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⇒原文(英語)はこちら

要点
2023年7月31日、欧州委員会(EC)は、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の最終的な委任法を採択しました。本委任法には、全てのサステナビリティ事項に適用される2つの横断的基準、および環境、社会、ガバナンスに関する幅広い事項を取り扱う10のトピック別基準で構成される12の最終的なESRSが含まれています。

論点
ESRSは、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の土台となるサステナビリティ報告基準です。2023年1月から施行されているCSRDの目的は、サステナビリティ報告を財務報告と同等のものとすることです。この目的を達成するために、企業は、サステナビリティに関連する影響、リスクおよび機会について、目的適合性、比較可能性および信頼性の高い情報を提供しなければなりません。ESRSには、企業が環境、社会およびガバナンスに関する事項を報告するための詳細で標準化された開示要求事項が含まれています。
委任法は、その付録を含め、全てのEU加盟国の言語で入手可能です。上述のように、ESRSには、CSRDの範囲に含まれる全ての企業が行わなければならない包括的な開示だけでなく、全般的な報告原則、ダブルマテリアリティおよび報告の境界を含むCSRDの基本概念を定義する2つの横断的な基準が含まれています。10のトピック別基準には、環境、社会およびガバナンスに関する特定の報告要求事項が含まれています。
最終的なESRSは、2023年6月9日にECがパブリックコメントのために公表した12のESRS草案のアップデートを反映しています。コメント募集期限は2023年7月7日でした。ECは、PwCからのフィードバックを含む、600を超えるコメントを受け取りました。
パブリックコメントのためにECが公表した2023年6月版と比較した主な変更点
ECは、2022年11月にEFRAG(欧州財務報告諮問グループ)によってECに手渡されたESRS草案と比較した重大な変更をまとめました。PwCの予備的な評価によると、2023年6月のコメント期間後に行われた変更には以下が含まれています。
  • 財務上の重要性に関する用語をIFRSサステナビリティ開示基準の財務上の重要性の定義により整合させる
  • 報告企業が、気候変動は重要性のあるトピックではないと結論付けた場合に詳細な説明を要求するマテリアリティ(重要性)のセクションにおける規定
  • 他のEU法に基づく開示義務のある金融市場参加者、指標運営機関および金融機関の法令遵守を容易にするための追加規定:報告企業が、EU法から導かれたデータポイントには重要性がないと結論付けた場合、企業は、問題のデータポイントは「重要性がない」と明示的に記載するものとする
  • 他のEU法から導かれた全てのデータポイントの表を開示し、企業のサステナビリティ報告書のどの部分に記載しているか、または適切な場合には「重要性がない」と記載しているかを示す要求事項
グローバルな相互運用可能性
ECは、ESRSがIFRSサステナビリティ開示基準やグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)などのグローバル基準と整合していることの重要性を強調してきました。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、ESRSの採択に関するプレスリリースにおいて、ISSBとESRSの気候開示は高度に整合していることを確認しました。さらに、EC、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)およびISSBからまもなく公表予定の相互運用可能性に関するガイダンス資料は、基準を読み解き、2つのうちの1つの基準で要求される追加的な開示や違いについて企業の理解に役に立つはずです。
この点に関して、EFRAGは最近、ESRSとGRI基準やIFRSサステナビリティ開示基準との相互運用可能性に関する会議文書を公表しています。これらの文書は、2023年8月23日のEFRAGサステナビリティ報告審議会の公開会議で議論される予定です。
段階的な規定の追加および任意開示
2023年6月のESRS案で導入された追加の救済措置および任意開示は、実質的に変更されていません。これらを以下にまとめます。また、PwCのIn brief INT2023-13「欧州委員会がフィードバックのために欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)草案の改訂版を公表」(和訳はこちら)で、より詳細に説明しています。追加の救済措置は、企業の報告にかかる負担を軽減し、基準の適用開始を容易にすることが意図されています。
任意開示の例には、生物多様性と生態系(ESRS E4)の移行計画やESRS S1における非雇用労働者に関する情報(例えば、適切な賃金、社会的保護、衛生安全に関するものなど)などがあります。特定のサステナビリティのトピックに重要性がないと分類した場合の理由の説明も任意開示です(気候変動のテーマを除く)。
次のステップ
委任法の採択後、欧州議会およびEU理事会による2カ月間(2カ月の延長が可能)の審議期間が開始されます。審議期間が終了し、欧州議会とEU理事会のいずれから異議がなければ、委任法は2024年1月1日から適用されます。
EFRAGは、立法プロセスと並行して、ESRSの適用を支援するための追加的なガイダンスの開発に取り組んでいます。このガイダンスは、重要性(マテリアリティ)の評価とバリューチェーン情報の記載を扱うことが見込まれます。さらに、EFRAGは、ESRSのステークホルダーのESRS適用に関する質問の受付を整備すると発表しました。
詳しい情報
EUにおける最近のサステナビリティ報告の取組みについては、以下をご覧ください。
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