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要点
欧州連合の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が2022年12月に最終化されました。CSRDは、環境、社会およびガバナンスに関する事項の詳細な報告を要求しています。CSRDで規定される要求事項は、特定の米国企業やその他のEU域外の企業およびそのEU子会社など、現行のEU非財務情報開示指令(NFRD)に従い報告している企業よりも多くの企業に影響を与えます。
具体的な報告要件は、事実および状況によって異なります。これらの報告要件の適用可能性の決定は複雑になる可能性があり、法律顧問を早期に関与させた慎重な検討が必要になる可能性があります。報告は早くて2024年度より開始され、またその要求事項はかなりの範囲に及ぶ可能性があります。
CSRDはベースラインを規定しているため、EU加盟国はCSRDを国内法化しなければなりません。国内法化のプロセスの一環として、EU加盟国は規定を追加できますが、CSRDの要求事項を削除することはできません。したがって、企業は、EU加盟国の動向を注視すべきです。

誰が影響を受けるか
この新たな報告要件に直接影響を受ける企業の範囲は広範です。米国やその他のEU域外に本社を有する企業が含まれており、公開企業に限定されません。以下のカテゴリーに含まれる企業は、企業レベルおよび/または連結グループの一部として、報告義務を有している場合があります。
EU規制市場に上場している有価証券を保有する全ての企業(限定的な例外あり)
上場していない「大規模」EU域内企業*
上場していない「大規模グループ」親会社のEU域内企業*
EU域外で法人化されているが、EU規制市場に上場している企業を含む(限定的な例外あり)
「大規模」とは、2期連続の貸借対照表日において、下記項目のうち少なくとも2つを超えるものと定義される。
  • 総資産額:20百万ユーロ
  • 純売上高(収益):40百万ユーロ
  • 平均従業員数:250人
「大規模」とは、親会社と子会社で構成されるグループであり、連結ベースの親会社の2期連続した貸借対照表日において、下記項目のうち少なくとも2つを超えるものと定義される。
  • 貸借対照表総額:20百万ユーロ
  • 純売上高(収益):40百万ユーロ
  • 平均従業員数:250人
*米国およびその他のEU域外企業のEU子会社の検討事項を含む。
以下の場合、EU域外企業はグローバル連結レベルで報告する追加の要求事項がある。
  1. 組織内に、適用範囲に含まれる(すなわち、EU規制市場に上場している、または「大規模」)のEU企業が少なくとも1社ある、または、前年度に40百万ユーロを超える収益を計上したEU支店が少なくとも1社ある。
  2. EU域内で計上した連結純売上高(収益)が、過去2期連続して各年度に150百万ユーロを超える。
これらの範囲に関する検討事項には特定の免除があります。結合報告書を作成する、および組織のより高いレベルでの報告により子会社の報告要件を満たすなどの一部の限られた例については考慮していません。
要求される報告時期
報告時期は、CSRDによって定められており、企業の種類によって異なります。重要なのは、初度適用日は6カ月以内に始まるということです。すなわち、有価証券をEU規制市場に上場しており、従業員が500人超の「大規事業体(undertakings)」および現行のNFRDの要求事項の下ですでに報告を行っている企業は、2024年度(2025年度に提出)に報告が要求されます。
その他の全ての「大規模事業体」および「大規模グループ」は、2025年度(2026年度に提出)に報告が要求されており、それよりも小規模の組織はその翌年度に報告することになります。EU域外の本社を有する企業については、追加の報告が2028年度(2029年度に提出)に要求されます。必要なプロセスおよび統制の構築のための時間はこれらの初度適用日まであまり多く残されていません。
報告要求事項
CSRDの報告要件は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の新しいテーマ別基準の要求事項や米国証券取引委員会(SEC)の提案する開示案よりもはるかに詳細になります。CSRDは、サステナビリティの問題が企業の事業にどのような影響を与えるのか、そして企業活動が人や環境にどのような影響を与えるのか(いわゆる「ダブルマテリアリティ」)について、詳細な開示を要求しています。カバーされるテーマには、気候変動だけでなく、汚染や生物多様性などの追加的な環境テーマ、企業の従業員やバリューチェーンにおける従業員などの社会的テーマ、企業倫理や仕入先の支払慣行などのガバナンスのテーマが含まれます。
報告基準
ステータス
欧州サステナビリティ報告基準(ESRS):全セクターにわたる範囲に含まれる企業に適用される12の基準
2023年7月に最終基準が採択
EU 域外企業向けの基準:EU 域外に本社を有する企業の追加の報告の一部として、グローバル連結レベルで適用するための基準
まだ開発されておらず、時期も不確定
簡素化された基準: EU 規則で定義されている、特定の中小企業(SME)、小規模かつ複雑でない金融機関およびキャプティブ保険会社(専属保険会社)が使用するための基準
現在開発中
業種別基準も開発中です。適用可能性に関する検討事項、ESRSに基づく報告要求事項および関連する保証の要求事項についての詳しい解説は、In the loop「CSRDの世界的な影響-準備はできていますか?」(和訳はこちら)をご参照ください。
いま、企業が検討すべき重要な問題
報告義務に対する早期の準備が重要です。企業は、法律顧問の援助を得て、以下について検討すべきです。
  • グループにおけるEU域内企業は、現在、EU非財務情報開示指令(NFRD)の対象か
  • グループにおける企業は、EU規制市場に上場した負債性証券または資本性証券を有しているか
  • グループにおけるEU域内企業は、「大規模事業体」または「大規模グループ」の定義を満たすか
  • EUで計上した連結純売上高(収益)が過去2期連続して各年度に150百万ユーロを超えるか
  • 企業は、利用可能な免除規定の適用要件を満たしているか(詳細については、以下の追加の資料を参照)
  • ダブルマテリアリティア評価の要求事項は何か
さらに、企業は、開示を裏付ける質の高いデータ蓄積のためのプロセスと統制を構築または強化する必要があります。これは、今までの任意報告でカバーされていなかった分野や、財務報告をこれまで作成していなかったサブ連結または子会社レベルで初めて報告が要求される場合には、特に課題が生じる可能性があります。
保証要求事項はどのようなものか
適用初年度からCSRD報告には、第三者保証が要求されます。CSRDの要求事項は、限定的保証から始まり、その後に(時期は未定)合理的保証まで拡大することになります。保証手続きの性質、時期および範囲は、以下を含むいくつかの要素に基づいて異なります。
  • どの報告基準に従うか
  • 親会社は連結レベルで報告する予定か、または子会社レベルで報告する予定か
  • 報告が要求される時期
  • 法定監査人はサステナビリティのアテステーションの実施に従事するか否か
PwCは、CSRD報告要求事項の監査には、EU域外グループチームとEUを本拠とするアシュアランスチームの間でかなりの調整が必要になると見込んでいます。
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