2016年前半に上昇しました。しかし、現地における見積りでは、インフレ率は現在下落しており、3年間の累積インフレ率は、2017年度までに100%をわずかに下回る程度になると見込まれています。定性的指標は強弱混在しているものの、アルゼンチンが超インフレ経済であることは示されていません。一貫性のないデータ、インフレ率の下落および強弱混在する定性的指標などを合わせると、アルゼンチンが2016年に超インフレ経済であると結論づけるには証拠が不十分であることを示唆しています。したがって、機能通貨がアルゼンチンの通貨である企業は、2016年にはIAS第29号を適用すべきではありませんが、2017年度においてインフレを注視しなければなりません。
ウクライナ
IMFのデータによると2016年12月31日までの3年間の累積インフレ率は、100%を超えるものの、大幅には超えていません。累積インフレ率は、2017年度には100%を大きく下回るまで下落する見込みです。ウクライナが超インフレ経済ではないという結論が定性的指標により裏付けられています。機能通貨がウクライナの通貨である企業は、2017年度もインフレを注視しなければなりません。
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